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会議

 弘樹と朱良が車で現地についたのは、その日の夜遅くだった。鬼退治のメンバーは、山奥のさびれた温泉宿に集合した。


 弘樹と朱良が宿の玄関に入ると、他のメンバーはすでに玄関ホールでたむろしていた。


「隊長様のご到着だ」とどこからか声がした。それから「しっ」と言う声が続いた。


「ご苦労様」と冷たい声で広瀬が二人を迎えた。


「遅くなり申し訳ありません」と朱良。


「すぐに会議を始めます。このままでよろしいでしょうか?」と広瀬。他に選択肢があるようにも思えない。


「はい」と朱良。「ただ、弘樹に椅子を用意していただけないでしょうか。」


「わかりました」と広瀬が答えて奥に入った。藤の椅子を手に持って戻ってくると「これでよろしいでしょうか?」と尋ねた。


「はい、ありがとうございます」と朱良が答えた。朱良は勘定用のカウンターの横に藤の椅子を置いて弘樹に「座りなさい」と言った。この位置ならカウンターにもたれかかることができる。


 弘樹は白いビニールのリュックと短めの刀袋を肩からおろして椅子に腰を掛けた。朱良も背負っていた荷物を下ろした。


「お殿様だな」と奥から声がした。


 会議は広瀬と斉藤がしきった。自己紹介があり、朱良が名を聞いたことのある格闘家や武道家がいることを知った。


 鬼がこの里に出たという。そして明日の朝から山をさまよって鬼を探すのだという。探索コースや班分けなどをおこなった。


 小一時間ほどで打ち合わせが終わり、最後に広瀬が朱良と弘樹に何か言うことはないかと尋ねた。


 弘樹が言った。「鬼が出たら呼んでくれ。ぼくはここで寝ているから。」


 ホールに失笑が起こった。


 困惑した広瀬が、「先ほど説明したように、主力の第一班はあなたと行動します。あなた方のペースに合わせますので同行してください」と言った。


「班を分けるべきではないよ。少人数では鬼には勝てないから、全員で移動するんだ」と弘樹。


「何をいまさら」と斉藤。


「そもそも山里をさ迷い歩いても鬼は出ないよ。出そうなところで待ち伏せするんだ」と弘樹。


「では今までの話し合いはなんだったんだ」と斉藤。


「知らないね。ぼくは聞いてなかったから」と弘樹。


「なんだと!」とホールからの声。「わざわざお前たちのために来てるんだぞ。」


「頼んでないよ」と弘樹。


「ふざけるな!こちらこそ願い下げだ」と誰か。「何で白木の娘の彼氏に手柄を立てさせる手伝いをしなきゃあならんのだ!」


「そんな話になってるのかい?」と言って弘樹は斉藤の顔を見た。


「いや、これは……」と斉藤。


「姉さん、帰るよ」と弘樹が立ち上がり、リュックを背負い始めた。


「お待ちください」と広瀬。「今の言葉は私から謝罪いたします。」


「弘樹、短気を起こさないで」と朱良。


「すごく不愉快だよ」と弘樹。


「あなたも少し先輩の武道家に敬意を払ていただけないでしょうか」と広瀬。


 弘樹はすくっと立ち上がってホールの方に向いた。「はじめに言っておくが、ぼくは武道家でも格闘家でもない。はっきり言って、君たちみたいな連中は大嫌いだよ。他人を上手に叩けるからって何を威張ってるんだ。馬鹿じゃないのか、あんたたちは!」とどなってからリュックを背負った。


 出て行こうとする弘樹に朱良が「もう遅いから今日はここに泊まりましょう。明日の朝、帰ればいいでしょう」と言った。


「部屋を用意していただけませんか?」と朱良は広瀬に言った。


「わかりました」と広瀬はバタバタと奥の管理人の部屋に駆け込んでいった。戻ってきて、「鶴の間にお入りください。布団はすぐ用意するそうです」と言った。


 弘樹と朱良は廊下の奥に入った。


 しばらくすると朱良が戻ってきて広瀬に頭を下げた。「申し訳ありませんが、宿の方に食事と風呂の用意をお願いできないでしょうか。弘樹を説得しますので。」


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