可愛いあの子
何となく頭に浮かんできたお話を文章にしてみたくて、初めて小説を書いてみました。拙い文章だと思いますが
連載にしたいと思っています。
私が田村優花と初めて話したのは、高校2年生の9月頃だった。夏休みで狂った生活リズムを直せずにいた私は、その日、寝坊をして学校に遅刻していった。
学校に着いた頃、私のクラスは体育の授業で、教室には鍵がかかっており、体操着は教室の中に置いたままだった。少し考えてから私は、そのまま廊下の地べたに座り込み体育の授業が終わるのを、窓の外を眺めながら待つことにした。
授業中の廊下は、近くの教室の先生の声が少し響いてくるだけで、静かだった。見える範囲では廊下には私以外に誰も居なく、なんだか不思議な優越感を感じた。私は時折学校生活の中で起こる、こういう時間が好きだった。
授業が終わるまでは後30分ほどあったので、その気になれば教室の鍵を取りに行って、急いで着替えて体育館に向かえば、遅れてではあるが授業に参加できるだろうが、私はそうしなかった。教室側の壁に寄りかかって窓の外を特に何も考えずに眺めていると、誰かが階段をかけ上がってくる音がした。その足音はそのまま私の方に向かって来たので、音の方に顔を向けると、そこにはクラスメイトの田村優花がいた。
彼女は、少し目を見開いてから、
「あっ森田ちゃん」と間の抜けた声で言った。
私は少し動揺し、「あっ」とだけ声を漏らし、小さく手を振った。
田村優花は私にとって、別の世界に住む人間だった。彼女は所謂、クラスのカーストトップの女子グループに所属していた。彼女のそばにはいつもキラキラした女の子達がいて、そして彼女も例に漏れずそうだった。いや、彼女はその中でも一際、目を引く容姿で、綺麗な二重まぶたに白い肌、艶やかで肩までの長さの黒い髪、つんとした綺麗な形の鼻。人形のようにとても可愛らしい女の子だった。少なくとも私の目にはそう見えた。人見知りなのもあって友達が少なく、昼休みには図書館で本を読んだり、イヤフォンを付けて過ごすような私とは真逆の立場で、クラスメイトだと言うのに、一学期中に一度も話をすることがなかった。
そのため、彼女が私の名前を覚えていた事にまず驚いた。クラスメイトなので驚くことでもないのかもしれないが、私にとってはそれくらいに遠い存在だった。
彼女は驚いた表情をすぐに変えて、愛想の良い笑顔を浮かべた。
「どうしたの?もしかして森田ちゃんも遅刻?」
「あっ、そうなんだよね。あの、、教室も鍵閉まっちゃってて。」と私もぎこちない笑顔を浮かべながら、体操着が教室の中にあるので体育の授業に出れないと言い訳するように説明した。
彼女は、私の目を覗き込むようにみてから、左手を私の方に突き出した。
「鍵もってきたよ」と誇らしげな声で言った。
「私も森田ちゃんと全く同じ状況だったからさ、急いで鍵持ってきたの」と彼女は綺麗な二重の目で、嬉しそうに私をまっすぐに見て言った。私は思わず少し目を逸らしてから、鍵を取りに行くつもりなんて無かったのにお礼をした。
それから私たちは教室に入って体操着を取り出し、トイレで更衣をしてから、体育館に向かった。その間、私たちは、なんで遅刻しちゃったの?とか、もう9月なのにまだまだ暑いねとか、そんな当たり障りのない会話をした。田村優花と私が一緒に体育館に入ってくる光景はクラスメイト達にはかなり不思議に見えたことだろうし、彼女を隣にしてクラスメイトたちから注目されるのは、ばつが悪い気がした。
その後、人と話すことが苦手な自分が、緊張しながらではあったが、あの田村優花と体育館までの少しの道中ではあったが、普通に会話できていた事に気がついた。
それをきっかけに時々、彼女は私に話しかけてくるようになった。




