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From: ゴミから始まる異世界生活 〜拾い集めて世界最強〜  作者: 水無月いい人
第三章 覚醒 『青年編』

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第21話:ゴミ収集者

お読みいただきありがとうございます!


本編の前に少しだけ。

更新の励みになりますので、ブクマや★★★★★をいただけると嬉しいです。


それでは、本編をお楽しみください。

 そこから先は、覚悟を決めた。


 アレシアには、忘れられていた。

 だが──それでもいい。

 彼女が、どこかで生きていてくれるのならば。


 だから、これからはこの世界と魔族について知り、それらを掃除する。

 この世界を、少しでもクリーンにすること。それが、今の俺にできる唯一のことだった。


 ──俺は、何も知らない。

 知らなさすぎる。

 だからまずは知る。知識と、そして強さを手に入れる。


 そして──

 あの漆黒の喋る魔族を殺す。

 今の俺では、到底勝てない。だが、必ず。


廃棄収納(トラッシュボックス)……はぁ。やっぱり反応ねぇか」


【ん? どうした?】


 俺のスキル、かつての『廃棄収納(トラッシュボックス)』は、すでに姿を変えていた。

 今のそれは、スフィアと統合された形──『廃棄知識体(ソフィア)』。


 つまり俺は、以前のように、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 強くなったのか、弱くなったのか……正直、判断がつかないな。


「体は、確かにイデアを引き継いだ。筋力も反応も段違いだ。だが……スキルが死んだ。俺の、すべてだったのに……」


【あん? んなもん俺様に言ってくれりゃ出してやるよ。で、何が欲しいんだ】


「それだよ……。今までは自分の意志で、出し入れできてたんだ。でも今は違う。『廃棄知識体(ソフィア)』、お前に頼らなきゃ何もできない……」


【……お前、何も分かってねぇな】


「何がだ」


【俺様が、魔族を倒すために何をしてきたかって話よ】


「魔族を生涯調べ続けた馬鹿だろ」


【お前な……一応俺様と一心同体なんだぞ? その言い草はねぇだろ……まあいい。仕方ねぇから、知力ゼロのお前に正解を教えてやる】


 ……相変わらず、一言多い。


【魔族を殺すために、俺様は武器を作ってた。魔族や魔獣を殺すためのな】


「それが、どうした」


【お前の中にあるゴミ。それで、俺様が武器を作ってやってもいいって言ってんだ】


「なっ……そんなことが可能なのか!?」


【当たり前だ!俺様は、対魔族の専門家だぞ!】


「……デカい声出すな。頭に響くんだよ」


 だが──もし本当に可能なら。

 俺が今まで、即席で組み上げていた武器なんかより、ずっと信頼できる。


「なら……試してみろ」


【……いいだろう。お前、闘技場のことを覚えてるか?】


「ん?あ、ああ。それがどうした」


【あの時、お前がアガトに向けて銃のようなもん突きつけてただろ?】


 ああ。

 魔導破片銃(マギ・スクラップガン)

 色んなゴミとマナ結晶で組み合わせて作った、即席の銃か。


【あれは未完成だった。……あの時引き金を引いてたら、暴発してお前はアガトに負けてたかもな】


「……やっぱり、そうか」


 あの時、一週間しか猶予がなかった。弾丸は一発。試し撃ちもできなかった。


「……お前なら、俺の中のゴミで武器を作れるのか?」


【できなくはねぇ。ただ──】


「言い回しが遠い。できるなら、はっきりそう言え」


【できるに決まってんだろッ!】


「う、うるせぇ……」


【……ただ、お前の中の素材で作れる武器なんて、たかが知れてる。だからこそ、俺様はお前の命を守るために、中途半端なもんは渡せねぇ】


 ──だったら、どうやって戦えばいい。


 素手か? いや、この身体なら、それも不可能じゃないかもしれないが……。


【とりあえず、今使えるもんっつったらこれくらいだな】


 俺の右手に、何かが現れた。


「……これは」


 銀のガントレット。

 両手に装着されたそれは、武器というよりも、防具に近い。


「俺はこんなもの拾った覚えは無いんだが……」


【それは、イデアが冒険者時代に使ってたもんだ】


「……そうなのか」


【引退してからは外してたようだがな。いつまで持ってんだよ、あの馬鹿……】


「……どういう意味だ、それ」


【別に。……他に使えそうなのは、それくらいだ。後は、正真正銘のゴミだな】


「ゴミ、か……」


 魔導破片銃(マギ・スクラップガン)

