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やってきました!
今日は新入生オリエンテーションの日!
そして、ヒロインの水谷 朱梨を観察する日!
あの場面が生で見れるのかぁーとウキウキしすぎて、昨日もあまり眠れませんでした。
だが、この10代の若さ溢れる体に2日連続の睡眠不足など関係ないのだよ!
まぁーちょっと寝不足で朝から変なテンションではありますが……。
あくびをかみ殺して、教室に入ると私に気づいた女子生徒達が押し寄せてきた。
「星野さん! あなた生徒会補佐になったって本当?」
「昨日の夜に連絡が回ってきて、皆これが本当なのか知りたいのよ!」
そう言って1人の女子生徒が、携帯の画面を見せてくる。
そこには「初日から掟破りの転校生 星野 宇宙 生徒会補佐に就任!?」から始まり、昨日の五十嵐君お姫様抱っこ事件の女子生徒は私ではないかと書かれていた。
あぁ、だから皆さんの目がギラギラしていたのですね……。
生徒会補佐には、なった覚えはないですね。
だってそれは、後々ヒロインの水谷さんがやるから、私はお呼びでないのですよ。
しかし、五十嵐君のお姫様抱っこは私ですね。
これ、絶対に肯定したらダメなやつだよね……。
私は冷や汗をダラダラ流しながら、この危機を乗り越えるためにどうすればいいのかと思考を巡らせた。
その時、ドンっと後から誰かに抱きつかれた。
なんだ? と思って後を振り返ると、美央ちゃんが私に抱きついていた。
お、おぉーー何、この嬉しい状況。
朝から美央ちゃんに会えただけでも嬉しいのに、抱きついてくるとか可愛いすぎなんですけど!
私が固まっていると、美央ちゃんは私を抱きしめたまま横からひょこっと顔をだす。
「宇宙は私の友達だから、いじめたらダメ!」
そう言って、美央ちゃんは女子生徒達を睨みつける。
美央ちゃーーん!!
皆に友達宣言してくれるとか、私、嬉しすぎて死にそうなんですけど……あっ、興奮しすぎで鼻血でそう。
「ほらっ、宇宙は私とペアなんだから行くよ!」
「は、はい!」
美央ちゃんは私の手を引いて、どんどんと先を歩いて行く。
後から「やっぱり生徒会補佐の件は本当だったのね」とか「幹部でもないのに、なんなのあの女!」とか好き勝手言われているけれど、それよりも私の意識は美央ちゃんと繋いでいる手に集中していた。
こ、これが噂に聞く、仲良しの女子同士が手を繋ぐというやつでしょうか?
そしていつの日か、手を繋いで一緒にトイレに行ったりするのだろうか?
あぁー、もう想像が膨らみすぎて、顔がニヤけるのを抑えられない。
「こんな事だろうと宇宙を迎えに来て良かったわ。ほんっっと、女ってくだらないーーって、宇宙! 鼻血!!」
振り向いた美央ちゃんが、私の顔を見て慌て出す。
あぁ、やっぱり鼻血でてたか……。
でも、この幸福の時間をもう少し味わっていたかったのですがね……。
私はポケットからティッシュを取り出し、無造作に鼻につめる。
「これで大丈夫です。行きましょう、美央ちゃん」
「えっ、でも鼻血……もしかして、さっきのアイツらに何かされた?」
そう言う美央ちゃんの背後に、ゴゴゴゴっと効果音でもつきそうな黒い炎の幻影が見える気がした。
「ち、違うんです! あの……美央ちゃんに抱きつかれたり、友達って言われたりして、嬉しすぎて興奮してしまいまして、それで鼻血が出ただけなんです!!」
それを聞いた美央ちゃんはポカーンとしてしまった。
「あっ、やっぱり気持ち悪いですよね。すいません……」
「ち、違うのよ、宇宙。私もそんな事言われたのが初めてだったから、驚いただけ」
そう言って、顔を赤くして俯く美央ちゃん。
えっ!? この反応はもしかして……。
「もしかして、照れていたりします?」
「うるさいわね……ほら、早く行くよ!」
美央ちゃんは顔を赤らめたまま私の腕を掴んで、無言のまま私を講堂まで引っ張って行った。
♢ ♢ ♢ ♢
講堂に着くと、既に生徒会メンバーは揃っていた。
その後には、きちんと整列した女子軍団。
私の姿を見た女子軍団は、皆眉をひそめた。
あっ、鼻にティッシュ詰めたままだった。
私はまたポケットからティッシュを取り出すと、今度は丁度いいサイズに丸めて、こっそりと鼻のティッシュを詰め替えた。
これならパッと見、分からないから大丈夫でしょ。
チラッとまた女子軍団の方を見ると、まだ怪訝そうな顔をしたままだった。
えっ……ティッシュ鼻に詰めてるから、見られてるのかと思ったけど違うみたい。
なぜっ!?
