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押し入り


54


家のドアを閉めようとした瞬間、ドアとドアの隙間に、突然鞄が飛び混んで来た。鞄が挟まったドアの隙間をこじ開けて、美帆乃が中に入って来た。


えぇええ!?押し入り!?そんなのアリ!?


「え?あのさ……。」

「何?お邪魔します!」

「ちょ、ちょっと待て!」

どんどん中に入って行く美帆乃を止めて、先に自分の部屋に入ってドアを抑えた。


「ちょっと!開けてよ!!」

「ダメだ!」

「何でよ!それとも、もう、幼なじみじゃないから?」

それは…………

「幼なじみじゃなくなったから入れてくれないんでしょ?!」

「それは…………」

「じゃ、開けてよ!」


もう、美帆乃とドアを押し合っても、押し負ける事はなかった。

「あれ?全然開かない!この前は開いたのに!悠太!開けてよ!!」


そうだよ。もう、幼なじみじゃない。友達の彼女だ。だから、部屋には入れられない。


ドアの押し合いに勝って…………僕は何をしてるんだ?


「…………。」

静かになった。帰ったのか?そう思って、ドアを押す力を緩めると、一瞬開いてしまった。

「痛っ!!」

「あ!大丈夫か?指挟んだ?」


まるで、北風と太陽のような展開で、ドアを…………開けてしまった。


美帆乃はどんどん迫って来て、僕の肩を押した。よろめいた後、後ろのベッドに倒された。

「何するんだよ!」

「悠太のバーカ!!」

「わかってるよ……。」

かすかな声で言いながら、ベッドから起き上がると…………美帆乃に…………キスをされた。


「悠太のバーカ!これで悠太は、友達の彼女とキスした最低野郎!苦しめ!!」

「ふざけんな!!」


僕は…………キスを仕返した。


これは…………仕返しだ。


「美帆乃が悪い。彼氏の友達とキスした最低女だ!お前も苦しめ!!」

「もっともっと苦しめてやる!だから…………もっともっと苦しめてよ。悠太……。」


美帆乃の嫉妬は…………僕にぶつけられた。僕は…………美帆乃の気持ちを考えていなかった。本当の美帆乃を見ていなかった。


僕は…………ずっと、ずっと一緒にいられるように、あの頃の美帆乃を見ていた。屈託なく笑い合った、小学生だったあの頃……。


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