 俺にとっては、結構頑張った力作だったんだが──


「……その未完成品、お前なら完成させられるのか?」


【ああ。けっこう良い線いってたしな。けど、中身がな】


「中身?」


【全部だ。だが、特に“仕組み”が致命的にダメだ】


 ──ああ、やっぱり。

 来たか。嫌な説教タイム。


【まあ聞け。弾は悪くない。素材も理にかなってる。威力も期待できる。……けどな】


「けど?」


【“撃てない”んだよ】


 その言葉に、息を飲んだ。


【お前の設計は、弾にだけ魔力を込めすぎてる。例えるなら──米はあるのに、海苔も握る手もない状態だ】


「……分かりづらいな」


【つまり、“弾”はある。でも、“押し出す”ものがない。爆発力も、反動の制御も、なにもかも足りてねぇ】


「じゃあ、どうすりゃいいんだよ」


【魔力を暴れさせろ】


「……暴れさせる?」


【そうだ。銃の中で、魔力を渦巻かせて集中させて、一気に開放する。それが弾を押し出す圧力になる】


「……なるほどな?」


 正直理解はしていない。


【だがそのとき、銃の構造が壊れないように、魔力の“壁”も必要になる。──それが“魔導構造”ってやつだ】


「……俺には無理そうだな」


【だから、それは俺様がやる】


 ソフィアの声には、自信があった。

 まるで、それが当然であるかのような調子で。


【魔力の流れ、反発の角度、発射のタイミング。全部、俺様が設計してやる。だからお前は──】


「素材を拾ってこい、ってか」


【そういうことだ】


「……ったく。スキルの癖に、指図しやがって」


【役割分担だ。お前は“集める者”。俺様は“蘇らせる者”。そういうこったろ、相棒】


 ──本当に、面倒なスキルを取り込んじまった。


「……誰が相棒だ」


 ---


  ──雑多な路地裏。

 干されたボロ布と、酸化した油の臭いが鼻を突く。

 誰かの怒鳴り声。誰かのすすり泣き。壁際には、身を寄せるように膝を抱えた子どもの姿。


「……なるほどな。ゴミってのは、こういうところに落ちてるのか。にしても、最悪な場所に来ちまったな」


 目の前に広がるのは、所謂スラム街。

 誰もが目を逸らし、触れようとしない場所。

 でも──そこには、“捨てられた魔法文明の残骸”が、確かに転がっている。


【何言ってんだ? ここは俺様たちにとっちゃ宝庫だぜ?】


「……犬かよ、お前は」


【バーカ。ここは“運び屋”や“遺物漁り”が集まる場所だ。目を凝らせ、匂いを嗅げ、音を聞け。使えるもんは、そこら中に転がってる】


 ──指示だけは一丁前だ。


「……とりあえず、探すか。……って、俺しか動けねぇんだったな」


【当然だ。俺様は頭脳労働。お前は肉体労働。役割分担ってやつだ】


 錆びた鉄屑の山をかき分け、くすんだ魔導心核を拾い上げる。


「これ、マナ結晶っぽいけど……完全に止まってるな」


【ああ。枯渇してる。もう誰にも使われることはねぇ。ただの“ゴミ”だ】


 その言葉を聞いた瞬間、俺の掌に紅い紋様が浮かび上がる。


 ──吸収条件、成立。


「……ゴミと分かれば、俺の出番かよ。皮肉だな」


 呟いて、それに触れる。

 心核は赤い粒子となり、俺の腕へと吸い込まれていく。


 所有者は、どっちなんだか。


【それでいい。お前が拾ったゴミを、俺様が分解し、再構築する。部品として、魂ごと組み替えてやる】


「……魂、ねぇ」


【ゴミでも、使い道はある。証明してやろうぜ。なぁ、相棒】


 ソフィアの声が、妙に誇らしげだった。


 拾って、触れて、吸収する。

 だが、吸収しているのは、ただの廃材なんかじゃない。


 かつて、誰かが希望を託し、役割を果たして、今は不要とされた──そういう“物語”を、俺は取り込んでいる。


「──って、誰が相棒だ」


【細けぇことは気にすんな!】


「……まぁいい。とにかく集めるだけ集める。次だ」


【おう。そんで俺様が蘇らせる。完璧な連携ってやつだ】


 ──そのときだった。


「おい、そこで何してやがる」


 鋭い声が飛んできた。


 振り返ると、そこには数人の武装した男たち。

 肩に傷跡のような刺青。腰には鈍く光る刃。

 明らかに、“ただの住人”ではなかった。


「……これって、マズいやつか?」


 ゴミを拾ってるだけだ。何か悪いことをした覚えはない。だが──


【ようやく面白くなってきたじゃねぇか】


 スキルの声が、どこか楽しげだった。


 ゴミ拾いの静けさは、もう終わりだ──。

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