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042:大尉とまりあのイラ立ち 


まりあ戦記・042


『大尉とまりあのイラ立ち』    





 疑似ペーパーチケットは、ゲート横のマシンにスマホをかざすと記録され、列で待っている家族や恋人の所に戻ってゲートを潜ると、自動改札に似たディスペンサーから疑似チケットが吐き出される。


 これだと、ほんの数分列に並んで入場を待つという体験ができる。


 たいていの客は、それで入場する。


 金剛少佐は完全アナログで、チケットを買うところから並んで、アナログチケット専用のゲートを使う。


 おかげで待ち時間は十五分ほどと、疑似ペーパーチケット組の五倍ほどの時間がかかる。


『だって、おかしいだろ。入場してからチケットを受け取るなんてさ。親とか恋人が列に並んで買ってきたチケットを手に取って『ああ、これから入場するんだ!』というワクワクを感じて入るのが仕来たりだ。な、これから楽しむんだって気になってきたろ?』


 少佐の言うことは分かったが、I lobe You! のネオンサインが背中で点滅するスタジャンを着せられているみなみ大尉は面白くなかった……。



 ウズメの発進を一時間後に控え、数日前のサンオリデートのことを思い出しては腹立たしいみなみ大尉。デートの最後は『海が見える丘公園』のメモリアル塔だった。塔と言っても高さは10メートルほどで螺旋の階段が付いた簡素な鉄塔。

 鉄塔には螺旋に沿って五線譜のような鉄棒が三段に巡らされている。鉄棒には何百個も南京錠がかけられている。愛を誓った恋人たちが記念に掛けていく令和のころからの伝説の鉄塔だ。そこに少佐は鍵をかけた。


 カチャン


『ちょ、なにするんですか!?』


『よく見てみろよ』


『『TAKESHI ♡ MINAMI』って、ありえないんですけど!』


『だから、よく見ろって』


 言われて手に取ると、鍵の底に1000の数字がある。


『印字してあるように見えるけど、カウンターだ』


『カウンター?』


『ああ、0になるまでに鍵を入れて回さなければ、自動的に外れる仕かけになってる』


『え?』


『キャンセルしたければ何もしなくていい。もし、ほんとうに嫁さんになってもいいと思ったら、ここにきて鍵を回してくれ……』


『え、あ、ちょ……』


 大尉は言葉が継げずに、そのまま二人でベースに戻った。


 

――システムオールグリーン、インターフェースクリアー、リリースインジェクション完了――


 ヨミの変異体が数週間ぶりに出現。バージョンアップしたCICからのオペレーションは快適でさえあったが、先日サンオリで並んだ時のようなイライラがある。


 コントロールチーフの自分がこんなことではいけないと思う大尉であったが――おや?――と思った。


 まりあのコクピットコンソールも、まりあのイラ立ちを示すゲージが上がっているではないか。


 あのあと、金剛少佐は約束通りまりあを担当してくれて、脱走も問題行動も無かった。さすがは少佐と思った大尉だったのだが……。




☆彡 主な登場人物


・舵 晋三      永遠の16歳 法名・釋善実

・舵 まりあ     晋三の妹 高校2年 ウズメのパイロット

・舵司令       特務旅団司令 晋三とまりあの父

・高安みなみ     特務旅団大尉

・中原光子少尉    みなみ大尉の副官

・金剛武特務少佐   ベースのコンピューターの保守を任務とする技術士官

・テレジア(元マリア)ガイノイド戦士(031から)まりあのガード(VR10201改)

・徳川曹長      みなみの世話係

・まりあの友達    釈迦堂観音(お堂さん) 矢治公男と喜田伸晃 鈴木さん 佐藤さん

・学校の先生     瀬戸内美晴(担任)

・時子        舵司令がたまに入れ替わる義体

 

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