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いまひとたびの⑪
睡眠薬の過剰摂取で人が死ぬなんて言うのは時代錯誤もいいところだ。
彼女はすやすやと寝息を立てている。頬に指を滑らせ、垂れた髪を耳に掛けた。
はじめから歪はあった。どちらも気付いていながら、気付いていないフリをしていたのだ。
降伏点を過ぎたのは俺のバッグに入れられていたGPSの発信機を発見した時だったと思う。
調べてみると、彼女からもらった物には全て、録音機や盗聴器などが取りつけられていた。
問い詰め、話し合い、別れ話を切り出したら「一緒に死のう」なんて言い出す始末である。
——手に負えない。
立ち上がり、部屋の電気を消して外へと出た。
本格的な冬を前にする風に刺されて体をすくめる。
寒さを寂しいと感じたのは、もうずいぶんと昔のことのような気がした。




