80/100
あなたを照らせない光に意味はない
勇者は数いる魔物を押しのけて私の下まで辿り着いた。
剣を抜き、切っ先をこちらに向けて、何事かの言葉を投げかけてきた。
沈黙を押し付けると空気がよりいっそうの緊張に包まれた。
私に届くのはその刃のみであると知ったのだろう。
戦いは十を数える間もなく終わりを迎えた。
「呆気のないものだな」
刃が引き抜かれ、再び言葉の届かぬ距離となる。
光が強くなれば影もまたその濃さを増すというのが道理である。などというのは、光に当てられたことのない日陰者の負け惜しみそのものだ。
どれだけ濃くなろうとも、伸びた影に光が差せば消え去るのが本物の道理である。
「暗いな」
勇者の去った世界を照らせない光に意味などないのもまた、道理であった。




