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豚の屠殺.2
母親は産湯に赤ん坊を入れて世話をしているところだった。
八歳と六歳になる息子たちが、「遊んでくる」と言って外に出て行く。「気を付けるのよ」と言った母親の声など、二人には届いていなかった。
ちょうど最近、兄は父親の仕事であるブタの解体を手伝ったばかりであった。
その真似事をしようと弟を連れ、父親の解体場に足を運んだ。父はどうやらブタ小屋の方にいるらしく、使い放しの道具だけがテーブルに置かれている。
「お前ブタ役な」
言うなり兄は弟を縛り上げ、ナイフで首を切りつけた。
絶叫が木霊して、父と母が何事かと飛んできた。
父は医者を呼びに出て行った。錯乱した母が兄を殴り飛ばした。
兄は打ち所が悪く亡くなった。
弟は治療も虚しく亡くなった。
赤ん坊は産湯の中で溺死していた。
失意にくれた母は首を吊り、父は崖から飛び降りた。
小屋にはブタだけが残されていた。




