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元彼


52


「あれ、千尋じゃん。」


改札を通った後、駅のホームに行こうとすると、突然後ろから話しかけられた。


その声…………元彼だ。


前に、駅のホームで浮気現場を目撃した後、LINEで別れたまま、一度も会ってなかった。


「へぇ~!もう新しい男連れてんだ。」

「違っ…………」

「そうだよ。何か問題でもあるかよ?」

加島…………何言ってんの?


「いや、あのこれは……。」

「行こう、野々村。」

加島が私の手を引いて行こうとすると、元彼がボソッと言った。

「かわいそー。友達に彼氏のふりさせるとか、惨めだな。」


頭に来た!!ムカつく!!

「ふざけんな!誰のせいでこうなってると思ってんの!?アンタが裏切ったからでしょ!?」

自分の事をなんて言われても我慢できる。でも、友達を侮辱されるのは許せない!!


「少し落ち着け野々村。」

これが落ち着いていられる?

「はぁ?お前がつまんねーからだろ?」

「それはアンタも同じでしょ!アンタみたいな男と付き合うんじゃなかった!」


元彼が手を振り上げた瞬間、加島が…………私にキスをした。


「本当に付き合ってる。これで満足か?」


振りかざした手が、そのまま降りて行った。


「満足だよな?行こう。」


その手を見て思った。この手は……本当に私と手をつないだ手と同じ?同じ人?私はこの人の何を見ていたの?


今はもう、何も見えない。


私は、彼の最後の顔さえ見れずに、その場を立ち去った。


加島は私の手を引いてホームの端に連れて行った。ホームの端の方は…………比較的人が少なかった。


二人でベンチに座ると、加島が気まずそうに口を開いた。

「あの…………ごめん。」

「何で加島が謝るの?」

「勝手に…………」

そうだ……。


私さっき、加島と…………何とも言えない罪悪感が沸き上がって来た。


「何考えてるの!?アンタは今ミホと付き合ってるんでしょ!?」

加島じゃない。加島は悪くない。加島はただ…………私を助けてくれただけ。

「ごめん。私のせいで……私が全部悪いのに……ごめん……。」


絶対泣きたくないと思っていても頭と心は別々だった。


……勝手に、涙が頬を伝い流れて、握りしめた手の甲に落ちていた。


「ごめん……。」

「だから……なんで加島が……謝る……。」

「ごめん……。」


それから、何本も電車を見送る間、加島は何度も何度も謝っていた。


それは…………ミホに?小崎に?それとも、ミホの友達の私に?


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