083『金剛中佐の休日』
まりあ戦記・083
『金剛中佐の休日』 金剛中佐
——助かりました、ご協力感謝します——
救急司令は丁寧に礼を言っていたが、声の響きでいっぱいいっぱいなのが知れる。
防御システムの更新は畑違いなんで、丸一日の休暇を取った。
たった一日なんで、あてもなく車を走らせるだけ。湘南の方に行ってみようかと思ったが、信号が赤だったので左折して旧中央線に沿って西に進む。たしか日の出町に出るはずだ。
西に進んで日の出というのは妙だが、それは都心から見た感覚。甲府などから見れば東、日の出でおかしくない。
『金剛、それが偏見だ』
士官学校同期の宮田が言っていた。
宮田は日の出町の出身で『日の出の勢いで発展するようにって付けられた名前だ』と胸を張ってやがった。町の紀章がふるっていて、いつも難しい顔をしていた親父に似ていた。
『でもな、上下逆さにすると、丸顔の子どもがニコニコしてるみたいだろ』
そう言ってニコニコしている宮田こそが、逆さ徽章に似ていて、指摘すると嬉しそうにしてやがった。それで、途中で思いついて花を買って墓参りすることにした。
ま、偶然と思い付きのドライブだ。面白かったらみんなを誘って改めて来よう。みなみは防御システムの更新で忙しい、まりあとナユタはアメリカのPOZYだから、やつらの目途が立たなきゃ駄目だがな。中央もアマテラスとしては稼働しているが、七福神はいっぱいいっぱい。こないだもビシャモンだけが結論を変更して、ストレスだったしな。
途中、パトカー、ガスの緊急車両が一台ずつ。救急車はサイレンを含めて三台を数えた。まあ、消防車や軍の緊急車両を見かけないだけましなのかもな。
町役場を過ぎ、少し山に入ったところが霊園だ。
少し迷って駐車場を見つけ、霊園の水場で桶を借りて墓石を探す。霊園の墓石というのはたいてい『~~家之墓』となっているが、奴のはそれとは別に『宮田隆之墓』となっている。第二次ヨミ戦の英雄だからな。
墓石を洗って、花を活け、線香をあげて手を合わす。
南無阿弥陀仏を三回唱えたところで、霊園の奥の方が騒がしくなる。
立ち上がって様子を見ると、だれかが急病の様子!
「どうしました!?」
駆けつけると、お墓参りの三人連れ、まだやっと年金生活という感じの女性がグッタリしている。ほかの二人は子供と孫でオロオロするばかり。
「救急車を呼んで!」
息子という感じのに命じて、脈と呼吸を確認。
くそ、ナシナシだ!(心拍呼吸の両方が無い)
「AEDを探して!」
「「ハイ!」」
娘らしいのが駆けだすが、待ってはいられない。
「蘇生措置します!」
訓練以外でも、十数回やった蘇生措置を実施。一分ちょっとやって、鼓動が回復。
「……救急車出払って、ちょっと時間がかかるみたいです」
泣き出しそうな息子。娘も手ぶらで戻ってくる。
「仕方ない、自分の車で運ぼう」
ピーーポーー ピーーポーー ピーーポーー
特務旅団の軍人は自家用車にも覆面パトのような非常灯を積んでいる。出動命令が出た時に一刻も早くベースに戻るため、緊急車両の扱いになるんだ。
初期対応が良かったのと、緊急車両として走行できたのと、この金剛武志の運転スキルで事なきを得た。
「助かりました、ご協力感謝します」
あとで連絡をくれた救急司令は丁寧に礼を言ってくれた。帰り道でも救急車とすれ違った——アメリカ製の鎮静ガス——頭をよぎったが、それ以上の思考には蓋をした。
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団少佐
・中原光子少尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務中佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子 舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵 時子の祖父(080で死亡)
・メグリ先生(?) 晋三が小一の時の担任
・米国特務旅団 どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐
☆彡 重要語句
・インテグレーション(integration) ウズメ02を複数パイロットの能力を統合して操縦すること
・セパレートアタック 複数パイロットが個別にコントロールして攻撃すること
・ケティちゃん ケティちゃんを依り代とする小思念体
・PONSY ポーツマスネイバルシップヤード(アメリカの特務旅団)
・中華飯店 ポーツマスのレストラン、78回からは中華飯店9090




