062『ケティと掛け軸』
まりあ戦記・062
『ケティと掛け軸』 晋三
『あれ、晋三がやったんだよ』
頭の上でケティが言う。
『え、オレが?』
『ゆったでしょ、インテグレーションモードの時は晋三のサポートが必要なんだって』
『自覚ないんだけど』
『そうゆうものなのよ。セパレートモードでもけっこうな力を発揮するけど、ここ一番のインテグレーションモードに晋三は不可欠なんだから自覚してよね』
『あ、ああ』
なんか、頭の上から言われる感じ。じっさい引き出しの中、ケティのやつはオレの上に居るしな。
『インテグレーションモードを「みこころ」って名付けたのは、さすがよね。ケティ、いっしゅんドキッとした!』
『ああ、宗教的過ぎて、親父は却下するかと思ったけどな』
『お父さんも感じてるのよ』
『なにを?』
分かっているけど、トボケてみる。
『そうゆーとこよ』
『ん?』
『なんで、お祖父ちゃん、晋三からしたらひい祖父ちゃんの時蔵が生きてんのか。もうとっくに百歳超えてるよ』
『あ、ああ……』
ひい祖父ちゃんはお袋のお祖父ちゃんだから、うち(舵家)の過去帳には載っていない。だから、下の引き出しのタブレットで検索したんだ。
大正生まれのひい祖父ちゃんは海軍の技術将校で、兵科は違うけど、戦後総理大臣になった主計中佐とか、大手電機会社を創設したM氏とも繋がりがあった。
『そんで、三回忌も終わったっていうのに、妹のことを心配してる晋三。体は無いけど存在してるし』
『あ、ああ……』『ちょ、動かないでよ』
バツが悪くて体をよじったら、ケティが文句を言う。阿弥陀さんの掛け軸が変な向きになってしまったんだ。
『あ……ちょうどいい、掛け軸の紐緩んだから、ちょっと覗いてみよう!』
『ええ、いいのかよ!?』
『ドンマイドンマイ(^^;)』
シュィ~~~~~~~ン
音がしたわけじゃないんだけど、アニメにしたらこんな感じだろうというエフェクトがあって、オレは掛け軸の隙間に吸い込まれていった。
前にも言ったけど、浄土真宗の阿弥陀さんというのは八方に光を放っている。釈迦堂さんは「浄土宗は上下に一筋なんですけど、真宗は八方、つまりあまねく照らすということで差別化を図ってるんです」と言っていた。
ちょっと眩しいけど、長年仏壇の上の方からオレを見下ろしていたご本尊、その実態にお目にかかれるのかと思ったら、ちょっとワクワクした。
眩しくて目を細めると、かろうじて阿弥陀さんの輪郭が見える程度。せめてお顔だけでもと目を細めるけど全然分からない(^^;)。
シュ!
これも音がしたわけじゃないんだけど、そんなエフェクト。
そして静寂。
数秒で落ち着くと、一面のお花畑、そよ風に載って香しい花の香……振り返ると清らかな川が流れていて……見覚えがある。
これは……死んだ直後に立っていた場所だ……。
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵 晋太郎 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団大尉
・中原光子少尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務少佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・ナユタ ソメティのパイロット 第二首都高一年
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・岡田 時子 舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体
・岡田 時蔵 時子の祖父
☆彡 重要語句
・インテグレーション(integration) ウズメ02を複数パイロットの能力を統合して操縦すること
・セパレートアタック 複数パイロットが個別にコントロールして攻撃すること
・ケティちゃん ケティちゃんを依り代とする小思念体




