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人の世渡り
「人の道を外れちゃいかん」
オヤジはいつもそう言っていた。
「お天道様に顔向けできん日陰者でも、生きとるのは人の世だ」
意味なんてまるで分からなくて、ただ、オヤジに怒られるのは悪い気がしなかった。
俺は人を殺した。
別に殺意があったわけではない。
ナイフを持って襲ってきたやつと揉み合いになり、相手にたまたま刺さってしまっただけだ。
そんなことを信じてくれる人は、オヤジ以外に誰もいなかった。
牢の中で謝罪の手紙を何度もしたためた。
被害者の両親が首を吊ったと知ったのは刑期を終えてからだった。
俺の両親や親族からは絶縁されていた。
オヤジは死んでいた。
墓参りを二つ済ませて立ち上がる。
見上げた太陽の眩しさに目を伏せた。




