029_家事は壊滅的
■■■■■■■■■■
029_家事は壊滅的
■■■■■■■■■■
ルルデが奴隷から解放されて、初めてのダンジョン。
奴隷だった時は冒険者登録ができなかったため、新規で冒険者登録した。本来ならGランクなのだが、ドルドがその権力を使ってEランクにした。
ジュンとルルデはドルドがギルマスとは知らず、そういったシステムなんだと思いこんでいる。
仮にドルドの姪でなくても、ルルデはEランク登録されていただろう。
ジュンの狩りにとって、ルルデは重要な役割を果たしているからだ。そのルルデをEランクダンジョンに入れないようにしたら、問題が起こる。
ジュンが狩りをすることで、Eランク冒険者やポーターたちが貧困から脱出できるようになった。
これはずっと続くものではないが、Eランク冒険者の懐が潤えば武器や防具を揃えられるし、ポーターはレベル上げができる。
冒険者やポーターの底上げをするために、ジュンたちの狩りは重要なものになっているのだ。
さらに冒険者ギルドにも利益がある。それらの打算と実益により、ルルデがEランク冒険者になることは確定していたのだ。
それに、今のルルデならドルドが権力を使わなくても、簡単にGランクダンジョンとFランクダンジョンを踏破することだろう。
この日も多くのポーターと冒険者が集められた。この数日の間に冒険者たちが酒場でジュンの魔法が凄いと触れ回ったから、ギルドが雇っていない冒険者まで見学のためについて来ている。
ルルデがキラーウルフを引き連れて走ってくると、見学の冒険者たちがざわつく。
「本当にあれだけのキラーウルフを殲滅できるのか?」
「もし、噂が嘘だったら、俺たちヤバくね?」
「逃げたほうがいいんじゃないか……」
1人の冒険者が走り出す。今なら助かるかもしれない。それが伝播して、1人、2人と走り出す。
「お、おい、待てよ!」
30人程いた見学の冒険者は、10人程に減ってしまった。そこで轟音が響き渡り、逃げ出した冒険者が恐怖で身を屈めた。
雷がキラーウルフを殲滅した光景を目の当たりにした冒険者は、口をあんぐりと開けてその光景を見つめた。
このことで「雷神」の二つ名がジュンに定着するのだった。
この日、キラーウルフを6回狩った。634体からCHSC1244ポイントを稼いだ。
金額にすると銀貨7608枚にもなり、ジュンは銀貨4650枚を手にした。もちろん、ここから40パーセントになる銀貨1860枚が6人のポーターに支払われ、ルルデには30パーセントの銀貨1395枚を渡した。
その他に、宝箱から得た大金貨10枚もある。これもポーターとルルデにちゃんと分配した。
「こんなにいらないぞ、主様」
「ルルデさんが一番危険なことをしているのですから、せめて半分を受け取ってください」
2人は要らない、受け取れと押し問答を繰り返し、結局ドルドが仲裁に入ることになった。ルルデの取り分は10パーセント。それで2人を納得させたのだ。
「まったく疲れる奴らだ……」
このような仲裁は自分ではなく、ジョンソンのほうが得意だと頭をかいた。
この日、ジュンはレベル19になった。
キラーウルフはレベル15なので、レベル21になるまで狩れる。それでも数日でレベルが21になってしまう。
ジュンたちの狩りは2日動いて、1日休むサイクルだ。
稼働日は毎回5回から6回、1回で100体程のキラーウルフを狩って大量のCHSCを稼いだ。そしてジュンはレベル21になった。
「次からはケルピーを狩ります」
「おう、上手く狩れるといいな」
ジョンソンが親指を立ててきた。ジュンがどんどん狩ってくれれば、それだけギルドが儲かり職員も手当がつく。職員たちの中では、ジュンへの好感度がどんどん上がっている。
「ジョンソンさん、私たちもいいでしょ?」
しかも、ジョンソンの部下でない他の部署の職員からも、参加させてほしいと頼まれる始末である。しかも、受付をしている女性職員のほとんどからそう頼まれているのだ。
「あー……ブレンダが良いと言ったらな……」
