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058『親父の秘密 岡田時蔵はお袋のお祖父ちゃん』

まりあ戦記・058


『親父の秘密 岡田時蔵はお袋のお祖父ちゃん』 晋三 





 親父は、このまえ息抜きに来ていた駅前のガードをくぐって駅裏に行こうとしていた。


 私服にサングラスで、一見ベースの司令には見えないけど、知ってる者が見れば一発で分かる。


 横町に入ると、あの時の袋小路。


 どん詰まりの塀まで来ると、一度だけ後ろを確認して、置いてあるトランポリンでジャンプして塀の向こう側へ跳んだ。


 初めてなら戸惑ったけど、塀の向こうで女の子のアバターに入れ替わってやがる。たしか時子って、俺にとっては衝撃的な名前だ。


 前回は、時子に入れ替わるまで二体のアバターを経由していやがった。いきなり時子になるとは、ちょっと焦ってる?


 義体換装……趣味じゃないことは分かっている、予期せぬ追跡を防ぐためだろう。


 現に俺が後をつけている。


 このまえ、もう少し付けてもよかったんだけど、目的は脱走したまりあの追跡だったし、そこから先は止めた。


 この前の公園まで来ると、ちょっと周囲に気を配る親父。こないだはまりあに木の上にさらわれたしな。


 ん? 


 立ち止まった。スマホを取り出して……あ、電話がかかってきたんだ。


「……承知した、よろしく頼む。オクレ」


 え、これって、湘南でウズメ02の回収の指示をした時(057『ウズメ02を救援せよ』)の会話?


 ちょっと混乱した。


 俺は、あの時湘南に居たぞ。ホトケさんだから意識というか思念だけだけどな。


 瞬間、その意識を飛ばしてみると、江の島が見える砂浜でコネクトスーツの中原さん。オスプレイで運ばれていくウズメ02を見送りながら電話している。


 これって、二か所同時に意識を飛ばしてねえか?  



 公園を抜けて、二回角を曲がったのは戦前の雰囲気を残す病院だった。


 職員用の出入り口から入った親父は、エレベーターで表示のないボタンを押して最上階に向かった。



「え、今日も来てくれたのか?」



 病室の患者は驚いた。でも、微妙に声が弾んでやがる。


「ちょっと時間ができたし……お祖父ちゃんも喜んでくれるし」


「おお、そーかそーか(^▽^)」


 ええ( ゜Д゜)!?


 二人の声が聞こえて、俺はショックだった。


 あちこちチューブに繋がれた爺さんは、俺が生まれたころに亡くなったはずのひい祖父さんだ!


 それに時子ってアバターは、見かけと名前だけじゃなくて、声も喋り方も舵時子。


 つまり、俺とまりあのお袋だ!


 いや、この時子は、お袋がまだ高校に入るか入らないかのころの姿だ。


 ……ちょっと裏がありそうだ。


「ウズメ02にして、能力は上がったんだけど、コントロールが不安定なの」


「負けたのか?」


「ううん、試験運転だから非武装。ヨミが現れる兆候も無かったし、油断と言えば油断なんだけどね。あ、いちおうは勝ったよ。お祖父ちゃんが言う体術って言うのかなあ、ハイキックの一撃で。でも、そのあと制御不能になって、湘南の砂浜に墜落したよ」


「そうか……」


「このまま進めてもいいのかなあ……」


「ああ、間違ってはいないと思うよ。パイロット三人のソウルを統合すれば三乗倍……は理論値だけど、数倍の力は出るはずだ。データを見せてくれるかい?」


「うん」


 目の前に仮想インタフェイスを出してやると、アイコントロールでスクロールするひい祖父ちゃん。


「数値が飛び過ぎている。ミッションがいかれかけてるレースカーみたいだ……」


「ああ、ハイキックの時なんか、ギヤ入りっぱなしって感じだった……」


「そうか……」


「訓練するしかない?」


「ああ、インテグレーション状態でも細かな切り替えができるようになあ」


「それで、ヨミの即応性に追随できるかなあ……」


「大丈夫さ」


「状況に応じてはセパレート(separate)アタックも有効だと思うんだけど」


「インテグレーションとの切り替えとコントロールがむつかしい。うまくいけば有効だろうけどな」


「う、うん、そうだよね」


 ちょっと失望したような親父、見かけが少女時代のお袋なんで、なんか可哀そうな気になる。


「大丈夫、お祖父ちゃんの血が流れてるんだ、きっとうまくいくさ」


「……うん、そうだよね(;^ω^)」


 言いにくそうに返事する親父。そりゃそうだろ、お袋のお祖父ちゃんで、親父とは血のつながりはないもんな。


「それとさぁ、ウズメ固有の、パルスウェポンとかは、やっぱ封印のまま?」


「ううーーん……ウズメの固有兵器は熟練した能力者しか使いこなせないからなあ……一般の汎用兵器の性能も向上させなきゃ、世界でヨミに対抗できるのはウズメだけになってしまう。それに、政府から予算を引き出すためにもなぁ」


「やっぱ、アマテラスと同じ答えなんだねえ……」


「それと……ここと、ここと……あ、ここも……入力値を、こっちと同期させてやると……」


「え、あ……そうか、そんな手があったのか」


 ひい祖父ちゃんは、十か所以上の改善点を指摘して、親父の時子は「うんうん」と熱心にメモしている。


 技術的にはひい祖父ちゃんの指摘もアドバイスも適格なんだ……ろうけど、根本的におかしい!


 お袋はとっくに死んでるし、なんで、こんな若いころの姿で会いに来るんだ?


 それに、ひい祖父ちゃん、いったい何者!?




☆彡 主な登場人物


・舵 晋三      永遠の16歳 法名・釋善実

・舵 まりあ     晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット

・舵 晋太郎     特務旅団司令 晋三とまりあの父

・高安みなみ     特務旅団大尉

・中原光子少尉    みなみ大尉の副官

・金剛武特務少佐   ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官

・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)

・ナユタ       ソメティのパイロット 第二首都高一年

・徳川曹長      みなみの世話係

・まりあの友達    釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん

・学校の先生     瀬戸内美晴(担任)

・岡田 時子     舵司令がたまに入れ替わる母の若いころの義体

・岡田 時蔵     時子の祖父


☆彡 重要語句


・インテグレーション(integration) ウズメ02を複数パイロットの能力を統合して操縦すること

・セパレートアタック        複数パイロットが個別にコントロールして攻撃すること


 

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