応接(1)
車に何人かを残して、残りは道場に入った。稽古場の二間続きの座敷に、座卓と座布団を出して応接間にした。正一の妻の妙が茶を出した。
「美津子様を空港にお送りする途中で襲われたのです」と広瀬。「もちろん、不穏な情報を得てましたので、十分な護衛をつけておりました。所轄の警察にも連絡をしていたのです。」
美津子が乗る車には隊長の広瀬が、先導の車には副隊長の山崎が乗車しており、さらに後続の車が一台という陣容だった。さらに、四台の車に分乗した別働隊が要所要所に詰めていたという。
交通の少ない場所で通信妨害と同時に化け物の襲撃を受け、主要道から離れた場所に追い詰められて逃げ回ったのだという。七台の車のうち、四台を乗り捨て、付いて来れる隊員も減ってしまったのだという。
戦闘域から脱することができた隊員が、有線の電話回線でこの地区の代表である白木に連絡を取ることができ、花山道場に誘導したという。
道場の電話で正森ネットワークの本部に連絡が取れた。救出のための部隊を送るから動くなとのことだった。
「それは良かった」と正一。「それで誰が来るのですか?」
「常設隊の斉藤たちです。それから、切鴨神社から迎えをよこすそうです。呪術に長けた陰陽師がついて、奥の院にお連れするのだと」と広瀬。
「あそこは気味が悪いから嫌だわ」と美津子。
「あそこなら安全です」と白木。
「しかし、あんな術を見るのは初めてじゃ」と正一。
「最上の山中で似た技を見たことがあります」と広瀬。「あれほど禍々しいものではありませんでしたが。」
「猿神の一種だろうな」と白木。
「おそらく」と広瀬。「ですが、猿神の技が使えるなど、よほどの術師でしょう。心当たりはありませんか?」
「そうだな」と白木。
「そんなことより、どうして銃が効かないの?」と美津子。「蓮さんと蘭さんだけが化け物を倒せたのはなぜなの?」
「それは術が長けているからです」と広瀬。
「なぜ銃ではなくて刀なの?」と美津子。
「正確に本体の札を切断できたからです」と白木。「本体を破ることができれば銃でも構いません。」
「本体は見えるの?」と美津子。
「それはどうか?」と広瀬。
「蓮さん、蘭さん、教えてくれない?」と美津子。
「勘です。斬ってから札だと分かりました」と蓮が正一の後ろから答えた。
「手ごたえはあったの?」と美津子。
「はい」と蓮。
「化け物を斬れるの?」と美津子。
「鬼を斬る技を使いました」と蓮。
広瀬と白木が、はっと蓮を見た。
「すごいのね。鬼を斬る技なんてあるの?」と美津子。
「当道場は鬼と戦うための技を天狗から授かったという伝承があるのです」と正一。
「その技は、風切りでしょうか?」と広瀬。
「はい」と蓮。
「やはり別格ですな。この道場の方々は」と白木。
読んでくださってありがとうござます。一言でもコメントを残していただけると嬉しいです。よろしければ、☆などで応援していただけるとありがたいです。




