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Norse Cosmology   作者: 宵闇蛍
第一章 -幼少期編-
9/28

魔法-5

 着火イグニッションの練習を始めて4ヶ月が経った。

 ただ愚直に続けた。

 ただ愚直に続けていたら火属性魔法がチート威力になった。





 その兆候が表れはじめたのは1ヶ月を過ぎた頃。

 着火イグニッションの熟練度が10.00を超えたあたり。

 特に意識する必要無しに、指パッチンさえすれば思い通りの大きさで火を出すことができるようになった。

 

 魔法の練習をしていてもおじいちゃんは何も言ってこなくなっていたので、気づけば魔法の練習は自室で行い、おじいちゃんの部屋では本を読むだけになった。


 大きさはもう飽きてしまっていたので、次は温度に注目してみていた。

 温度といっても自分は感じないので色で判断するしかない。

 今の火は暗いオレンジ色である。

 大体600℃くらいだろうか。

 確か火は温度を上げると色が薄くなっていき、白を過ぎると寒色を帯びる。


 早速温度を高めるイメージをしてみる。

 何日が繰り返すうちに少しずつ黄色味が強くなっていった。

 色が薄くなっているので温度は上がっているはずだ。

 やはり温度も調節できるのか。


 ただ高温にするには大量のMPが必要らしかった。

 毎日熟練度は上がっているのに、目に見えて火が黄色くなる頃には通常の20倍も消費していた。

 温度が分かれば消費MPとの関連性も考察できるのに、もどかしい。

 しばらくはこの温度で続けてみることにした。



 2ヶ月が経過する頃には、黄色の火も通常の10倍のMP消費で出来るようになっていた。

 MP量も結構多くなっていたので、温度をさらに上げて白い炎を出す練習をした。


 3ヶ月が過ぎた。

 この頃になると家からこっそり抜けだして、家から少し離れた場所で練習をするようになった。

 よく考えると家の中で火、それも高温のものを扱うのが怖くなったのだ。

 既に火の色は青白くまでなっていた。

 青白い火はMP消費が特に激しかった。

 MPを消化するのも大変なので練習にはうってつけだった。

 

 

 そして昨日、事は起こった。

 いつものように外で練習していると、後ろの茂みからガサガサと音がした。

 家族に見つかったのではと思い、僕は咄嗟に言い訳を考えていた。

 しかし、茂みから姿を現したのは見知った顔では無かった。

 

 熊だった。

 瘴気を纏った熊がそこにいた。

 それも体長は3mをゆうに越えているであろう熊だ。

 間違えようもなくそれは魔族であった。

 

 やばいやばい!

 僕はパニックになった。

 まだ着火イグニッションしか使えないんだぞ。

 かと言って助けを呼振ような余裕はない。

 どうする。どうする。どうする。

 

 熊はその目でしっかりと僕を捉え、完全に狩りモードに入っていた。

 じっくりと考えている余裕はなかった。

 

 「着火イグニッションっ!」


 僕は今持てる最高温度の大きな炎を灯した。

 『獣は火に弱い』

 そうあってくれることを信じて。

 

 しかしというか案の定というか、熊が怯むことはなかった。

 それもそのはず。

 おじいちゃんの本によると獣型の魔物でもある程度の知性を持っている。

 3mを超えるであろう熊が赤子の出した炎にビビるはずがないのだ。

 

 八方塞がりになった僕は、一か八か付け焼き刃の他の魔法にかけてみることにした。

 どうせこのままでは死ぬ。

 せっかく転生してきたのだ。

 ならば最期まで足掻いてやろうじゃないか。


 熊はとうとう叫びを上げて僕に襲いかかってきた。

 

 僕は頭をフル回転させた。

 威力の高そうな火……。

 おじいちゃんの使ってた火の玉は?

 だめだ。メカニズムが分からないから使える気がしない。

 前世の物のほうがいいかもしれない。

 ──よし、火炎放射器だ。


 イメージするは火炎放射器。

 青白い炎をギリギリまで貯めこんで一気に前方に放出。

 幸運にも練習は始めたばかりでMPはほぼ満タンに近い。

 体中の魔力を右手に集める。

 着火イグニッションで出した炎を圧縮する感じ。

 溜めろ溜めろ溜めろ溜めろ溜めろ!

 敵がすぐ近くに来るまで出来るだけ溜めろ!

 ギリギリまで引きつけて近距離でお見舞いしてやれ!

 ──今だっ!


 「火属性魔法ブレイズマジック 青白炎撃アッシェンフレアぁぁっ!」


 僕は無我夢中で目の前まで迫っていた熊に炎を浴びせた。

 僕は思わず目を閉じた。

 

 (やったの、か?)

 

 あたりは異様なほどの静寂につつまれている。

 荒いだ僕の呼吸だけが森に響く。

 

 僕は恐る恐る目を開けた。

 すると予想だにしなかった光景が広がっていた。

 目の前が開けていた。

 さっきまで木々が生い茂っていた場所が。

 前方50mくらいが更地になっていたのだ。

 

 (これは、僕がやったのか…?)


 辺りを見回す。

 僕以外は誰もいなかった。

 

 (なんて威力なんだ。これが…魔法……)


 僕は目の前に落ちている紫色の魔結晶を、ただ呆然と眺めていた。




 しばらくするとおばあちゃんが走ってきた。


 「ハルkっ……」


 おばあちゃんは絶句した。

 あり得ない光景に。

 あるはずのものがない光景に。

 

 「ハルキ。…これは…お前が……やったのかい?」


 上手く回らない口を懸命に動かしている。

 半ば放心状態の僕は小さくうなずいた。



 「っ!爺さん!爺さーん!」


 今にも泣きそうな声で、顔で、おばあちゃんは僕を放っておじいちゃんを呼びにいった。

 このとき、改めて僕はとんでもない力を行使したんだと実感した。


 人が慌てふためいているのを見ると不思議と気分は落ち着くものである。

 我に戻った僕は自身の無事を確認してから、自分のステータスを確認した。


 ハルキ Lv.27 人族 村人

 

  HP:153/153

  MP:891/891

  ATK:8.15

  MATK:121.73

  SPD:3.12


   STR(1) INT(1) DEX(1) AGI(1) MND(1) VIT(1)

 残P:52

  基礎ステータスポイントが割り振れます。


  慧眼:1.00

  火属性魔法

   着火イグニッション:53.78

   青白炎撃アッシェンフレア:1.34

  神祖魔法オリジンマジック

   物質生成ジェネレート:0.01


 残SP:26

  新たなスキルが獲得できます。



 スゴイアガッテル。

 なにこれ、一体倒しただけでレベルが27って……

 MATKもHPも急上昇している。

 そしてステータスポイントとスキルポイントもだ。


 思わずテンションが上がってしまう。

 だがこの状況でこのテンションはまずいだろう。

 もうすぐおばあちゃんがおじいちゃんを連れてくる。

 溢れる好奇心と感情の昂ぶりをおさえ、僕は渋々ステータスを閉じた。

ステータスを一部変更(11/15)

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