休息
美津子は、白木が休めというので、別室の座敷に用意された布団で横になることにした。
「あなた、蘭さん?」と美津子が布団の中から話しかけた。
「はい」と枕元で正座する蘭が答えた。
「あなたが守ってくれるの?」と美津子。
「はい」と蘭。
「疲れているのに大丈夫なの?」と美津子。
「蓮と交代で休みますので、ご心配には及びません」と蘭。
「少しお話してもいいかしら」と美津子。
「はい。でもお休みにならなくてもよろしいのですか?」と蘭。
「こんな状況で寝られるはずないわ」と美津子。
「そうですか」と蘭。
「話し相手になってほしいの」と美津子。
「わかりました」と蘭。
「あなた、中学生?」と美津子。
「はい」と蘭。
「いつから稽古してるの?」と美津子。
「子供のころからです。物心のつく前から」と蘭。
「どんな稽古をしたら、そんなに強くなれるの?」と美津子。
「稽古の話はあまりしたくありません。あまり良い思い出がないので」と蘭。
「あら、ごめんなさい」と美津子。「誰か好きな人はいるの?」
「はい」と蘭。
「あら、だれなの?」と美津子。
「兄です」と蘭。
「お兄さんって、弘樹君のこと?」と美津子。
「はい」と蘭。
「それって、恋愛の意味で?」と美津子。
「はい。兄に愛を誓っています」と蘭。
「ひょっとして蓮さんも?」と美津子。
「はい」と蘭。
「変わった兄妹ね」と美津子。
「ブラコンと言われています」と蘭。
「気にしてるの?」と美津子。
「全く気にしていません」と蘭。
「強いのね。弘樹君はなんて言ってるの?」と美津子。
「私たちの愛を受け入れると」と蘭。
「弘樹君らしい言い方ね」と美津子。
「はい」と蘭。
「満足してるの?」と美津子。
「はい」と蘭。
「うらやましいわ」と美津子。
「私にも、兄がいるの。従兄だけど」と美津子。「いたというべきかしら。」
「そうですか」と蘭。
「先月、梅雨明けのお茶会で兄にあったら別人だったのよ」と美津子。「影武者というか代わりの役目の人は前からいたけど、本物のはずの人が別人だったの。」
「それで叔母につい、兄の感じが変わったと口を滑らせてしまったら、お茶会から追い出されてしまったわ」と美津子。「そのあと、身の回りで変な事故が続いて、広瀬たちに保護されたの。」
「しばらく身を隠して、海外に逃げることにしたわ。それで今朝空港に向かっていたら、途中で襲われて、ここに逃げ込んできたの」と美津子。「私、皇族なの。気がついていると思うけど。」
「はい。さっき、兄からそうではないかと聞きました」と蘭。
「そう。弘樹君は聡いのね」と美津子。「他に何か言ってなかったかしら。」
「大きな組織から捨てられたんだろうと」と蘭。
「なぜそう思うの?」と美津子。
「敵と味方のつりあいが取れないと」と蘭。「敵はこの国の偉い人だろうと言っていました」
「そう、わかってたのね」と美津子。「それでも守ってくれるの?」
「はい」と蘭。「兄がそう言ってますから。」
「あなたはどう思うの?」と美津子。
「わかりません。私たちは兄についていくだけです」と蘭。
「そうなの。弘樹君に感謝しなきゃいけないわね」と美津子。
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