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0番街で会いましょう  作者: 川住河住
第3章

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第35話 モミジロウくんとモミコちゃん

「わあっ! モミジロウくん!」


 周りから歓声が上がった。

 だが視界がぼやけて、自分がどこに立っているのかわからない。

 しかもいきなり立ち上がったせいで立ちくらみを起こし、ステージから落ちそうになっていることにも気づかない。


「モミジロウくん! 危ない!」


 足を踏み外す瞬間、誰かが手をつかんでステージに引き戻してくれた。

 

 おかげで一志の意識も取り戻せた。

 

熱さのせいで変なことを口走った気がするが、あえて忘れることにした。


『まっかな体は夕焼けいっぱい浴びたから! 

 まっかな心はみんなに応援されたから!

 雨風だってへっちゃらさ! 今

 日も明日も元気モミモミ! モミジロウ!』


 予定にはなかったトラブルを隠すため、モミジロウくんの決めゼリフが流れる。


 玲なら言ってくれるだろうと予想していたから、一志もそれに合わせてポーズをとった。


 ここから仕切り直しだ。物語の結末に向かって一直線に進む。


 そこで気づく。


 今もまだモミジロウくんの手をつかんでくれているのは誰なのか。


「モミコちゃーん!」


 観客席から大人たちの驚きと喜びの入り混じったような歓声が上がる。


一志も驚いた。

 

 脚本では、最後に登場するはずのモミコちゃんがすでにいるのだから。


 しかしすぐに状況を理解する。

 

 自分が倒れてしまったからモミコちゃんが助けに来たという流れに変えたのだろう。おそらく中の人、もとい魂を担っているのは本山か。

 

 だとしたら途中の展開を飛ばして朗読されるはずだと察して動く。


『モミコちゃん! イチゴを買ってきたよ!

 でも、今日はここでなにをするの?』


 一志の予想通りに朗読が再開される。

 それに合わせて本山も動く。


『ありがとう! モミジロウくん!

 今日はね、ここに集まってくれたみんなとパーティを開こうと思うの!

 パーティと言ったらケーキ! ケーキにはイチゴが必要でしょ?』


 図書館のあおぞら朗読劇では、姿も声も出せなかったモミコちゃん。

 

 しかし、今回のイベントのために新たな設定が作られた。


 そして動いている。話している。


 最初はモミモミ言っているだけのもみじの妖精のノロケ話を書くことに怒りを覚えていた。しかし二人の生い立ちを知るうちに愛着がわき、幸せになってほしいと思えるようになった。


 一志は、感動のあまり思わずモミコちゃんを抱きしめた。


 しかし、体はモミコちゃんでも魂は本山だと気づいてあわてて離れる。


『わあい! うれしいな! 

 みんなとパーティうれしいな!』


 モミジロウくんのセリフも喜びのシーンだったのでなんとかごまかせた。


 しかし後で謝らなければいけない。


 おかげで一志の心は冷え切って熱さを感じなくなった。


 その後はトラブルもなく脚本通りに朗読劇は進んでいく。

 

『今日は来てくれたみんなのためにダンスを見せるよ!

 モミコちゃん? 準備はいい?』


『もちろん! 手を握って! 

 モミジロウくん!』


スピーカーからゆったりとしたテンポの音楽が流れる。


モミジロウくんとモミコちゃんは、互いの手と手を取り合って踊り始める。


練習していないにもかかわらず、前後左右に息の合ったステップを刻んでいく。


モミコちゃんがクルリと一回転して、再びモミジロウくんの腕に抱かれる。


 先ほど千代子が演奏したロックや本山が踊ったブレイクダンスのような派手さはない。


 それでもステージの上を優雅に舞う二人の姿は、本物のもみじの妖精のように見えた。


 子どもも大人も、ただ静かに眺めているうち、風に乗っているような感覚になってくる。


「大丈夫。モミジロウくんならできるよ」


 耳元でモミコちゃんの声がする。


「うん。ありがとうモミコちゃん」


 モミジロウくんも感謝の言葉を忘れない。


ようやく音楽が止まり、踊りも終わり、物語も結末を迎えた。



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