075『ゲテイスバーグの戦い・2』
まりあ戦記・075
『ゲテイスバーグの戦い・2』 晋三
銅像の時は等身大だったそいつは、初代ゴジラほどの大きさになってやがった!
知ってるか? ゴジラってのは回を重ねるごとにデカくなってんの。
昭和29年の第一作では、身長50メートル。やつがぶっ壊す服部時計店のビルから胸から上が出る程度だった。それが、アメリカに渡ってハリウッドが作った時は300メートルにもなっちまいやがる。シンゴジラじゃ100に落ち着いたけど、それでも初代より40もデカかった。
で、数キロ先に迫ったリンカーンは初代ゴジラくらいの大きさだ! ついさっきゲティスバーグのベンチに座っていた時は、さっき言ったみたいに等身大だったんだぜ!
そいつが、ノッシノッシと東、いや、南に向きを変えやがった。
『ワシントンに向かっていく!』
どろしーが悲鳴みたいな声をあげやがる。
ゲテイスバーグの銅像はうる覚えだったどろしーだけど、やつがワシントンに向かうヤバさは分かってるんだ。ワシントンはアメリカの首都だからな。
『死守しろ!』
ボギー大佐も念押しの命令、『ラジャー!』と応答して、真っすぐに進んで行く!
行くのはいいけど、どろしーのブリキマンはコアだけになてしまって、武器は臨時に付けた対空ミサイルとパルスガンがあるだけだ。どうするんだろうと思ったら、『けん制して引き付けるから、そっちでやって!』と悲鳴みたいな声。
「まかせとけ!」
元気に応えるナユタ。インテグレーションモード(統合モード)と違って、自分の意志だけで操縦できることが嬉しいみたいだ。
パシュ! ダダダダダダダダ!
一度撃ったらそれっきりのミサイルを放って、パルスガンのトリガーを引きっぱなしにしてリンカーンの顔を掠めて飛ぶどろしー。
リンカーンは煩わしそうに手で払いのけるだけで、そのままノッシノッシと速度も落とさずに進んで行く。
ダダダダダダダダ!
パルスガンを掃射しながら、もう一度後ろから!
ブン!
メモ帳を持っていない右手で追い払おうとするリンカーン!
「今だ!」
ドドドドドドドドドド!
レールガンを連射しつつ丸まっちいウズメ02が突進! リンカーンが振り向くと、とっさに地に伏し、伏した姿勢のまま突き進んで、やつの脚に食らいつく!
ガシ! ブン!
……意外な敏捷さで、それを躱すリンカーン!
「やるじゃねえかぁ……」
不敵に呟くと、両手両足で地面を蹴ってハイジャンプ!
とっさの動きに奴の動体視力が追いつかない。
シュ!
今度はどろしーが超高速で目の前を横切る!
再び翻弄されたリンカーンは、目をつぶって立ち止まった。
「今度こそ!」
急降下したウズメ02、拳を突き出してダイレクトアタック!
バシ!
「チ!」
手ごたえはあったが、リンカーンのやつ、右手で払いのけやがる!
『効果あった!』
「おお!」
急降下の運動エネルギーは凄まじく、リンカーンの腕は捻じれて逆方向に向いてしまっている。
『もう一発!』「いくぞ!」
どろしーとナユタの声が重なって、二方向から挟むように突撃し、やつのすぐそばを掠めながら打撃を与えていく。全長20メートルもあるウズメ02だけど、ナユタの敏捷性は凄くて、二撃三撃とヒットさせていく。どろしーはひたすら付きまとって、隙をつくるのに専念している。
ドッゴーーン!
バランスを崩してリンカーンは転倒した。
何発もの弾や蹴りをうけ、腕も脚も、ボディーさえあらぬ方向に曲がっている。
もうちょっとだ……と思いながら、ちょっと変だ。
リンカーンのやつ、左手は使っていない……というか、左手に持ったメモ帳を手放さない。
そう思ったとき、やつのシルクハットが舞い上がって、傷ついたリンカーンに光を照射した。
こないだの麦わら帽子のこともあるので、直ぐには手を出さずにいると、リンカーンは見る見るうちに傷を回復させていきやがる!
「リペアしやがった!」
『もう一回やる!?』
「おお!」
その気になって突っ込もうとしたとき、パルスジェットが二人の前を横切った。
『「うわ!」』
『もう、勝手に行かないでよね!』
「あ、テレジア!」
『あんたたちの機体優先で後回しにされてたのよ』
テレジアはほとんど戦力にならないので気にも留めていない二人だった。
『管制機が居なきゃ、統合的な戦闘ができないでしょうが』
「だって」『リンカーンのやつ』
『二人とも限界近いよ』
『「え?」』
初めて自分たちの機体に意識を戻す二人。機体のコンディションメーターは、赤に近い橙色になっていた。
『「くそ!」』
『でも、敵も限界みたいよ』
一キロほど先を歩いていたリンカーンがゆっくりと振り返ると口が動いた。
——Where there's a will, there's a way——
「え、なんて?」『ええと……』
『意志あるところに道あり。リンカーンの決め台詞のひとつよ』
テレジアが解説すると、再び歩き出した……と思ったら、手足の先からボヤケてきて、数秒後にはシルクハットとメモ帳だけが残る。
フワ
メモ帳が落下しそうになると、シルクハットが拾い上げ、西に向かって飛んで行ってしまった。
追いかける力も残っていないので、ウズメ02をニュートラルに戻し、アパラチア山脈の山並みに沿ってポンジーに方向を取る。二機のウズメと一機のパルスジェットは夕日に照らされ、なんだか、一日遊びまくった子供が家路につくような感じ……というのは不謹慎かなとも思うホトケさんの俺だった。
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団大尉
・中原光子少尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務少佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子 舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵 時子の祖父
・メグリ先生(?) 晋三が小一の時の担任
・米国特務旅団 どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐
☆彡 重要語句
・インテグレーション(integration) ウズメ02を複数パイロットの能力を統合して操縦すること
・セパレートアタック 複数パイロットが個別にコントロールして攻撃すること
・ケティちゃん ケティちゃんを依り代とする小思念体
・PONSY ポーツマスネイバルシップヤード(アメリカの特務旅団)




