073『オンライン国際会議』
まりあ戦記・073
『オンライン国際会議』 晋三
うーーーーーん
対ヨミ戦の日米代表たちが唸っている。
場所はポンジーのCIC(戦闘指揮所)だ。本来なら会議室かブリーフィングルームなんだけど、ヨミの被害でまともに使えるのがCICだけなんだ。ま、ヨミの出現とかの不測事態が起こったら、そのままスイッチ一つで切り替えられるからでもあるんだけどな。
目の前のモニターには親父とみなみ大尉が映っている。ついさっきまでは世界中のヨミ対策の責任者がマス目の小窓に映っていたんだけど、日米に任せて消えてしまった。
世界で深刻な被害を被っているのは、壊滅した中ロを除けば日米だということでもあるし、中ロへの攻撃は、今のところほとんど止んでいるからでもある。
で、何を唸っているかと言うと、ヨミの法則性なんだ。
前にも言ったけど、ヨミの形態、攻撃方法、出現場所、そういうものが全然予測がつかない。
巨大な宇宙船のようだったり、戦闘艇の大群だったり、記号のようなものだったり、幾何学模様だったり、宗教的なシンボルのようだったり。ついこないだは巨大なストローハットだったしな。出現場所も、いきなり都心だったり、湘南の海岸だったり。
『何度も言ったが、ヨミに法則性を求めるのは意味がない。ただ、諦めてしまったところには出現率が低くなる傾向がある』
「日本とアメリカに集中しているというのは諦めが悪いということだろうなあ……」
親父の分析に、ヘンリー准将が感想じみた答えを言う。
『戦い続けて、その結果と情報を共有し続けるしかないと思う。日本への攻撃は一時的に止んでいるが、諦めたというわけではない』
「そちらが大変になったら、ウズメ02はいつでもお返しする。ウズメエンジンなら半日で往復できるからね」
『ありがとう、そういう事態にならないように祈っているよ……大尉からは?』
『そちらから頂いたガスの効果資料が整いましたので、このあと送らせてもらいます。わたしからは以上です』
『それでは、これくらいで。幸運を祈る』
「こちらもだよ舵司令。それでは……」
ほとんど定時連絡になってしまった国際会議が終わって、CICの主役はモニターや機器の電子音に入れ替わった。
「それじゃ、あとの警戒は頼んだよ」
担当のスタッフ達に声をかけて、准将と大佐はCICを後にした。
「鎮静ガスについては、うちの方が優れているようだな」
ゴルフのスコアのように准将が言う。
「優れてはいるが、副作用で死ぬ者も多い、この分だと、銃器による死者数を超えてしまうだろう」
大佐は、その名の通りボギーでコースを周ったように軽い。
「今朝、CIAから四半期のデータが届いた。見るかい?」
「転送してくれ」
「ああ、これはドキュメント(書類)なんだ」
端末を出しかけた大佐を制して書類を見せる。
「……ええ!?」
「銃器の死者プラス交通事故死くらいの数だ。まあ、ベトナム戦争とコロナを足したぐらいの犠牲で収まればホワイトハウスは黙認する」
「やれやれ……」
被害のわりに穏やかだと思ったのは、そういうカラクリがあったんだ……。
で、その鎮静ガスを日本がウズメ02とバーター交換。
ちょっと背筋が寒くなったぜ……。
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団大尉
・中原光子少尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務少佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子 舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵 時子の祖父
・メグリ先生(?) 晋三が小一の時の担任
・米国特務旅団 どろしい ヘンリー准将 ボギー大佐
☆彡 重要語句
・インテグレーション(integration) ウズメ02を複数パイロットの能力を統合して操縦すること
・セパレートアタック 複数パイロットが個別にコントロールして攻撃すること
・ケティちゃん ケティちゃんを依り代とする小思念体
・PONSY ポーツマスネイバルシップヤード(アメリカの特務旅団)




