情報収集の基本は酒場から
キースと名乗った男は、尚も喋り続けている。
だが少し気になる事を言っていたな。ギルドがどうとか……。
「おい、ギルドについて詳しく話せ」
俺は喋り続けている男に聞く。
「お。やっと会話してくれる気になった? でもなんでギルド? 知らないの?」
ようやく反応した俺にキースは嬉しそうな顔をして言った。
質問が多い奴だ。
黙って睨んでいると、ギルドについて説明しだした。
「睨む事ないだろー。えっと、ギルドって言うのは、国に命じられて勇者を管理している所だよ。勇者になりたい奴はギルドに行って試験を受けなきゃならないんだ。でも受かってしまえばこっちのもん、軽い犯罪なら罪に問われない」
キースは一旦言葉を切った。俺が視線だけで続きを促すとまた話し始めた。
「後は……。そうだな、魔物が出た時にギルドから討伐命令が出る。断ると勇者の資格を剥奪されるんだ。ギルドの人間に金を渡して自分には命令が来ないようにしてる奴もいるけどな。そういうのは特に地方に多いな。この町のギルドもそうだ」
勇者が多い理由は分かった。傭兵の意味合いも強いのだろう。
国が操っているのなら、それなりの命令系統も有るか。
勇者が一組毎ではなく、軍隊としてまとめて来ることが有るかもしれない。
「で、どう? 俺と組まない?」
「……勇者になる気は無い」
しつこいので俺はきっぱりと言った。
こいつを黙らす為の嘘では無い。
確かに勇者になれば、内部情報も知れるし色々と便利だろう。
だがしかし、たとえ振りでも勇者を名乗るなんざ俺様のプライドが許さない。
「えっ! まじで!? あんたかなりの実力者だろう。勇者にならないで何をするって言うんだよ」
世界征服。
とは流石に言わないが……。
何から始めるかはまだ考えていない。
「お前には関係無い」
「え~。良いじゃん、ギルドについても教えてあげたんだし」
一々うるさい奴だ。
俺はキースを無視してこれからの計画を考える。
まずは、この世界の規模を知る必要があるな。
「マスター、この辺に世界地図を売っている店はあるか?」
キースに話しかけるのが面倒になり、マスターに尋ねた。
「えっ? ああ、地図なら道具屋で売ってるよ」
マスターは店が壊された衝撃からようやく立ち直った様だ。
「どこにある?」
「そうだな…「あっ! 俺知ってるよ、案内しようか?」
マスターの言葉を遮りキースが言った。
マジでウザい。
「で、マスター。場所は?」
俺はキースを無視した。