序
維、 時は辛卯の年、大倭の中つ代なり。
歳は、大君の治め給いし、世の久遠なる時の初めに在り。
夜半、赤城の神、大いなる異変を現す。
天、忽ち裂け、火の雨、地に降り注ぎ、雷霆、山を砕く。
里、声無く、人震え、畏れ、懼る。
旦に至りて、山中を検ぶるに、奇岩大地を穿つ。その色、鉄の如く光を放ち、凡そ地上の物にあらず。
識者曰く、「これ、天外より飛び来たりし、星の霊石なり」と。
故に、神の威光、永くこの地に宿らんことを願い、里の鎮として、ここに此の事を刻み、世々に伝え、子々孫々まで、敬い、拝むべし。
* * *
私は赤城の山に存する墜星宮と呼ばれる神社で宮司を務める者である。
ここ群馬の地には〔墜星の夜〕という伝承が、人知れず語られているが、貴君はご存知だろうか。
ここ赤城山に巨大な隕石が落ちたとされる伝承である。
先の碑文は、我が社に伝わる石碑に刻まれたものであり、時は四世紀頃の話だと言われている。
当時、都から遠く離れたこの群馬の地は、広大な平野の北端部にひっそりと集落が点在する田舎であった。
その群馬の地に落ちた隕石の話はたちまちのうちに都へと伝わり、大いに話題になったという。
都では神の怒りとも、天の災いとも言われ、宮を立てることを許可したとされる。そしてここに我が社である墜星宮を建立するに至ったのである。
それから千七百有余年の長きに亘り、我が社はこの群馬の地を見守ってきたのである。
今また、群馬の地は、再び都の目を惹いている。
私はこの歴史を後世に語り継ぐべくここに書き記しておこうと思う。我が祖先がそうしてきたように。




