知らないうちに
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「小崎!俺を呼べって言っただろ?」
加島が血相を変えて来た。
「だって…………加島は弱いし……。」
その言葉に加島は凹んだ。いや、小崎人の事言えないよね?普通にやられてたよね?
まぁ、何となくその気持ちはわかる。加島は弱そう。
「へこむなよ、加島。加島には感謝してる。日野さんも、助かりました。」
「小崎さ、少しはやり返せよ。やり返さないとずっと的のままだぞ?」
「え?何?小崎いじめられてんの?」
たまたま絡まれただけなのかと思っていた。
「あのさ、あの写真って……。」
「あ、日野さん、勘違いしないでくださいよ?」
二人が申し訳なさそうな顔をしてこっちを見た。
「してないよ。いや、マジで。全然。」
加島は小崎を立ち上がらせながら言った。
「小崎、あのさ、芦原さんは昔からあんな感じか?俺、ちょっと恐いんだけど。」
「恐い?美帆乃はただバカなだけだよ。感情的になると先の事を考えられない。本人は、目的の為に全力を尽くしてるだけなんだ。」
何?芦原さんが問題みたいな話?
「ただ悪気が無くて……それは違うと教えれば、理解できる。素直で、反省できないわけでもない。悪い奴じゃないんだ。今頃自分のした事に後悔してる。」
「それは……そうかもしれないけど、これだけ迷惑かけられても黙ったままでいるつもりか?」
「あの、状況が理解できないんだけど、小崎がやられてるのって芦原さんのせい?」
加島がため息をついて言った。
「多分、芦原さんが今付き合ってる奴が中心にやってるんだと思います。」
「じゃ、芦原さんにどうにかしてもらえばいいんじゃないの?」
「それって、芦原さんがどうにかできるもんですか?」
確かに……。芦原さんが止めろって言って止めるものか?いじめ問題の解決の仕方なんて、誰が知ってるんだ?誰が解決できる?
「いい。美帆乃にどうにかさせたりなんかしたら、太田は美帆乃に何するかわからない。」
「これで芦原さん守ってるつもりか?」
「どうせ気が済めばいつか終わる。中学でもこうゆう事あったし。」
小崎、慣れてる?
「中学も?」
「多分、僕を孤立させて独占したいんだと思う。」
「お前学習しろよ!」
加島はイライラしていた。そんな加島に小崎は肩を落としていた。
「ごめん。加島。加島に迷惑かけてばっかりで…………ごめん。」
「小崎……。」
何だか…………俺の知らないうちに複雑な事になってる。家で芦原さんと菜都実先輩はどんな話をしているんだろう……。