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慰霊祭(2)

 広瀬たちは警備の名目で会場に出て、弘樹の姿を探した。奥の招待客の席に少女二人に挟まれて座っている。広瀬らが顔のわかる距離まで近づいて頭を下げると、弘樹が手を振って答えた。式が始まるというアナウンスが流れて、広瀬らは姿を消した。


 式の出席者は五十人ほどだった。正面には祭壇があり、その前には鬼退治に参加した、真守(まさもり)会常設隊の隊員が祭壇に向かって並んで座った。奥から左脇にかけて招待客の席があり、右側には式の運営のマイク係や式を執り行う神主らが並んでいる。


 真守会では常設隊が鬼を退治したことになっており、弘樹と朱良のことはごく一部の幹部のみが知る極秘事項だった。そもそも鬼退治が秘密の案件であり、今回の儀式は災害でのレスキュー活動による殉職者の慰霊祭とアナウンスされている。


 一方で、関係者の間では弘樹の顔を真守会の幹部に見せるという意味があった。


 慰霊祭は滞りなく終り、鬼の手の奉納の儀式が始まった。野球のグローブほどもある鬼の手首が二つ、大きな三宝にそれぞれ乗せられて運ばれてきた。


 常駐隊から、真守会の神主たちに引き渡された。


 式次第がすべて終わった。弘樹らが立ち上がり、帰ろうとしているところに白木が現れて、「ささやかですが食事をご用意しております。どうか召し上がっていただけないでしょうか」と白木。「蓮さまと蘭さまもぜひご一緒に。」


 断るのはめんどくさい。「わかりました。頂くことにします」と弘樹。


 白木が先導して食事の会場に入った。ホールの左右に長いテーブルが置かれて、壁に沿って席が用意されている。すでに席が半分ほど埋まっていた。


 こちらにどうぞと一番奥の上座に案内された。真ん中に弘樹、左右から蓮と蘭がぴったりと席を詰めて座った。


 その下座に常設隊の広瀬、斉藤らが並んで席についていった。向かいの席に真守会の幹部らしき連中が並んでいる。白木は一番下座に席があるようだ。実質的な慰労会ということだろう。


 白木が簡単な挨拶をして食事が始まった。蘭が弘樹の前に置かれた重々しい器の仕出し弁当の蓋をあけた。食欲がないので、弘樹は食べるふりをしていた。吸い物の器に軽く口をつけて、あとはぼんやりとして時間がたつのを待った。


 何人かのスピーチがあって、常設隊の働きを称えた。弘樹は蘭の肩にもたれて居眠りを始めた。弘樹が寝息をたてはじめたので、蘭が膝枕をしようと弘樹の体を横に倒し始めたときに、ガチャンという大きな音がホールに響いた。


 蓮が立ち上がって様子を見ると、入口に近いテーブルがひっくり返っていた。何人かの男が乱入してきたらしい。怒鳴り声がしている。


 どうやら白木ともめているようだった。それから男の一人がずかずかと奥に入り、弘樹の席の前に立った。大柄で派手な色のスーツを着ている。


「風見弘樹ってやつはどいつだ!」と男は怒鳴った。「俺が術者稼業の礼儀ってもんを教えてやる。」


「あなた、失礼でしょ!」と横から広瀬が口を出した。


「うるせえ!引退したババアは黙ってろ」と男。


 後ろから男の取り巻きらしき男がにやにやしながら覗き込んだ。


 弘樹が蘭の肩から頭をあげた。「広瀬先生、この人は誰ですか?」と弘樹は広瀬に尋ねた。


「この人は六道健二という術師で、ネットワークの分類ではかなりランクの高い男です」と広瀬が冷静に説明した。


「なぜ彼がここにいるのでしょうか」と弘樹。


「今回のあなたの功績に嫉妬しているのだと思います」と広瀬。


「おい、無視してんじゃねえぞ!」と取り巻きの一人が怒鳴った。


「この人たちは?」と弘樹。


「さあ。ただのチンピラのようです」と広瀬。


「おめえが弘樹か!」と六道が手を伸ばして弘樹の首元をつかもうとしたところを、横にいた蓮がパンと弾いた。


「汚い手で触らないで」と蓮。


「何だこのガキ」と取り巻きが叫んだ。


 蓮に掴みかかろうとしたところを、逆にポンと投げられて向かいの壁にバンと叩きつけられて動かなくなった。


 軽く五メートルは飛ばされている。本当に容赦がない。広瀬らは背筋が冷たくなるのを感じた。


「触らないでって言ってるでしょ」と蓮。


「おめえが朱良か?」と六道。


「何の用ですか?」と弘樹。


「この鬼退治は俺が請け負う予定の仕事だったんだ」と六道。


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