043:三か所のカメラ 二機のドローン
まりあ戦記・043
『三か所のカメラ 二機のドローン』
イラ立ちの原因は予感だ。
ウズメはパルスという固有兵器を内蔵している。パルスの出力は臨機応変に変えられる。
肌に密着するコネクトスーツはまりあの筋電や脳波をリアルタイムで拾って、ウズメのアクティビティーを制御している。
だからこそ、まりあはウズメを意のままに動かせる。
リアルで喧嘩したとする。相手のパンチを屈んで躱しながら、お返しのフックを炸裂させるのは、ほとんど連続した反射運動だ。躱すとフックを別々にやっていたら、その隙に相手にぶちのめされてしまう。
パルス攻撃も同様で、呼吸するような自然さの中で発揮される。
しかし、まりあは、その自然さを封じられているのだ。
カルデラの周辺に配置された携帯兵器をリリースすることを義務付けられている。いちいち拾って装着し、攻撃姿勢をとらなければ使えないので、タイムロスが大きいだけではなく、戦いのテンポを崩されて、はなはだ精神衛生に良くない。
「今度のヨミは成熟体ではない、二度ほど装備を替えれば仕留められる」
司令は、そう言って出現したばかりのヨミを映すモニターを指さした。
確かに、ヨミの体はあちこちいびつでバランスが取れていない。装甲も均一ではなく、一部はムーブメントが透けて見えるほどに薄い。
――アサルトライフル装着!――
ズドン
指令が届くと同時にカルデラ南端のポッドからライフルが射出された。
ライフルが高度二百メートルに達し、上昇速度を失う寸前にキャッチし、セーフティーを解除すると同時に初弾を装填する。
反動をつけて高度をとろうとすると指令が入る。
――もう一つリリースする、二丁拳銃でやってくれ――
チ!
舌打ちはしたが、分かってる。
地上のポッド周辺に三か所カメラの反応がある。ドローンも二機待機していて映像を撮っている。
ライフルを製造している四菱工業がPR映像を撮っているのだ。
たぶん司令の横にはディレクターが居て「二丁拳銃でいきましょう!」とか言い出したんだろう。
「こんなもの、生成AIにやらせりゃいいのに!」
『足下で大勢の人間がリアルタイムで見ている、フェイクを流すわけにはいかん』
「じゃ、サービスしてあげる!」
セイ!
ウルトラマンのように僅かの屈伸で背筋を伸ばすと、その勢いでウズメは跳躍! 二丁のライフルを放り上げ、新体操のバトントワリングのように旋回! 直後、前転でキャッチして決めポーズ!
周囲のカメラが撮りやすいように、それぞれのカメラに向かって三度決めてやった。
地上でカメラマンが親指を立てるのが分かった。
まりあも親指を立てて応えたが、立てた親指でカメラマンをダニのように潰してやりたい衝動に駆られるまりあであった!
☆彡 主な登場人物
・舵 晋三 永遠の16歳 法名・釋善実
・舵 まりあ 晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット
・舵司令 特務旅団司令 晋三とまりあの父
・高安みなみ 特務旅団大尉
・中原光子少尉 みなみ大尉の副官
・金剛武特務少佐 ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官
・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)
・徳川曹長 みなみの世話係
・まりあの友達 釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん
・学校の先生 瀬戸内美晴(担任)
・時子 舵司令がたまに入れ替わる義体




