19.戦いの朝
本当に。襲撃のために日が昇っている間は連携確認や、敵の姿を伝えようと思っていたのに、機械兵の残骸処理をする羽目になるとは……。
こいつらのせいで、時間も無駄にするし、体力も無駄に消費する。
と思っていたが、ありがたいことに、カナの魔法が使えることを知り、散らかった残骸を一か所に集める必要はなくなった。
これだけで体力の消費は相当抑えられる。なんせ、サッカーフィールドほどの広さに200体ほどの残骸だからな……。
だけど、これだけの広さと数にカナの魔力消費も少し気になるところ。
「カナ、あまり無理しなくていいぞ」
「大丈夫だって。まだ余裕はあるし。なんなら、さっきまで休んでいたから魔力もだいぶ戻っているよ」
とはいうものの、この広い闘技場をサイコキネシスで全体を覆い、残骸を一か所に固めていく。
これだけの魔法になると、普通は魔力切れを起こすものだと思うのだが。と思いつつ、キッシングナイトの魔力量を持っているのか。と同時に思った時だった。
もし、この量を私たちのアルカイックパワーで身体能力を上げたとしても、この量は処理しきれない。キッシングナイト様々だな……。
「エル~。一か所に集めたよ~。このあとどうする?」
残骸処理を始めてわずか1時間。普通なら半日かかると思われるところがこんなに速く終わるとは思わなかった。
とりあえず、今はこれくらいにして、朝食にしようか。
「とりあえず朝食にして、続きはそのあとにしよう」
「オッケー。それじゃあ、解除」
カナがサイコキネシスを解くと、わずかに浮いていた残骸は、ガシャンと音を立て山のように積み上げられた。
改めて、この残骸の量に驚かされる。
1体400キロの物体が何百と。もう今では正確な数はわからないものの、何キロというより、何トンの重量だろう。
今ふと思うと、この闘技場の下が空洞ではなくてよかった。
地面に何トンという重量がかかっていたら、空洞だと確実に穴が開いて、落ちていただろう。……考えるだけでぞっとする。
朝食を取り終えた私たちは、せっせとさっきの続きで、残骸の処理をしている。
さすがに爆発の時に溶けたり、冷えてくっついたりしているものもあるが、アルカイックパワーを使い、大きいものから小さいものまで、すべてを焼却炉の中にコンベアで運んでいく。
そういえば言っていなかったな。
私たちスノードロップが出したゴミは、各部屋からコンベア頂上付近にある(もちろん山中な)焼却炉で燃やして、冷える洞窟の中を温めている。
冬が近づいてくるこの季節にはなくてはならないものだ。さらに、炎魔法を使うレベッカが捕まってからはなおさらだ。
で、この金属ゴミは、その焼却炉とは別に、さらに高温で金属を溶かすことができる溶鉱炉があって、そこで金属を溶かして、私たちの剣にしたり、冷やして固めた金属をほかに売ったりしている。それが私たちの活動資金になってもいる。
このことはキッシングナイトには秘密な。
秘密ごとはなしねと言われたが、これだけは隠させてくれ。
残骸をコンベアに乗せて運ぶ作業も、アルカイックパワーのおかげで昼過ぎには終わる。
たまに山から残骸が落ちてきてヒヤッとする場面が何度かあったが、みんなが華麗に避けたり、カナのサイコキネシスで崩壊を防いでくれたり……。
まぁ、私の見通しが甘かっただけだが、なんとか終わった。
そして、昼食をはさんだ後、みんなには食堂に残ってもらった。
昼食まではみんなワイワイしていたのに、私の顔が神妙になったからか、みんなの表情から笑みが消えた。
「話があるって?」
「あぁ。今日、仲間を助けに行くとは、前から言っていた。そして、今からその最終確認と伝えたいことを言いたい」
「確認したいこと?」
「伝えたいこと?」
ルナとカナが首をかしげると同時に、ほかの3人もさらに神妙な顔になる。
「あぁ、今まで言うタイミングを逃していたんだ。まずはこれを見てくれ。これは、帝都のマップだ」
そう言って、タブレットを起動させ、帝都のマップを浮かび上がらせる。
「うぉ~!プロジェクションマッピングやん!すげぇ!」
ルナは興奮しながらタブレットを覗くが、私は、ちょっと違うんじゃないか?と思いながらも、話を続ける。
「これが帝都のマップで、中央付近に重要施設が固まっている。まずは中央付近に情報庁。この国の中核で、帝都の中の情報はもちろん、この国のほとんどの情報は些細なことでもここに集められ、監視・管理されている。もちろん、その中に“私”という個体も入っているし、この国のすべてがその情報庁にあると言っても過言ではない。そして、その近くにこの国の首長の官邸がある。さらに、東側に移ると、防衛庁があって、ここには、最初に戦った山岳警備隊の本部もあれば、銃や剣で向かってくる通常攻撃部隊や通常防衛部隊、攻撃魔法で向かってくる魔法攻撃部隊や、帝都特別急襲部隊、機械兵みたいな特攻部隊など、ほかにもいろいろあるが、私と救出する仲間以外はみな敵だと思ってくれていい。そして、気を付けてほしいのは、通常攻撃部隊と魔法攻撃部隊は混ざって混合部隊になっていることが多い。剣だけだからと言って、油断してかかれば、攻撃魔法を出してくることもあるから気を付けてほしい」
「混合チームか。意外と厄介かもしれへんな。なぁ、エル。その魔法を使ってくる兵士さんの魔力ってどれくらいなん?」
「そうだな。いつも私は魔力を込めて剣で攻撃するから、攻撃魔法もこれで防いでいる。何とも言えないが、ルナはスピードで逃げ切れるだろうし、魔力を込めた剣でも防ぐことはできるだろう。ユカリも剣を振れば問題ない。マリアも風魔法で相殺できるだろうな。カナもサイコキネシスで相殺できるだろうし、アカリは……」
アカリの顔を見て声が止まった。
よく考えれば、アカリが魔法で出したものと言えば、弓と治癒魔法の2つ。それ以外を使ったところを見たことがない。
「私は何?」
「いや、すまない。アカリが魔法で弓を使かっているところは知っているんだが、ほかの技を見たことがないなと思ってな?」
「そうだね。アカリちゃんは基本的に攻撃専門で、防御はからしきダメだもんね。まぁ、まっすぐ飛んできた魔法なら弓を飛ばして相殺できるけど、曲がってくるとお手上げだもんね」
「カ、カナ……。そこまで言わなくても」
少し泣きそうなアカリ。こんなアカリを見るのは初めてかもしれない。
「それに、アカリちゃんはいつもカナのサイコキネシスで守ってもらっているもんね」
「カ、カナ。そこまでにして……。私のライフが持たない……」
珍しくアカリがいろいろ言われて撃沈していた。こういうアカリを見るのは初めてなのかもしれない。
「と、とにかく、私からはこんなものだ。あとは各自で戦闘の準備をしてほしい。そして、20時にここに集合してほしい」
無理やり話題をそらして、打ち合わせを終わらせる。
そして、私は最終準備に移るために自分の部屋に向かう。




