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他の指輪に目移りしないで
彼と婚約指輪を買いに来た。
プロポーズは決してロマンチックなものではなかったけれど、その気持ちだけで十分すぎるくらいだった。
シンプルなシルバーの指輪。
小さな宝石が装飾された可愛い指輪。
細かな意匠と複雑な造形、大きなダイヤモンドを飾る豪華な指輪。
ガラスケースの奥には種々雑多な指輪が並べられている。
彼はその一つ一つを楽しそうに吟味していた。
けれど私は知っている。その指輪をつけるのが私ではないことを。
「ねえ、私はこれがいい」
「いいね。あ、こっちとかも似合いそうじゃん」
私に? それとも他の女に?
オープンマリッジは話し合って認めたよ。私も覚悟しているよ。
でもさ……。
今だけは、私を見てよ。
なんて、そんな風に言えるならはじめから、私はここにいないんだけどね。