あっ、もしかして朝の「生徒会補佐」の件?
でもあれは誤解だしな……。
丁度その時、生徒会長から今日の進行スケジュールについての説明が始まった。
すると、女子軍団は怪訝そうな顔をやめ、ウットリと生徒会長の説明を聞いていた。
ホッと胸をなでおろし、私も今日のスケジュールと割り当てが書かれたプリントを受け取り、説明を聞きながらそれに目を通していく。
そんな時、隣にいる美央ちゃんに肩を叩かれた。
プリントから目を離し、美央ちゃんの方を向くと、美央ちゃんは何やら黒い笑みを浮かべていた。
「ねぇ、宇宙。こんな仕事は湊に全部押しつけて、私にちょっと付き合ってくれない? 自分の目で確認したい事があるのよ」
「えっ!? でも、人手が足らないから私が呼ばれたんですよね?」
「大丈夫、大丈夫。そんなの湊に任せとけばいいから。それより、あのクソ女の動向の方が気になるのよね……」
んっ? 空耳かな?
こんな可愛い子から「クソ女」とか聞こえた気がする……。
いやいや、ないない。
美央ちゃんがそんな汚い言葉を使うわけなんかない。
「宇宙、聞いてるの? あの水谷 朱梨とかいうクソ女の動向を一緒に調べてくれない?」
「クソ女」って言ってたぁー!
聞き間違いじゃなかったー!
美央ちゃんの可憐な唇から発せられる言葉に衝撃を受けていると、美央ちゃんは瞳を潤ませ「ダメ?」っと小首を傾げて聞いてきた。
それを見た私は、美央ちゃんの口から発せられた言葉など、もうどうでもよくなった。
私は首を勢いよく、何度も上下に振る。
美央ちゃんはニッコリ笑い「ありがとう」と言った。
そんな美央ちゃんを心の中で「マジ天使!」っと私が崇めている間に、美央ちゃんは湊君の方へとスタスタと歩いて行った。
少し会話をして、首を横に振る湊君。
しかし、次の瞬間には首を縦に振っていた。
話は終わったようで、こちらに笑顔で戻ってくる美央ちゃん。
その後で肩を落としながらため息を吐く湊君。
「美央ちゃん……なんか湊君が嫌がっているように見えたんだけど……」
私がそう尋ねると、美央ちゃんはキョトンとした顔をして答えた。
「えっ? 姉のお願いを、弟に拒否する権利なんてないでしょ?」
それが当たり前だというように答える美央ちゃん。
私には兄弟がいた事ないからわからないけれど、それが世間一般では当たり前の事なのかな?
チラッと湊君の方を見ると、湊君と目が合って「大丈夫」とでもいうかのように、元気のない笑みで手を振ってくれた。
まぁ、世間一般の事は分からないけれど、桜木姉弟の間では普通の事なのだろう……。
私はペコッと湊君に頭を下げた。
頭を上げた時、蓮様が何故か青い顔をしていたけど、またお腹でも痛くなったのだろうか?
心配になり蓮様を見ていると、生徒会長の説明が終わった。
「では、各自で割り当てられた仕事を頼む」
生徒会長が最後にそう言うと、皆が一斉に動き始めた。
美央ちゃんも私の腕を掴むと「宇宙! こっち!」と言って、講堂の舞台袖に私を引っ張って行った。
美央ちゃんに何度も引っ張られるの次の話に繋がるので、突っ込まないでいただけるとありがたいです(;^_^A




