第1章 第1話 『リアム・アルベール』
ーーカン、カン、カカッ、カン
木刀同士がの力強くぶつかる音が部屋中にこだまする。
その訓練場には青年と40を過ぎた頃と思われる男が木刀を手に向かい合っていた。
青年は銀色の髪をしており、整った顔つきをしている。
男の方も白髪が混じっているが髪は銀色で鋭い目つきで青年を見つめている。
「手を止めるな!私はまだ、息も上がっていないぞ!」
「ち、父上、少し休憩を…」
「甘いわっ!」
男が素早く木刀を振り、青年の右頬に直撃する。
《バシッ!》という音と共に青年はその場に倒れ込んだ。
何とか声を出そうとするが、痛くて音にならない。
男がまた、倒れ込む青年に向かって木刀を振るう。その時だった…
ー「ウインドシールド!」ー
青年の前に風の壁が展開され、振ってくる木刀を弾いた。
男は顔を顰めながら怒鳴り出す。
「おいリアム!また魔法を使ったな!」
「ごめんなさい父上!でも咄嗟で…」
「うるさいっ!」
「あがっ…!」
青年は男に襟元を掴まれ、投げ飛ばされた。
青年はかなり痛かったのか悲痛な声を出している。
青年の名前はリアム・アルベール。このアルベール家の長男である。
そして、男の名前はロイ・アルベール。リアムの父であり、第12代『剣聖』である。
「どうして魔法なんかを使った!剣聖の家系のお前が!」
「すいません…」
「大体、魔法なんて魔道具を使えば誰でも使えるんだ。そんな価値もない過去の遺物に頼るんじゃない!ほら立て“出来損ない”!続けるぞ!」
「……はい」
リアムはふらつく足で何とか立ち上がる。この時間が彼には地獄でしかなかった。
剣聖の家系に生まれたからと言う理由で、強制的に剣を叩き込まれるこの時間が。
リアムには剣の才能がなかった。「出来損ない」と言われるほど。
あいつとは違って…
「あれ〜。兄さん、またボコボコにされてんじゃん」
後ろから声が聞こえた。聞きたくない声だ。
小馬鹿にするような、嘲笑うような声、リアムの一番嫌いな声だ。
リアムは振り返り声の主を睨む。
「全く、兄さんは本当に出来損ないなんだから」
「……ゼオン」
「あはは、顔腫れてんじゃん!痛そ〜」
呆れ笑いをしながら訓練場に入ってきたのはゼオン・アルベール。リアムの弟である。
ゼオンは魔力循環体質者であり、剣の才能も凄まじい。
この家で最も次期剣聖に近い男だ。リアムはそんな家に生まれた出来損ないだったのだ。そんなリアムに与えられたのは剣の才能ではなく、必要とされていない「魔法」の才能だった。
「おお!ゼオン!よく帰ってきたな」
「はい、ただいま戻りました父上。それにしても父上も大変ですね」
「ふん、まあな。この出来損ないの相手は流石に骨が折れる」
「そうだ、後で僕にも稽古をつけてくださいよ」
「いいぞ。お前のためならな」
二人は笑いながら訓練場を出て行った。
リアムはボロボロになった体で床に寝転び、仰向けになる。
「……ちくしょう」
目からは一筋の涙が流れていたのだった。
これは、魔法の需要性が低くなった世界で剣の才能が無く、魔法の才能に恵まれた一人の青年の物語。
補足
[魔力循環体質者]
→魔法の行使ができない代わりに、魔力を身体中に巡らすことで身体能力の向上をすることができる者。




