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7.魔獣と書いて食材と読む

遅くなりました




「アルくんアルくん、目の前に見える変な猪は私の見間違いかね」

「残念だが、正真正銘魔獣だ。そして喜べ、食料だ」

「嘘でしょ…」



 私たち一行は絶賛山越え中だ。

 初めは普通に山だなぁと思っていたのだが、決定的に違うことがあった。

 そう、魔獣である。生きてる生き物が基本魔獣ってなに??死ぬの?私たちここで死ぬの??

 いや、まぁ死なないだろうけど。試しに前の世界にいた猪を狩る感覚でやってみたら普通にいけたし。火を吹く猪と思えばいいのだろうか。そして私はそれを食べることになるのか。マジか。




「ごめんねぇ、ジス…解体手伝ってもらっちゃって」

「大丈夫だよ、イズミねーちゃん!俺、こういうのはやってたから!慣れてる!」

「おい、イズミ。そこは食えないからそこに置いとけ」

「うーっす…」


 三人中二人が男であるこの状況で料理に関して一番足を引っ張ってるのが私とは一体全体なんなんでしょうね!!

 初めて見る食材(魔獣)ですもの、仕方ないよね!ね!!?

 …いや、そういや私前も普通に調理場に近寄らせてもらえなかったな…?

 衝撃の新事実、まさかの料理下手発覚…!?嘘でしょ、少しは出来たはずだよ!?食べれる物は作れるもの!美味しいかどうかは別として!!え、そこ重要?マジ?


「今は山のどの辺りなんだっけ?」

「まだ山の中腹にすら到達していないな」

「まだまだかー」


 魔獣のお肉から鍋に変化したものを頬張りつつ進行度を聞く。山越えはやはり時間がかかる。

 魔法とかで何とかならんのかなぁとは思ったものの、アルくん曰く山を越える程度の移動魔法とやらを使うとその分の魔力に惹かれた魔物がわんさかと寄ってくるのだそう。

 理由は簡単だ。聖霊は澄んだ魔力であればあるほど好意的で、近寄ってくるのだ。

 即ち、聖霊の成れの果てである魔物も例外ではない。ちなみにうちのアルくん、超がつくほど澄んだ魔力の持ち主です。凄いね!




 ご飯を食べ終わった私たちは、陽が落ちて来た事もあり今夜の寝床を確保している。具体的に言うと、アルくんが見つけたぱっと見人がいても気づかず気配を殺しやすいしかしこちらからは見張り易い、背後は岩壁!なプチ洞窟もどきにアルくんが更に阻害魔法?なるものを掛けているのを見守っています。動いているのはアルくんだけだね!え、ジスは残った魔獣肉を保存食に加工中?ぼーっとしてるの私だけやないかい。なんてこった。

 あ、ちなみに魔獣のお肉は大変美味でした。なんだろう、クセはあるけど慣れれば平気、みたいな。ジスとアルくんの料理が上手いというのもあると思う。


「今日はもう休んだ方がいいな。俺が見張っているからお前たちは寝ていろ」

「いやいや。アルくん、ジスはともかく…そこはせめて交代制にしようぞ?」

「お前も寝ろ、アホか」

「私元武官だって言ってるじゃない。それくらいは慣れっこよ?魔獣が相手なら即アルくん叩き起こすし。だめ?」


 割と真面目に叩き起こすつもりだと理解してくれたのか渋々と言う形で頷いてくれたアルくん。物理で夢の世界へご案内☆をしようとしてたのがバレたのだろうか。大丈夫だって急所は外しとくから!あ、ダメ?普通に寝るから早まるな?了解です…


 まずは私が見張り役になり、深夜はアルくんが担当に。そんでもって明け方に出発するそう。ジスは色々あったせいか疲れ果ててすぐに寝入ってしまった。まぁ、仕方のないことだろう。いくら自分が関わっていることだとは言え、見知らぬ人間の二人と共にいつ終えるかわからない旅に出ているのだから。

 正確には、目的地の決まっている旅ではあるけれど。

 その点は、私とは違う。

 私は、もう家族に会えないかもしれないし会えるかもしれない、なんていう酷く曖昧な旅だ。この世界に転移して来てしまったのは私だけではない、そんな希望が私の胸の中にある。可能性は低いだろう。でも、この僅かな希望を抱いていないと、私は、きっと。


「イズミ」

「……大丈夫だよ、アルくん」


 潰れてしまうだろうから。





 おはようございます、朝です。そして朝から私たちはピンチです。何でって?


「朝から魔獣狩りとか聞いてないぃぃい!!!」

「魔獣と思うな!奴らは食料!!言わば俺たちが今していることは!!」

「食材狩りですねアイアイサーー!!」

「い、イズミねーちゃん!そいつは食べれないやつ!」

「何だと!?」


 何と朝から大量の魔獣に襲われているのである。猪っぽい何かや豚っぽい何か、果てに熊と鹿のハイブリッドみたいな奴もいた。ちなみにコイツらの中で食べられるのは猪っぽいのと熊と鹿のハイブリッドの熊の所だけである。豚っぽいの、豚なんだから食べられると思うじゃない?無理なんだってよアイツら。解せぬ。


 食べられる奴らはあまり傷つけないよう絶命させ、食べられない奴らはギッタンギッタンのめっためたにするのだ。けして八つ当たりなどではない。溜まりに溜まった鬱憤を晴らす為などではない。ないったらない。


「ここからは基本全力で下るとこになるが、一つ寄るところがある」

「ほう、そこは一体どちらかな?」

「山の頂を過ぎて少ししたら小屋がある。そこに知人がいるからソイツに有り余るほどある、腐りやすい肉を置いていく」

「まさかの」


 なんてとこに住んでんだよ知人さん。

 そして唐突な補給物資と言う名の残飯処理。とりあえず両手を合わせておこう。


「あ、アイツはレアだ。群のボスだな、美味いぞ」

「合点承知」


 魔獣(しょくざい)たちを斬り伏せながらアルくんが指したのは、ほかの魔獣よりも小さいサイズの猪だった。小さいというか、私のよく知る猪サイズというか。ただちょっと…色が、ね?…….青とか食欲なくなる色してやがるぜ……

 まぁ、でも美味しいと聞いたら食べたくなるよね。食に関しては貪欲に行きますよ。

 後ほどジスに「……魔獣を食材って言って狩りをする人、あんまり見たことない」と引かれてしまうが、仕方がないんだ…仕方がないんだよ…!!だって!ご飯は!大事!!






「食い意地張りすぎだろ」

「うっさいわ」





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