第十九話
アリネスの侵略から数日後。
「奴隷だって!?」
「はい、手紙にはそう書いてありました。」
エルバストから手紙が来ていた。
内容は、人さらいのことらしいが……。
さらわれた人たちは、奴隷として売られてしまう、ということだった。
「穏やかじゃねぇな……。」
「もし、あの時、遅れていたらと思うと……。」
風雅と冬樹の言葉に、俺は同意するように頷く。
人さらい騒動は、全員助けることができたから、安心できるけど……。
「他には何か書いてあった?」
「はい、出来れば、調査と撲滅に協力してほしいと。」
調査はいいとして、撲滅か……。
「なら、俺たちの出番すかね?」
「そうだね、流ノ介と水無月は連れていくとして――」
「殿~、今回は私を連れて行ってください~。」
エルバストに行くメンバーを決めていると、穂香が手を挙げる。
「私も、今回ばかりは、我慢の限界です~。」
のほほんとしているが、穂香も怒っているらしい。
これで、行くメンバーは決まったな。
「とりあえず、穂香は武器を決めようか。」
「武器ですか~?」
そう、この中で唯一武器を持っていないのは、穂香だけだ。
将を決める試合でも、穂香は武器を使っていなかった。
「いざという時に、無いと困るからね。」
「わかりました~。」
こうして、出発を三日後に控え、穂香の武器を決めることにした。
とりあえず、鍛冶屋に行くことに。
「こんにちはー。」
「おぉ、殿か、よく来たな。」
鍛冶屋に入ると、お世話になった、頑鉄さんがいた。
どうやら弟子も増え、繫盛しているらしい。
「どうした? 武器の手入れか?」
「いや、穂香の武器を作ってほしくて。」
「こんにちわ~。」
頑鉄さんに、穂香を紹介する。
すると、ふむと言いながら、俺の時と同じように手を触る。
「成程な。」
それだけ言うと、店の奥に来るように言う。
そこには、沢山の武器が置いてあった。
「さて、好きなものを選ぶといい。」
それだけ言うと、頑鉄さんは仕事へと戻って行った。
穂香と俺は、武器を一つずつ見ていく。
「穂香はどういうのがいいんだ?」
「そうですね~、大きくて、振り回せるものがいいです~。」
大きくて、振り回せるもの……。
思いつくのは、風雅の斧ぐらいしか……。
「あ、これいいですね~。」
穂香が手に取ったのは、大剣だ。
確かにこれなら、大きいし振り回せる。
重そうなのに、軽々しく持っている。
「これにしましょ~。」
大剣が気に入ったのか、軽々持ちながらお会計に向かう。
「頑鉄さん、決まったよー。」
「そうか、なら、持っていくといい。」
「あれ、お会計は?」
「構わん、それで、殿を守ってやれ。」
頑鉄さーん! なんて男前!
俺達はお礼を言い、城へと戻って行った。
「戻ったよー。」
「殿、お帰りなさいませ。」
城へと戻ると、桜が出迎えてくれた。
他の皆は、訓練所にいるという。
「では~、この子を詳しく見てみましょ~。」
そういうと、穂香は訓練所へと向かっていった。
「殿、あの剣は?」
「頑鉄さんからのプレゼント。」
そんな会話をしながら、俺達も訓練所へと向かう。
「おらおら! そんなもんか!?」
「まだだべ!」
訓練所では、風雅と数間が手合わせをしている。
残りのメンバーは、それを見ていた。
「おらぁ!!」
「うわっ!?」
風雅の一振りが、数間を吹き飛ばした。
手合わせは風雅に軍配が上がった。
「風雅さ~ん、今度は私と手合わせしましょ~。」
「穂香とか、いいぜ!」
次は穂香と手合わせするようだ。
俺もも見る側に参加して、手合わせを見守る。
「手加減なしな!」
「もちろんです~!」
風雅が斧を、穂香が大剣を構える。
始め! と共に二人は鍔迫り合いをする。
「このっ……!」
「よいしょー!」
穂香が大剣を振るいあげると、風雅が吹き飛ぶ。
何とか着地すると、大剣を叩きつけてくる。
「うぉ!?」
「まだまだ~!」
あの風雅が、まさかの防戦一方だ。
桜も驚いているようだ。
何度か打ち合いがあり、二人とも息を切らしてた。
次の一手で、勝負が決まるだろう。
「なぁ、次で勝負決めようぜ?」
「いいですよ~?」
二人とも、己の武器を振り上げる。
嫌な予感がすると、冬樹が結界を張る。
「『逆風天明撃』!!」
「『両断剣・牡丹』!!」
二人の大技がぶつかり合い、衝撃波が起こる。
冬樹が結界を張ってくれたおかげで、俺達には被害はなかった。
俺達には……ね。
周りの砂利が吹き飛び、木々は倒れていた。
とてつもない大きさの衝撃があったのがわかる。
「すげぇな!! 穂香!!」
「風雅さんこそ~。」
あははは、と笑い二人だったが、とてつもなく怒っている人物がいる。
桜と柊だ。
「風雅! 貴様! 殿に何があったらどうするつもりだ!?」
「穂香、これはやりすぎですよ~?」
桜は激怒しており、柊は笑顔だが、顔が笑っていない。
この後、二人はこってり怒られたのでした。




