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027_キラーウルフ狩り

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 027_キラーウルフ狩り

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 キラーウルフLv15。取得経験値は65ポイント。それを均等割りして15人に分配されるから、1回で100体程を狩っても450ポイント前後の経験値しか入ってこない。

 ジュンのレベルは18。経験値は918/5700。レベルアップまでに10回ほどの狩りができる。キラーウルフの数としては、1000体以上だ。

 普通の5人パーティーの冒険者がレベル18からレベル19にレベルアップするには、400体以上の討伐数が必要になる。


 レベル18の冒険者でもケルピーを狩ることもあるが、同じレベル帯の魔物は非常に強い。1体倒すのに時間がかかり、下手をすると大怪我をして効率が悪くなるというジレンマにぶち当たる。

 そういった理由から、レベルアップや冒険者ランクを上げることを諦めてしまう冒険者が現れる。不毛なレベル上げよりも、身の丈に合った魔物狩りで生計を立てるようになるのだ。


 冒険者はEランクからCランクといった中堅どころが多い。不毛な経験値稼ぎに耐えてジレンマを抜けた先に、Bランク以上の高ランク冒険者が存在する。

 Bランク以上の冒険者は、冒険者全体の3パーセントにも満たない。Aランクになるとさらに減って1パーセント未満だ。Sランクともなると、ほんの一握りの存在である。


 元Aランク冒険者であるドルドは、25年以上かけてAランクになった。

 Aランク冒険者として5年ほど活動して引退し、冒険者ギルドの幹部候補として働くようになった。

 ギルマスの職に就いたのは2年前。ドルドをスカウトした前ギルマスの引退に伴う昇格だった。


 Eランク以下の冒険者で、ドルドがギルマスだと知っているものはあまり多くない。Eランク冒険者がギルマスと会う機会がないからだ。

 ドルドの顔も知らないEランク冒険者たちとポーターたちを指揮し、ビックボアとキラーウルフの解体作業を終えたドルドが、冒険者ギルドに戻って来たのは夕方であった。


「おう、戻ってきたか」

 ジョンソンが気軽に声をかけるが、ドルドは永遠に続くかと思うほどの解体を指揮していたことで疲れ切っていた。

「なんだ、しけた面しやがって」

「お前の苦労が、少しだけ分かったぞ」

「ぷっ。そんなに解体が身に染みたか」

「いつ終わるか分からないような殺伐とした解体作業を見つめ続けたんだぞ。あれはヤバイぜ」

「ハハハ。そう思うなら、俺や部下たちの給料を上げろってんだ」

「それとこれとは話が別だ」

「ちっ、渋ちんが」


 しばらくすると、この日の収支が部下から上がって来た。

 その内容を確認してジョンソンが、ニヤリと笑い紙を差し出した。

「今日の収支だ」


 ビッグボアの討伐数:213体

 買取価格 魔石:銀貨3枚 肉:銀貨3枚/10キロ 毛皮:銀貨2枚/10キロ

 魔石:銀貨639枚 肉:銀貨639枚 毛皮:銀貨426枚 小計:銀貨1704枚


 キラーウルフの討伐数:212体

 買取価格 魔石:銀貨6枚 角:銀貨4枚 毛皮:銀貨2枚/10キロ

 魔石:銀貨1272枚 角:銀貨848枚 毛皮:銀貨424枚 小計:銀貨2544枚


 総合計は銀貨4248枚(大金貨4枚、金貨2枚、大銀貨4枚、銀貨8枚)。

 合計で400体以上のビックボアとキラーウルフの素材が持ち込まれた。

 冒険者たちが酒場へ駆け込むのが見えた。昼間の憂さを晴らそうというのだろう。

「明日も仕事があるんだ。飲み過ぎるなよ!」

 冒険者たちはジョンソンのその言葉に手を振って応えた。


 冒険者ギルドは買い取った肉と毛皮を商人などに売って売却益を得る。

 ドルドが陣頭指揮をしていても、ドルドには何もない。そもそもギルマスは高給取りで、ドルドが好きでやったことだから特別な報酬はない。


「明日からは部下を同行させる。同行した部下には、手当を与えるぞ。いいな?」

「ああ、構わん」

 精神的にくるものがあるので交代で同行させて、同行した場合には手当を出す。

 それでも冒険者ギルドとしては儲けが期待できた。


「明日は終日キラーウルフを狩るそうだぞ」

「そうすると素材は角と毛皮だな。肉を解体するよりは少しだけ時間が少なくて済むのはありがたいな」

 これだけ大量の素材を常に供給されたらそれこそ捌ききれないため、素材が変わるのはギルドとしてもありがたい。


 ドルドはルルデのことを話したかったが、今日はそんな時間がなかった。

 明後日は休みを取るというので、その時に話を聞かせてもらうように頼んだ。


 ・

 ・

 ・


 キラーウルフはオオカミの魔物だけあって足が速い。しかし、レベルが上がっているルルデの足は、さらに速かった。

「ハッハー! おらー、ついて来い!」

 キラーウルフを置き去りにしない絶妙な調整をしながら、ルルデはいくつかの群れを引き連れてジュンのところに帰っていく。


「主様!」

 ルルデが叫ぶと、ジュンが魔法を発動させる。

 ジュンの魔法は発動までに10.5秒が必要だが、そのタイミングを計るのはジュンである。

 もしジュンがタイミングを間違えれば、ルルデも魔法の餌食になるだろう。しかし、ルルデはまったく誤爆の心配をしていない。

 ジュンの時間感覚が非常に優れていることを、知っているからだ。シャル婆さんの家で過ごした時に、時間感覚をしっかりと身につけていたことは知らないルルデだが、ジュンのことは信頼している。ジョブの文字化けを直してくれた恩もあるので、仮に誤爆されて死んでも恨むことはないだろう。


