押し入り
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家のドアを閉めようとした瞬間、ドアとドアの隙間に、突然鞄が飛び混んで来た。鞄が挟まったドアの隙間をこじ開けて、美帆乃が中に入って来た。
えぇええ!?押し入り!?そんなのアリ!?
「え?あのさ……。」
「何?お邪魔します!」
「ちょ、ちょっと待て!」
どんどん中に入って行く美帆乃を止めて、先に自分の部屋に入ってドアを抑えた。
「ちょっと!開けてよ!!」
「ダメだ!」
「何でよ!それとも、もう、幼なじみじゃないから?」
それは…………
「幼なじみじゃなくなったから入れてくれないんでしょ?!」
「それは…………」
「じゃ、開けてよ!」
もう、美帆乃とドアを押し合っても、押し負ける事はなかった。
「あれ?全然開かない!この前は開いたのに!悠太!開けてよ!!」
そうだよ。もう、幼なじみじゃない。友達の彼女だ。だから、部屋には入れられない。
ドアの押し合いに勝って…………僕は何をしてるんだ?
「…………。」
静かになった。帰ったのか?そう思って、ドアを押す力を緩めると、一瞬開いてしまった。
「痛っ!!」
「あ!大丈夫か?指挟んだ?」
まるで、北風と太陽のような展開で、ドアを…………開けてしまった。
美帆乃はどんどん迫って来て、僕の肩を押した。よろめいた後、後ろのベッドに倒された。
「何するんだよ!」
「悠太のバーカ!!」
「わかってるよ……。」
かすかな声で言いながら、ベッドから起き上がると…………美帆乃に…………キスをされた。
「悠太のバーカ!これで悠太は、友達の彼女とキスした最低野郎!苦しめ!!」
「ふざけんな!!」
僕は…………キスを仕返した。
これは…………仕返しだ。
「美帆乃が悪い。彼氏の友達とキスした最低女だ!お前も苦しめ!!」
「もっともっと苦しめてやる!だから…………もっともっと苦しめてよ。悠太……。」
美帆乃の嫉妬は…………僕にぶつけられた。僕は…………美帆乃の気持ちを考えていなかった。本当の美帆乃を見ていなかった。
僕は…………ずっと、ずっと一緒にいられるように、あの頃の美帆乃を見ていた。屈託なく笑い合った、小学生だったあの頃……。