ep.066 信用して待ってやれ
暗闇の中、遠くで誰かが自分を呼ぶ気がした。
《誰・・・?アタシを呼ぶのは・・・?》
額に心地良い冷たさを感じ、
《あれ・・・?そもそも、何でアタシ・・・こんな事になってるの・・・?》
桜子を呼ぶ声はいよいよハッキリしてきた。
《分かった、分かったから・・・》
桜子がパチクリと目を開けると、視線の先には心配そうに見詰める浅黒い肌にウェービーな金髪の人懐っこい顔があった。
「オー、気が付きましたカ、桜子ちゃん」
頭が一瞬錯乱する。
《あれ?何で理事長がここに?》
桜子が身体を起こすと、額から濡れたハンカチが落ち、左脇腹が少し痛んだ。
「痛っ・・・」
「痛いでショ?コレでやられたからネ」
そう言って、理事長・JJはスタンガンを桜子に見せた。
瞬間、桜子は車内から見える景色を見回し、全てを思い出した。
《そうだ。アタシ、気を抜いた瞬間に、あのスタンガンで・・・、でも何で、理事長が?》
桜子の不思議そうな顔を見たJJは、大きいため息を一つ吐き、
「あのネ、“ル・スリィール”でランチ食べ終えて、大阪市内に戻ろうとしたら、桜子ちゃんが暴走族に追われてるじゃナイ?ボク、気になって追い掛けたヨ~、そしたら、バトルが始まって・・・」
桜子は頭を下げた。
「すいません、理事長。学園にご迷惑かけました。停学でも退学でもしてください」
JJは優しく諭す。
「ノー、桜子ちゃん・・・。そんな事、軽々しく言うモンじゃナイヨ。ボクは別にその事に付いては、全く怒ってないサ。喧嘩売られたんでショ?」
桜子は頷いた。
「どうしてか話してくれるカナ?」
桜子は、もう一度頭を下げ、
「すいません、理事長。まだ言えません・・・。月曜日には必ず報告に上がりますから、それまで待って貰えませんでしょうか」
桜子の目は、真剣そのものだ。
JJは、深くもう一度ため息を吐き、
「こんな時、“お嬢”だったラ、信用して待ってやれって言うんだろうナ・・・。うん。理解ったサ、月曜日、お昼休みに理事長室来なさい。昼ご飯食べながら、事の顛末を聞かして貰うサ。いいネ?」
桜子は、ありがとうございますと言い、頭を下げた。
思い出した様に、
「そう言えば、暴走族は?」
JJは悪戯に笑うと、
「ボクがツブしたヨ。それで良かったんデショ?桜子ちゃん」
桜子は思う。
《かなわないなぁ。この人には・・・》




