Collabo 1 平穏な日々
私たちが反乱を起こして何年がたっただろうか。そんなことを思いながら、今日も無駄に届く法案など様々な議案書の可否を仕分けしている。
正直、自身とその身内にしか営利がない議案ばかりで正直、気が滅入る。
クラシアもさっさと議員削減の法案を通してくれたら、少しでも楽に仕事ができるのにな。なんて思ってしまう。
そんなことを思いながら仕事をしていると、執務室のドアがノックされる。
私が「開いている」と短く声を放つと、ドアの向こうからレベッカが顔をのぞかせた。
「エル、仕事中にごめん。アリアスがどうしてもエルと話がしたいって言って来てるんだけどどうする?」
アリアスが?どういうことが?私からクラシアに押しかけることは多いが、向こうから私に来るのは珍しい。
そんなことを思いながらも、レベッカに「通してくれ」と伝える。
すると、レベッカの陰からアリアスが姿をひょこっと現す。
「唐突に申し訳ありません。クラシア様からの伝言と依頼です」
「……ここではなんだから、応接室に移ろう。レベッカ、準備してくれるか?」
「オーライ」
アリアスは礼儀正しく、クラシアの秘書だという威厳を所作で存分に示してくる。
本当に、動き一つひとつが細かい。そんなことを思いながら、レベッカに応接室の準備をしてもらい、私もアリアスと一緒に応接室に入る。
「ありがとうございます。時間がないので、早々に本題に入らせていただきたいのですが、ここ最近、北の山を越えた先にあるドルペントという王国はご存じですよね?」
ドルペント……あまりいい噂を着な改国だということはわかる。
私たちも、反政府勢力として暴れていた時、アジトに逃げる最、うっかり道を間違い、そのままそっちに逃げるか考えたくらいだ。
ただ、あまりいい噂を聞いていなかったし、山を越えるときに獰猛な獣がいると言う事を聞き、あまり近寄りたくない地域と言う私の中での印象だ。
「あぁ、あまりいい噂を聞かないから、私たちも逃走するとき、そっちに向かうかどうか躊躇したくらいだ。そのドルペントがどうした?」
「まだ情報が少し錯綜していて、確定とは言えないのですが、獰猛な獣を人が支配し操縦するなどと言った実験を行っているようでして、その実験が成功した暁には、その獰猛な獣を利用した軍事作戦を実行する恐れがあると情報が寄せられました」
……また面倒なことをしているな。これをどうしろって言うんだよ。
「その実験をこちら、帝国に向けて、それもタルインダと帝都に向けて実施する恐れがあるとのことです」
タルインダって、私たちのアジトがある近くの街で、一番世話になった街じゃないか。
そんな街を戦火で燃やすのは私も気が引ける。何としても阻止しないといけないところだな。
……とはいえ、ただでさえ、領土侵犯を許さないこの国にとって、反撃することはもちろん、経済制裁だって辞さない。
それを目の前で見ているというのに、なかなか強気に来るな。
「で、なぜ私を訪ねた?」
「陣頭指揮をエルトゥーヤさんに執ってほしいとクラシア様からのご伝言です」
「前のあの一件と功績を見て、今度はクラシアの方から正式に頼みたい。と言うことか?」
「端的に申し上げればその通りでございます」
「軍のことなら、情報庁、防衛庁に頼むのが一番だろうに、それでも私か?」
たぶん、答えは、情報庁も防衛庁もトップは帝都にいて、情報を集めてもらう。っていうのが答えだろうな。
「情報庁、防衛庁ともに、今回の軍事作戦に伴う情報収集を専門的に行っていただく計画を練っております。部隊の行進等については、最高責任者に一括、手配は防衛庁で行う計画です」
「もし、私が断れば?」
「そのようなことはないと思いますが、万が一、全力で拒否された際には、クラシア様が陣頭指揮を執ることになるかと思いますが、内政は、すべてエルトゥーヤさんに一任することになります。ですが、この国の最高責任者がいないという形になりますので、国会等は完全に停止、予算委員会すら開けない状態となります」
「もし、それで軍事作戦が長引いて、予算委員会も開けず、越年でもすれば、金がなくなり、軍を動かすことができなくなり、この国は終わる。ということか?」
「おっしゃる通りです」
なかなかエグイことをしてくる場。まぁ、これがこの国のやり方なんだから仕方ない。
ここはもう受け入れることしか選択肢はない。国を守ると言う事になるのなら。
「……はぁ。わかったよ。政治を人質に取られちゃぁ、こっちとしても生きていく限りは、平和が求められるだろうから、私が犠牲にならないといけないようだな」
「お話の呑み込みが早くて助かります。つきましては、明日の昼、こちらの私邸で決めたいとのことですので、お越しいただきますよう、お願いいたします」
チッ、相変わらず、クラシアは先回りがうまいやつだ。こうなることを予想して、私の予定を決めて来るなんてな。
「あぁ、わかった。昼飯時くらいでいいか?そのあたりなら、私も時間が取れるだろう」
「承知いたしました。それでは、そのようにスケジュールを入れさせていただきます。唐突に失礼いたしました。お話は以上ですので、私はお暇させていただきます」
「あぁ、わかった。気を付けて戻ってくれよ」
「お心遣い、感謝いたします」
アリアスはそれだけ言うと、応接室を後にした。