ブレンダは受付カウンターを管轄する幹部である。女性職員のほとんどはブレンダの部下である。そのブレンダの許可が必要なのは当然のことだ。それを理由にしてジョンソンは断り続けている。
いくらなんでも、受付の女性職員をダンジョンの中に入れるわけにはいかない。そんなことをしたら、ブレンダに殺されるのだ。
・
・
・
ある休みの日、ルルデはキッチンに立った。
「主様のために、料理を作るんだ」
強い意志を感じる目。
だが、キッチンはホコリが溜まっていた。ドルドは独身で食事は外で済ませる。家事はできず、掃除は自室とリビングの生活範囲のみ。テーブルの上にホコリが溜まれば手で払い、床にホコリが溜まれば箒で簡単に掃くだけ。水拭きなどしたことない。
洗濯物やゴミはアイテムボックスに収納して、ギルドに出入りしている業者に持って行かせる。一人暮らしのドルドに不便はなかった。
そこにルルデが入ってきた。
ルルデもドルドに輪をかけて家事はできない。だが、ジュンのために何かできるようになりたいと、料理にチャレンジしようと思った。
その矢先、キッチンはホコリの山だった。
ガチャンッパキンッ。ガチャガチャッ。
「何事だ!?」
ドルドが血相を変えてキッチンに飛び込んできた。
「なんじゃこりゃ」
食器が床の上で粉々になっている。そこにはルルデが立っていた。
「ルルデがやったのか?」
「すまない。掃除をしようとしたら、こうなってしまった」
「はい? 掃除?」
どう見ても癇癪を起して食器を破壊したようにしか見えない。これがルルデの家事能力なのだ。食事を作れば炭になり、掃除をすればゴミが増え、洗濯をすれば服がボロ布になる。
「お前には無理だ。家事は止めておけ……」
「オジキ、私は主様の役に立ちたいんだ」
「こんなことしなくたって、お前は十分にジュン殿の役に立っているじゃないか」
「そうじゃないんだ! あれでは……ないんだ……」
「………」
ドルドはなんと言えばいいのか分からず、困ってしまった。こういう時に女性が居たらと思うが、ドルドは独り者だ。
「あー……料理を習ったらどうだ?」
「オジキ、誰か料理を教えてくれる人はいないか!?」
「え?」
「え?」
「「………」」
この2人にそういった知り合いはいない。ギルドと荒事の知り合いなら居るが、それらの者たちが家事に精通しているとは思えない。
・
・
・
ジュンは宿の部屋の中で貯まったCHSCを眺めて、にやけていた。ある意味、危ない人だ。
「スキルを覚えようかなぁ~♪」
効率厨だと分かってから、一番楽しい時間がスキルを覚える時だ。
【消費CHSC240】
・時間短縮Lv4 パッシブスキル スキルの発動及び再使用時間を40パーセント削減する
【消費CHSC280】
・時間短縮Lv5 パッシブスキル スキルの発動及び再使用時間を50パーセント削減する
【消費CHSC320】
・時間短縮Lv6 パッシブスキル スキルの発動及び再使用時間を60パーセント削減する
時間短縮を一気に3レベル上げる。これで詠唱時間は半分以下になった。
ここで長考して、もう1つスキルを覚えることにした。
【消費CHSC150】
・魔法威力上昇Lv1 パッシブスキル 自身が発動する魔法の攻撃力を10パーセント上昇させる
さらに、全能力にCHSC300ポイントずつを振った。
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+
●ジュン・ステータス
【ジョブ】効率厨
【レベル】21
【経験値】0/11000
【生命力】190/190
【魔力】515/515
【腕力】54
【体力】93
【知力】195
【抵抗】190
【器用】122
【俊敏】67
【スキル】チェーンスコア
【感覚スキル】聴覚強化Lv2 探知魔法Lv1
【補助スキル】時間短縮Lv6 魔法威力上昇Lv1
【下級魔法】エアカッター
【中級魔法】トルネド サンダー
【上級魔法】サンダーレイン
【CHSC】5113
【身分】冒険者
【賞罰】