 雷雲から雷が発せられて、キラーウルフを蹂躙していく。

 圧倒的な攻撃力は、戦闘という行為を虐殺という表現に変化させるのだった。

 キラーウルフが一掃されると、控えていたポーターたちが死体の解体に着手する。

 一度に100体ものキラーウルフを殺すジュンは、彼らから畏怖の目を向けられ雷神と呼ばれ始めていた。それがルルデには誇らしかった。


 解体が始まると、ルルデはまた走り出す。戦えないことには不満もあるが、それでもボスを倒すのは任せてもらえる。

 戦闘の機会は少ないが、ある。この鬱憤を溜めて、ボス戦で発散するのだ。


 キラーウルフは通常でも群れで行動する魔物だが、大きな群れを作るエリアがダンジョン内にある。

 そういったエリアに普通の冒険者は近づかない。1体でも厄介なキラーウルフが数体で群れているだけでも危険なのに、数十体も居たら無事では済まないからだ。

 幸いなことに、そういったエリアは比較的遠くにあるため、冒険者たちの狩場とは距離があった。


「ん? あれは……宝箱か」

 危険なエリアの奥には時々宝箱がある。いつもあるわけではないし、Eランクダンジョンの宝箱はそこまで良いものが入っているわけではない。と言っても、Eランク冒険者にとっては、高額なものが入っているのだが。

 時々罠がある。それもEランクダンジョンの特徴だ。ジュンから罠のことを聞くのだが、頭には入らない。だが、ルルデは天性の勘によって、罠を避けていた。


 ルルデは発見した宝箱を無視して走った。今は主であるジュンの前に、大量のキラーウルフを連れて行くことが優先される。

 キラーウルフがサンダーレインによって一掃された後、宝箱のことを話した。

「一度宝箱を見てみたいから、案内してもらっていいですか」

「今もあるかは分からないぞ」

「その時は諦めますので、構いません」

 ジュンはルルデに対して丁寧な口調である。非常に良い主だが戦闘が少ないことと、この丁寧な口調が不満である。


「あ、宝箱がありましたよ」

 木の箱に、銅と思われる金具で補強がされている。宝箱というよりは、ただの箱に近いかもしれない。

「へー、宝箱ってこんな感じなんだ。おいら、初めて見たよ」

 宝箱を見たことのないポーターや冒険者ばかりだったから、ほぼ全員がついてきた。

 キラーウルフの死体は簡単に消えないし、他の冒険者の狩場からかなり離れているので盗まれることもないだろう。もし仮に盗まれても、こういったことを経験するほうが貴重だとジュンは思った。


「Eランクダンジョンの宝箱に罠はないと言われているけど、気をつけないといけないよ」

「なら、私が開けよう」

 ルルデが開けると言うと、ジュンがそれを止めた。

「ちょっと待ってくださいね」

 ジュンはCHSCを消費してスキルを取得した。


【消費CHSC100】

 ・探知魔法Lv1 アクティブスキル 消費魔力10ポイント 探知範囲は半径10メートル 魔物、人間、動物、罠を探知する 発動時間3秒 再使用20秒


「これでよし。探知魔法!」

 何も起こっていないように見えたが、ジュンには宝箱に罠があるかどうかが分かった。

「罠はないみたいだから開けて大丈夫ですよ」

 もし罠があったら、罠解除を取得するつもりだった。


 ジュンの仲間にはシーカーが居ないので、こういったことにCHSCを消費するのは納得済みだ。

 ルルデにできることは魔物の音や臭いを感じることであり、罠のようなものを発見する能力はない。野生の勘とも言うべき勘によってフィールドの罠は回避できても、宝箱の罠は回避できない。


 ルルデが宝箱を開けると、大金貨が10枚入っていた。Eランク冒険者にとって大金貨は大金だが、ジュンはお金よりも装備や便利なアイテムのほうが良かった。

 贅沢なことを言っているようだが、お金には困っていないのだ。


「それじゃあ、狩りに戻りましょうか」

 良い息抜きになったと思い、途中だった解体に戻るポーターたち。気分転換になったジュンたちも、キラーウルフ狩りを再開した。

 この日は5回の狩りを行い、546体、CHSC1076ポイントを稼いだ。



 +・+・+・+・+・+・+・+・+・+


 ●ジュン・ステータス

【ジョブ】効率厨(アフィセンレーター)

【レベル】18

【経験値】3284/5700

【生命力】100/100

【魔力】425/425

【腕力】24

【体力】63

【知力】165

【抵抗】160

【器用】92

【俊敏】37

【スキル】チェーンスコア

【感覚スキル】聴覚強化Lv2 探知魔法Lv1

【補助スキル】時間短縮Lv3

【下級魔法】エアカッター

【中級魔法】トルネド サンダー

【上級魔法】サンダーレイン

【CHSC】1719

【身分】冒険者

【賞罰】



 

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[一言] ボスも倒したら、何かスキルが手に入るのかな?
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