ep.047 普通の夢見る女子高生なのに・・・
直子は、麺をすする。
ストレートの細麺は、いくらでも胃に納まった。
目の前のこころは周囲の目など気にする事も無く、豪快かつ男前にラーメンを食べていく。
「こころ先輩、聞いていいですか?」
こころは、途中の麺をちゅるんと吸って、
「何ね?直子?」
「その器って、凄いですね?」
こころの横で真魚がくくっと笑って、
「凄かでしょー、この器。これは博多のね、こころの後援会の会長さんプレゼントとよ」
「後援会ですか?」
真魚は説明する。
「うん、この“博多っ娘、純情”のおっちゃんの師匠が、福岡やあちこちで“一って博多ラーメンのお店やっとってね、福岡出身のスポーツ選手や選手の卵を応援してくれると。だから、このウチもほら」
真魚の器にも、真魚専用と書いてあった。
もっとも大きさは、普通なのだが・・・。
「で、後援会の会長が個人的にも応援してるのが、この娘ったい」
と、こころを指差す。
「ちなみに、何玉それに入るんですか?」
こころは、ニタリと笑うと、
「三玉とよ!あっ、おっちゃん替え玉!今度は二玉でよかよ。真魚も直子も替え玉せんね?」
真魚と直子は顔を見合わせ。
「する!」
替え玉を食べ終えた三人は、談笑していた。
「美味しかったです、博多ラーメン。ファンになりました。雪江もそのうち連れてきます」
真魚が首を傾げる。
「雪江?」
「あー、真魚は知らんかったね。この直子の友達ったい。聖クリの同級生の」
「あー、なるほどね。そう言えば、こころ、来月の弓道の大会出るんでしょ?顧問の奥家先生が、首に縄付けてでも出場させるって」
「場所は、何処やったと?」
「確か、奈良の橿原神宮んトコやったと思うと」
「だったら大丈夫ったい。来週は水曜から、また全日本のバレーボールの合宿で東京とよ。その後やき」
「ホント、忙しか女の子ね」
「しょうがなか、性分とよ。ウチは普通の夢見る女子高生なのに・・・」
こころは、深くため息を吐く着く。
しばらくして、真魚とこころは、顔を見合わせ、プッと笑った。
直子もつられて笑う。
《アタシも雪江とこうやって、もっともっと笑いたいなぁ・・・》




