第1話 生まれ変わったら名門大名?いえ、火中の栗です
【はじめに】
この物語は、名門・藤堂家に転生した一人の男が、歴史の奔流に揉まれながらも「皆福」を目指して奮闘する、フィクションの物語です。史実をベースにしていますが、主人公のあまりの苦労や大胆な行動は、すべて筆者の妄想によるものです。どうか温かい目でお読みください。
俺の名前は◯◯
しがない40歳中盤のサラリーマンだ。
不定休の仕事に追われ、家族は妻と子供が二人。普段は日々の業務に忙殺されているが、今日は妻に無理を言って時間を確保した。
歴史好きの俺は念願だった趣味の城巡りに
出かけるためだ。
新幹線で博多まで、そこからは特急「かもめ」に揺られ、さらに開業したての西九州新幹線に乗り諫早で降りる。
今は島原鉄道の車内に揺られている。
そう、俺が目指しているのは島原城だ。
徳川幕府の時代、あの「アホな松倉重政」が凄惨な悪政を敷いたことでも知られる、あの場所だ。
早朝からの移動で溜まっていた疲れが、心地よい振動とともに全身を包み込む。俺は、車窓から眩しくきらめく有明海を眺めながら、意識をまどろみの中へと預けた。
……このとき、この眠りが俺の人生の「境界線」になるとは、夢にも思っていなかった。
どれくらい寝ただろう…
体が熱い……。頭がぼーっとする。
朝が早かったから、寝不足か?
全身が汗でじっとりと張り付いている。
何かがおかしい。
先ほどまで、島原鉄道の座席に座って揺られていた
はずなのに、今はなぜか横になっている。
しかも、座席よりもずっと柔らかな感触だ。
遠くで、誰かの声が聞こえる。
「……これ以上、殿が目覚めなければ、大殿に知らせるべきだ……」
はい? 意味がわかりませんが……
俺はたまらなくなって、ガバっと身を起こした。
すると、隣にいた女性が息を呑んで
驚きの表情を浮かべる。
「高吉様!! お目覚めですか!?」
視界に入った光景に、思考が停止した。
周囲を見回しても、どう見てもおかしい。
鉄道の車両ではない。簡素ながらも格式を感じさせる調度品に囲まれた、古い和室だ。
「……はい、俺の名前は、タカヨシですが」
言葉を発した瞬間、自分の声の違和感に気づく。
いつもの自分よりも、どこか響きが違う。
そして、目の前の女性だ。
時代劇のような装束に身を包んだその女性を、
俺は知らない。
「誰ですか……この人?」
俺の問いかけに、女性はきょとんとした表情で、今度は涙を浮かべて「なんと……」とつぶやいた。




