88/100
8gの花火
「動くな!」
拳銃を構え、威嚇のつもりで地面を撃った。
犯人は立ち止まり、手を挙げこちらを向いた。
距離は十五、四。犯人が少しずつ近づいてきているが、まだこちらの間合いだ。
「止まれ。膝をついて両手は頭の後ろに」
犯人の目は小さく揺れながら、俺をしっかり捉えている。その眼差しに映るのは恐怖や諦めではなく、隙を窺う獰猛な獣のそれであった。拳銃を握る両手に力がこもる。犯人は指示に従った。
視線が、一瞬、俺の背後にずれたのを見逃さない。
「今だ!」
犯人が叫ぶのと同時に、俺は後ろを振り返ったが、そこには誰もいない。
「くそっ」
振り向くと、犯人はすでに走り出していた。
ナイフでも持って襲ってくるかとも思ったが、背を向け全力疾走である。
いっそ清々しい。
狙いを定め、引き金に置いた人差し指が動く。
その背に、八グラムの花火が咲いた。




