ep.243[final] 桜舞う春の日に
トメは笑顔に戻ると、雪江に尋ねる。
「しかし、いつの間に?誰に彫ってもらったんだい?」
雪江は目を細め、
「それはね、京都に住んでる彫り清さんて人。三味のお稽古の帰りに・・・」
雪江は、してやったりの顔だ。
それに引き換えトメは、呆れ顔で、
「それで京都行く時は、いつも帰りが遅かったのかい・・・。帰りが遅い理由をあんた達に聞いても、しらばっくれるはずだ・・・」
政は、すいませんと頭を下げた。
雪江がトメに向かって顔を突き出し、
「でね、トメ祖母ちゃん。虎谷の会長さんから聞いたんだけど、トメ祖母ちゃんの朱雀は、伝説の彫り師・彫り辰さんの作だよね。確か?」
トメは大きく頷き、
「あぁ、そうだよ。辰さんに彫ってもらったんだ。でも、それが?」
「ええ、その彫り辰さんの最後の弟子が彫り清さんで、彫り辰さんの過去の図柄を記したノートを受け継いでいたの」
「それでかい」
トメは納得いった様で、軽く膝を叩いた。
「それから、彫り清さんが話してくれたんだけど・・・」
雪江が口ごもると、トメが、
「どうしたんだい?」
雪江は深呼吸を一つして、
「驚かないでね。彫り清さんが言うには、『師匠の朱雀を彫るのは、これで二人目だ』って、アタシ驚いて誰が彫ったのか聞いてみたの。そしたら・・・」
トメはごくりと息をのみ、
「そしたら?」
「母さんだった。だから、母さんは自身がトメ祖母ちゃんの子供だってのを、知ってたんだと思う。はっきりとは覚えてないけど、母さんの背中にも墨はあったから・・・」
トメは手で口を押さえ、大粒の涙を零す。
「小雪・・・」
政がボソリと、
「ええ、そうです。襲撃を受けた後、姐さんが息を引き取られる前に、雪江に伝えてくれとおっしゃっていました。『雪江にはお祖母ちゃんがいる。だから独りじゃない。そう伝えてくれ』と」
雪江は号泣するトメを、優しく抱き、
「朱雀は三羽いたの。トメ祖母ちゃんの思いは、ちゃんと伝わってたのよ」
絆を確かめ合った夜は、静かに更けていく。
河内長原駅前で、パーティードレスを着た女達が騒いでいる。
「もー、こころ!アナタ、また買い食い?結婚式間に合わないわよ」
桜子は久しぶりに会う友達に呆れている。
「なんね、桜子。たまの大阪やけ、やっぱりタコ焼き食べんと。ウチはアメリカから、昨日帰国したトコと。大丈夫、雪江ちゃんの結婚式は、長原神社やけすぐそことよ」
藍は花束を抱えて、くすくす笑い、
「卒業してから三年経ちますが、相変わらずこころちゃんは、食いしん坊さんどすなぁ」
三人は見つめ合うと、ケラケラ笑った。
遠くから直子やみぃの声が聞こえる。
「あっ、こころ先輩~!」
「こころ~!」
そんな桜子達の横を、ベンツが通り過ぎる。
「ママ、今の人たち、雪江おねーさんのお友達だよ」
「あら、そうだったわね」
「ねぇ、パパ」
「ダメよ、優。パパは飛行機で疲れてるんだから、起こしちゃ」
優は残念そうに、
「はーい」
ハンドルを握っていた秀が、
「優ちゃん、着いたらおっちゃんがプリン買ーたるわ。機嫌直し」
優は、にぱぁと笑い、
「約束だよ、秀ちゃん」
長かった冬が終わりを告げ、春がやって来る。
桜舞う柔らかな日差しと共に・・・。
ー完ー
読者の皆さん、こんばんわ。(^^)
こころ龍之介です。
やっと“はねくみ☆セブン”再リリースでの完全完結しました。
正直、長かった・・・。
当初の予定は、この話で全60話位を予定してたのですが、次々と話が延びていき・・・、軽く四倍を越えてしまいました。
アフターストーリー含め、全243話って、完全にヘタレですね。
でもおかげさまで、皆さんの叱咤激励により、自分のスタイルが確立出来た気がします。
ありがとうございました。
さて、今後の予定ですが、明日よりW連載にスタイルを戻そうと思います。
既途中の長編ミステリー“嬢の帰還”の再開と、新作ハードボイルド・アクション“はねくみ☆code:04 ~北の大地に、皐月舞う~”を執筆します。
明日は“code:04”第1話です。
おたのしみに!
↑
と、前のアメブロでは書いてたのですが、途中で中止、一時、マジすか学園の二次創作を書いてた事もあり、更に言うと、その後、ある病気にかかり長期入院もしてました。ちょっとあの世も体験しましたが。w
で、新作はですね。年明けからアップします。
新作は“嬢の帰還”でも無く、“code:04”でも有りません。
今、予定してるのは3作品。
東北舞台のラブストーリー“サヨナラの向こう側”と、関西を舞台にした歴史ミステリー“凜として・・・”、そして、東海を舞台とした“はねくみ☆code:01+missin'08~二人桜子(仮)~”です。
それでは、よいお年を!
こころ龍之介。
↑
と、前回の後書きでは書いたのですが、
はい。後書きの後の、“本当の”後書きです。(^^;)
友人より指摘が有りまして、
「これ、アフターストーリー組み込んだ方が良くね?」
考えました。(^^;)
デザート的なお話ではあるのですが、現状ではセブン本編だけで読み終わられてる読者様が多い。
幸い、“セブン”は章分けした処だ。ならば・・・
と思い、組み込む事にしました。m(__)m
作者のわがままです。お許し下さい。m(__)m
以上、こころ龍之介でした。(*^ー^)ノ♪
※完結記念に、評価、ご感想頂けませんでしょうか?
宜しくお願いします。m(__)m




