ep.065 血の華が咲き、幻の鰐が襲う
ヘルメットを取った顔が、直子と違った事に、骨折していた男が焦る。
「お前、誰や?コラっ!」
桜子は、華麗にサクラ1300から降りる。
もちろん、右手には既に鉄扇を手にしていた。
骨折している男を指し、
「下衆に名乗る名などない!」
桜子は男達を見回し、
《全部で10人か・・・》
顔を赤くし、男は切れる。
「かまへんから、拉致ってまえ!」
暴走族の男達は、一勢に野犬の如く桜子に襲い掛かる。
一番早く桜子に襲い掛かって来た男は、捕まえたと思った瞬間、喉に熱い痛みを感じ後方に吹っ飛ぶ。
カウンターで、桜子渾身の突きが綺麗に入ったのだ。
振り返りざまに、桜子の右手の鉄扇が後ろから捕まえようとする男のこめかみを打ち据え、更に、0コンマ3秒遅れで、左ハイキックが同じこめかみを捕らえた。
男は悲鳴をあげる間も無く、その場に崩れ落ちる。
桜子は、骨折をしている男を睨み、足を進めた。
男達は、素手では敵わないと思ったのか、手にそれぞれナイフや特殊警棒を持ち出す。
骨折している男の前には二人いた。
そのうちの一人が、サバイバル・ナイフで切り付けて来る。
男を左にフワリと避け、後頭部に鉄扇を叩き付けた。
撃たれた男は、顔面を地面にぶつける。
ぶつけた際に鼻が折れたのか、アスファルトに真っ赤な血の華が咲く。
桜子は無慈悲に、身体を痙攣させている男の頭を踏み付け、とどめをさした。
動きが完全に止まる。
意識を失った様だ。
桜子は、骨折している男の前にいるもう一人の男に対し、命じる。
「どきなさい」
男は威圧されたのか、後ずさった。
骨折している男の目の前で、桜子はニイっと怪しく笑い、目を一度伏せる。
次に桜子がカッと目を見開いた瞬間には、骨折している男は固まっていた。
冷や汗が男に浮かんでいる。
桜子が耳元で囁く、
「ほら、早くしないと、あなたの大事なところが鰐に食いちぎられちゃうわよ」
骨折している男は、見えない鰐と格闘し、オロオロしながら、
「誰か、鰐取ってくれ、鰐!」
と叫び、遂にはギプスをしている腕を自身の股間にぶつけだした。
残っている男達は、呆然としている。
骨折している男のズボンが、打撃による裂傷で赤く染まり出した。
そして、恐らく睾丸も破裂したのであろう、色が赤からピンクに変わったところで、白目を剥くと座りこんで意識を失ってしまった。
刹那、桜子が左のこめかみに右足のミドルキックを放つ。
骨折している男は頭をアスファルトで削り、倒れた。
桜子は、虫けら以下の生物を見る冷たい視線を投げる。
「地獄に堕ちればいい、下衆が・・・」
桜子が、残っている男達に視線を投げた瞬間の出来事である。
パチっと電気が弾ける音がすると、桜子は左脇腹に痛みを感じた。
意識を失いながら、
「えっ?スタンガン?不覚・・・」




