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只今、監禁中です。  作者: やと
第六章 鮮血の美少女

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「あの、すいません」


 やはり気になるので、地上に下りてきたカメラ野郎に声をかけてみた。


「え? 何か?」


 白々しい顔でとぼけてる。逆に怪しさは増すばかりだ。

 カメラ野郎は茶色のコートに灰色のマフラー、中は赤色のセーターで、下は青いジーパン、頭は短髪で白髪で所々に黒髪が見える。だけど肌質を見た感じでは、おそらく年齢は四十代か五十代だと思う。


「あの、そのカメラで何を撮ってたんですか?」


 カメラ野郎が首からぶら下げているカメラを指して訊いた。


「え、ああ……ただ風景を撮っていただけですよ」


 想定内の返答だ。


「へー。でも僕も撮られていたような気がするんですけど」


 あからさまに訝るような表情で言った。


「え? ……別に撮ってませんけど」


 ハッキリと否定はするが、その表情はどことなく後ろめたさが見える。俺は直感的に、この男が嘘をついていると感じた。


「本当ですか?」

 さらに険しい表情で凝視する。


「あの、急いでるんで──」

「あ……!」


 カメラ野郎はあくまでもしらを切り、逃げるように走り去ってしまった。

 追って問い詰めることも出来たが、あの男が盗撮犯と確信する明確な理由がなかった為、後を追うことにためらってしまったわけだ。


 とはいえ、今の行動が答えだったかもしれないな。


 それに──ピピ!


「お?」


 ようやく巫女からメッセージが届いたようだ。腕輪には『ハズレ』と、表示されてる。


「……」


 マジか。


 覚悟はしているつもりだったけど、明確にされるとやっぱりショックだ。


 どっと疲れが倍増しになり、体全体が重くなる。他に心当たりのある場所が思い浮かんでいない分、精神的にかなり追い詰められた。本当に盗撮魔なんて気にしてる場合じゃなかったな。こりゃあ本格的にマズい。


 ……。


 ぐぅ。


 変なタイミングで、腹の虫が鳴いた──イマイチ思考に集中出来ないのは、腹が減っているせいもあるだろうな。


 仕方ない。ひとまず何か食べるか。でも、金はないし、巫女の部屋に戻るのは何だか怖いし。どうしたものか……。


「んー」


 働いていたコンビニに行ったら、消費期限切れの弁当くれっかな?

 この時間だとパートの三田さんが働いてるはずだから、もしかするとこっそりと弁当を貰えるかもしれない。


 働いていた時はしょっちゅう二人で分け合っていたからな。それにコンビニはそこまで遠くはないし、ささっと行ってみるか。急がば回れってやつだな。


 ──と、いうわけでコンビニへと向かう。


 俺が働いていたコンビニは千億町にあるので、歩いて十五分程度で着くことが出来た。

 ただ、巫女のせいで仕事を辞めた形となっている手前、堂々と中に入ることをためらっている。

 巫女の言っていた話では、店長は俺を厄介者と言っていたようなのであまり会いたくはない。


 そのため、俺は外からガラス越しに店内を覗き見しながら、パートの三田さんがいないかを確認中……。

 三田さんは俺と同い年の息子さんがいるということもあり、俺には凄く優しくしてくれたおばさんだ。


 たぶん今日は休みではないと思うんだけど……、「お?」


 レジの中に、奇抜な髪型をした奴が見える。髪のセンターラインが綺麗に剃られていて、両サイドの部分はオールバックの髪型だ。


「……まさか」


 あんな奇抜な髪型の人間の心当たりが奇しくもある俺は、店長がいないのを確認したのち、コンビニの中へと入る。


「いらっしゃませぇぇえい!」

「何やってんすか?」


 レジの中には、元気良く声を出してコンビニ店員をやっている自称殺し屋こと巫女の父親がいた。


「おお、ユーは昨日の……柴谷くん」

「神田です」


 レジの中にいる殺し屋はサングラスをしておらず、コンビニの制服を着た顔の濃いおっさんだ。

 もはや殺し屋と呼ぶには相応しくない風貌なので、これからは巫女パパとでも呼ぶとしよう。


「あの、まさかここで働き始めたんですか?」

「ああそうだ。コンビニ店員のスキルの習得も、殺し屋として必要不可欠だからな」


 何が言いたいのか理解不能だが、まだ殺し屋という職業に就いている設定だということは理解した。

 巫女に叱られて反省し、ちゃんとした仕事を始めたかと思ったんだが、やっぱりこの人は根本的にアホなんだな。


「何わけわかんないこと言ってんすか。俺は今、あなたの娘のせいで大変なことになってんですよ」

「大変なこと……なるほど、巫女に家を追い出されて路頭に迷っているのだな?」


 ある意味迷ってはいるけどな。


「まあもう何でもいいっすよ」


 この人に説明したところで何かプラスになることは無いだろうから、勝手にそう思わせておくとしよう。


「ところで話は変わるんですけど、今日三田さんはいますか?」

「三田さん? あの二重あごのことか」


 名前で覚えろよ。


「二重あごなら裏で何かの作業をしているはずだ。ミーがすぐにレジ打ちをマスターしたから、安心して他の作業が出来ると喜んでいたぞ」


 腕を組み、胸を張って自慢げに言う。


「裏で? じゃあ悪いんですけど、ちょっと呼んできてもらえませんか?」

「それは構わんが、ユーが二重あごに何の用だ?」


「三田さんとは知り合いで、ちょっと話をしたくて」


 時間短縮に色々と説明は省いた。


「そうか。ならば待ってろ。今すぐに呼んできてやる」

「すいません」


 案外素直に俺の頼みを聞いてくれた巫女パパは、早歩きで三田さんを呼びに行ってくれた。しかし、まさかこんな場所で巫女の父親と会うとはな。故意でも偶然でも、今日は変な出会いがありすぎる。


「あー! 神田くんどうしたの?」


 レジ裏から巫女パパと一緒に出てきた三田さん。その見た目はどこにでもいそうな、小太りでノーメイクのおばさんだ。


「何も言わず急に仕事を辞めちゃって、心配したじゃない」と、笑いながら言う。


 俺としては笑える要素はまるで無いのだが、三田さんは意味もなくよく笑う人なのだ。


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