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055:再びB区の切り欠き

まりあ戦記・055


『再びB区の切り欠き』 晋三  





 ギィッコン ギィッコン ギィッコン…………ピタ



 ウズメ02は366歩目で停まった。


 親父が停止を命じたんだ。むろんベースのCIC(戦闘指揮所)から。


 CICからウズメ02への連絡は『糸電話以外なんでもある』ということで、どういうわけか、20世紀のガラ携を使っている。ガラ携と言っても、CICからは有線でカルデラのアンテナに送り、そこからはあちこち経由し、最後は人工衛星に飛ばしてウズメ02のまりあ達に届くというややこしさ。


『そこからは、五分おきに交代して歩かせてみろ』


 たぶん、三人の適性と個性というかクセを掴むためだろう。


「順番は?」


『……出席番号順だ』


 適当に言ってるのは『……』と二秒の間があったことでもわかる。それに文句を言うこともなく「じゃ、わたしからか」と、まりあがオペレートする。


 スタスタスタ…………


 普通の歩き方というか……社会の教科書とかに『人類の進化』って、猿人から現生人類までが歩いてる図があるだろ。あの現生人類が歩いてるみたいな普通の歩き方。


『次は、ナユタだな』


 ナユタは金剛の苗字を使っているから舵の次で二番目だ。


 タタタタタタ…………(^^♪


 めちゃ速足、性格がそのまま出ていて、4分50秒でスキップし始めた。


『調子はいいようだな、だがスキップは余計だ』


「ちぇ」


『次、少尉』


「状況開始!」


 軍人らしい返答で歩き出した……意外に内またの乙女歩き。


『分かった、あとは高安大尉に任せる』


 そう言って、親父はモニターの映像とインタフェイスのグラフや数値を見るだけになった。


『じゃ、今度はもう一度三人で歩いてみて』


「「「了解」」」


「イッセーノ―でッ!」


 まりあが音頭をとって歩き出す。


 ギィッコン ギィッコン ギィッコン…………


 やっぱりぎこちない。


『走ってみて、時速20キロで』


 ギッコンギッコンギッコン…………


 言われた通り20キロで走るが、やっぱりぎこちない。


 三人の意識と技量をドッキングというか合成するというのはアイデアなんだけど、どうもうまくいかない。


『ハァーー(*´Д`)』


 親父もモニターの数値やグラフを見てため息をついてやがる。


『よし、そのままB区の切り欠きまでインテグレーション(integration=統合、一つにまとめる)で向かって』


 そうか、この合成はインテグレーションというらしい(;'―')。


「ラジャー(''◇'')ゞ」


 半睡眠状態なので合成音声が返答。


 三人とも任務とはいえ、命令ひとつで覚醒と統合を切り替えられるのはすごいと思う。能力なのかシステムなのか、たぶん両方なんだろうけどな。


 ギッコギッコギッコギッコギッコギッコ…………


 少しましになった感じだけど、あいかわらずのぎこちなさ。走るというよりは速足、へたくそな競歩という感じだ。まあ、図体がウズメの3倍、質量じゃ27倍、身長20メートルで20キロの速度だからこんなものなんだろうけどな。


 ベースに来て初号機に乗った時から付き合っている身からすると、やっぱり歯がゆい。それほどに人の能力をインテグレーションするのは難しいことなんだ。


 第二次大戦中、戦闘機の速度を上げるためにエンジンを二つにしたことがあるけど、速度は10%も上がらず、かえって重くなったことで運動性能が落ちてしまった悪例があるんだとか。ウズメと戦闘機じゃ次元が違うんだろうが、乗り物という点では同じ……思っていてもみなみ大尉は言わないだろうし、仏さんの俺には口が無い。


 せめてもの慰めは、切り欠きの石英と太陽の入射角が絶妙だったのか、前回(まりあが生身でやってきてナユタと出会った)より数段きれいな景色が見られたことだろう。


『ここね、二人が出会ったっていうのは……』


 みなみ大尉も、瞬間、試運転ということを忘れて光と景色に見入ってしまう。


 親父はチラ見もせずに、モニターに集中、モニターには今の状況が数値とグラフで表現されるだけで、よほど脳みそに変換能力がなければ美しさは分からないだろう。


 その親父が最初に気が付いた。


『敵襲! 12時の方角!』


 次にみなみ大尉が命令する!


『緊急退避!』


 試験運転のウズメ02に戦闘能力はない、指揮官として当然な反応だ。


 みなみ大尉は同時にベース中に第一級迎撃態勢を取らせ、親父が目配せで追認。次にベース中にアラームが鳴って、コンソールと自分たちの脳みそを迎撃に切り替えた。


 わずか二秒で、CICは試験運転モードから迎撃戦闘モードに切り替わった!


「ウズメ02! 退避! 退避! ウズメ02!!」


 ウズメ02が退避行動をとらない!


 グギ!


 すごい歯ぎしりをすると、大尉は二つのキーボードを夕立のように叩いて、全迎撃レーザー砲をウズメ02防御最適に切り替える!


 そして……ウズメ02は、それでも動かなかった(;'△')!




 ☆彡 主な登場人物


・舵 晋三      永遠の16歳 法名・釋善実

・舵 まりあ     晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット

・舵司令       特務旅団司令 晋三とまりあの父

・高安みなみ     特務旅団大尉

・中原光子少尉    みなみ大尉の副官

・金剛武特務少佐   ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官

・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)

・ナユタ       ソメティのパイロット 第二首都高一年

・徳川曹長      みなみの世話係

・まりあの友達    釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん

・学校の先生     瀬戸内美晴(担任)

・時子        舵司令がたまに入れ替わる義体


☆彡 重要語句


・インテグレーション(integration) ウズメ02を複数パイロットの能力を統合して操縦すること


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