修羅場
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職員室に行って、日誌を先生に渡した。
「先生…………」
「何だ?」
体育館での事を、先生に伝えるべきか迷った。でも、チクったりなんかしたら、めんどくさい事になる。
「いえ、何でもないです。」
帰り際、やっぱり気になって体育館の中を覗いてみると…………そこは修羅場だった。
ミホは小崎の前に立って声を張り上げていた。
「もうやめてよ!!」
「はぁ?お前、どっちの味方だよ?」
「もういい。もうやめてって言ったよね?」
ミホ…………。
「何でお前の指図なんか受けなきゃなんねーの?」
太田がミホに近づくと、ミホは拳を握りしめて震えた。やっぱり太田は裏表が激しい。さっき教室にミホを探しに来た人とは別人みたい。
「元々はお前がやれって言ったんだよな?小崎をやれって。」
「そうだよ?でも、これはやり過ぎだよ。暴力振るえなんて誰も言ってない!!」
体育館の扉の隙間から中を覗いていたら、後ろから声をかけられた。
「野々村?」
なんだ……加島か。
「小崎知らない?学校にはいると思うんだけど…………」
「しー!加島、声が大きい!」
私の顔を見て、加島は体育館の扉を開けた。
「お前ら何やってんだよ!」
加島、何で入って行く訳!?ヒーロー登場かのように、堂々と加島が入って行った。
「小崎と芦原さんに何した!?」
「うるせー!外野は黙ってろ!」
「キャッ!!」
加島は太田の仲間に少し押されて、女子のような声を出していた。
「もうやめてよ。太田君の言う事、聞いたよね?ちゃんと聞いたのに…………どうして?約束が違うよ!」
ミホ…………それ、どうゆう意味?
「やだな~ミホ。一度したくらいで大騒ぎするなよ。」
一度…………した……?
「あ、悠太!勘違いしないで!バスケの話!」
いや、それ無理あるって。
「そういえば、友達もすぐヤれる女だったよな。お前ら仲良しだな~!」
「お前ら!野々村はそんな女じゃない!」
そこ、加島入らなくていいから。
「うるさい!やれない女よりやれる女の方がいいもん!」
だからミホ、それは…………
「開き直りかよ~!」
「違う!バスケの話!!」
ミホは太田を真っ直ぐ見て言った。
「やれるよ。悠太のためなら、何だってできる!やらないよりはやった方がマシ!!」
「だったら、やれるんだよな?なるんだよな?一生、俺の奴隷。小崎の代わりに、お前がサンドバッグになるよな?」
「いいよ。殴れば?覚悟できて…………」
ミホがそう言った瞬間、太田は裏打ちでミホを叩き飛ばした。
ミホの倒れた音だけが…………体育館に響いた。