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0章 第2話

 縄につながれ、馬車に揺られること数時間。

 俺が連れられてきたのは、高くそびえたつ古城だった。


 かなり年季が入っているとはいえ、内装は意外にしっかり手入れされているようだ。

 カーペットの赤やシャンデリアの白が眩しくて、少し目が眩む。

 ――こんな城、この国にあったのか?


 大広間に引きずり込まれると、さっきの独裁者が足を組んでこちらを見ているのが目に入る。

 「――ツミ!……俺は、お前を倒す」

 「元気そうで何より。『愚者』」

挿絵(By みてみん)


 意味不明な単語と共に席を立った彼は、身動きが取れない俺の周囲をゆっくりと一周する。

 「ようこそ、ロタート監獄へ。死刑の日までごゆっくり」


 「……は?」

 想像もしていなかった言葉に、一瞬耳を疑う。

 吐き出された言葉の響きは、俺の口から零れ出たものとは思えないほど弱々しかった。

 「死刑……?」

 

 「この国は僕の政治で成り立っている。時には見せしめも必要、そうだろう?」

 「―どうしてあそこで殺さなかった!理屈が通らない」

 俺の怒鳴り声にわざとらしく顔を顰めた彼は、面倒くさそうな声色で言葉を吐く。


 「趣味だよ。お前らみたいな善人ぶったやつが気に食わない、それだけ」

 「――法を知らないのか?」

 「僕が変えた。お前は何も知らないんだな」


 ……こいつは。

 性根が腐ったその男に、俺は言葉をぶつけることができなかった。

 

 「さあいっておいで、『愚者』――」

 奴が背中を向けたその瞬間を狙い、看守の一人を蹴り飛ばす。

 手首に魔力を込めると、案外縄は簡単に外れた。


 ――男たちを相手取っている暇はない。

 そう判断した俺は、彼らを躱して一目散にツミの元へと走った。


 「ふざけるな――!」

 右こぶしで殴りかかろうと振りかぶった、その一瞬。


 あまりの衝撃に、俺は言葉通り何もできなかった。

 ――体が、動かない。

 

 「……っ」

 ツミの指先から放たれる圧倒的な魔力は、そのまま圧力となって俺にのしかかる。

 立っているだけでも空気を吸いにくく、俺は人差し指の先を動かすくらいしかできなかった。


 「あーあ、残念。お前ならもうちょっと楽しませてくれるって期待したのに、十一番より弱いのか」

 完全に動きを封じられた俺は、その魔力の中で荒い呼吸をしていた。

 「――なんの……ことだ」

 「ペンタクルの方もそろそろだね。感謝するよ、実験体」


 意味不明な言葉とともに彼が指を鳴らしたその瞬間――魔力の圧が消え、それとともに床へと叩きつけられる。

 「――っは……」

 どうにか膝立ちになり息を整えているうちに、彩度の低い視界のなか、ツミは一歩ずつ向こうへと進んでいく。


 「……ツミ!」

 「どうしたの?愚者。いっそ殺した方が嬉しかった?」

 ――こいつ、と息を吐く。

 「――痛い目を見るぞ」


 俺の言葉には足を止めず、彼はまた歩き出した。

 「零番の処理はよろしく――『世界』。監督は『正義』ね」


 その言葉を聞いてすぐ、「お任せください」という声がどこかから聞こえる。

 刹那目の前が暗転し、俺の意識は闇へと沈んでいった。


  *


 「……あ」

 鈍い痛みが走るなか、ゆっくりと体を右に回す。


 目に飛び込んできたのは、ここがどこだか分からなくなるようなシーツの白だった。

 「――なんだ、ここ」

 目をこすりながらつぶやくと、徐々に記憶がよみがえってくる。


 ――監獄?ここが?


 家具や照明は確かに最低限、それに古風。

 でもそれがあまり気にならないくらいには、全てが綺麗に整えられていた。


 ……普通、壁とかってあるものなのか?

 牢屋とは思えない分厚い壁に、美しい装飾。

 俺が黙ってそれを凝視していると、不意に扉がノックされた。


 「起きてる?愚者。入ってもいいかな?」

 「――誰だ」


 敵意のなさそうな、どことなくあどけない声。

 扉を開けた少年は、俺の顔を見て微笑んだ。


 「はじめまして、愚者。――僕のことは「正義」って呼んでね」

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