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只今、監禁中です。  作者: やと
第六章 鮮血の美少女

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 ──その後はおかげ様で不安や不満が募る一方だったが、こういう時は時間の流れが早く感じてしまうもので、体感的にはあっという間に目的地へと着いた。

 とは言っても、俺はまだアイマスクをしているのでどこに車が停まっているのかまでは分からない。


「着いたのか?」

「ええ、でもまだアイマスクはそのままよ。まずは私のする説明をしっかりと聞きなさいよね」


「ようやくか……」


 お待ちかねの説明だ。俺は目を塞がれている分の神経を耳に集中させて、巫女の話に耳を傾ける。


「いい? ここで今からアンタを降ろすんだけど──」


 巫女の説明を頭の中で整理する。


 今から俺は車から降ろされ、巫女が言うヒントを頼りにある人物を探さなければならない。

 もしもその人物を午後八時までに見付けなければ、俺に付いてる腕輪は自動的に爆発する。

 もしもその人物を午後八時までに見付けることが出来れば、この腕輪の起爆を止めてくれるという。


 行動の制限らしい制限は特になく、警察に駆け込みたければ好きにすれば良いとのこと。


 しかし、「無理に腕輪を外そうとすればただの自爆テロ犯になるわよ」という巫女の言葉を聞いた俺にそんな選択の余地は無くなった。


 聞いた限りでは単純なルールだ。

 内容は完全にクレイジーでしかないが、複雑なルールではないってのは不幸中の幸いでもある。

 ただ、俺が知っているかくれんぼという遊びってのは、隠れる側の人間が鬼に見つけられないようにビクビクとするものだが、巫女式かくれんぼでは、鬼側がガクガクブルブルしなければならない。


 これはもはやかくれんぼではなく、ただの虐待です。


 さて、俺の両腕を救う人物がいる場所のヒントだが……、


「いい、ちゃんと覚えるのよ。そいつがいる場所のヒントは『アンタも一度は行ったことのある場所であり、これからは行く必要のない場所』よ」


 さっぱり分からんな。


「まったく意味が分からないんですけど」

「すぐに分かったらつまらないでしょ。まあ、あまり難しく考えないことよ。絶対に分からないことはないから」


 巫女は俺からアイマスクを取り、助手席から後部座席へと移動してきた。


「んじゃ、いってらっしゃい」


 俺を車から降ろそうと、強い力で体を押してくる。


「ちょちょ、ちょっと待って!」

「何よ? 時間稼ぎは結果的に損になるわよ」


「違うって。もし俺が早い時間帯にこの腕輪の起爆を止める事が出来たとして、その後はどうすればいいんだよ?」

「ああ、そういうのはその時になれば分かるから。とにかくアンタは、死に物狂いで起爆装置を解除をしてくれる人間を探しなさい」


 巫女はケータイを取り出し、何らかの操作をし始めた。

 ピピ。


「なんだこれ?」

「見たまんまよ」


 俺の右手に付けられている腕輪の一部分に、青色でデジタル数字の時間が表示された。現在の時刻は午前八時ジャストだ。


「んじゃ今度こそサヨウナラ」


 巫女は強引に車の扉を開け、俺の体を蹴るように足裏で押してきた。


「いって!」


 そのせいで俺は路肩に尻を打ちつけながら下車し、初っ端から耐えがたいダメージを負ってしまう。


「ちなみに腕輪には盗聴器やGPSが付いてるから、アンタの行動は全て私に筒抜けだと思いなさい」


 まるで外国の性犯者みたいな扱いだな。


「そんな怖い顔をしないで、妹の墓参りに行きたいのなら頑張りなさい。まあ、どちらにしても墓には行けるんだけどね。ふふふ」


 笑い事じゃねえよ。


「花村、もう車を出していいわよ」


「おう。じゃあ金也、くれぐれも無理はするんじゃないぞ」

「金也の分までゴリラにウンチ投げられてくるんだよ。頑張るんだよ」


 花村から的外れな言葉を貰い、巫女の背中から顔を出した鰻子は楽しそうに手を振っていた。


「私的に貴方は目障りなので、あわよくば爆死してください」


 鰻子が手に持つタブレットPCの画面に映るミコリーヌが立てた親指を逆さにしていた。


「うるせえ。無事に帰ったら絶対にゆるさねえからな」


 尻に付いた砂を手で払いのけながら立ち上がる。


「あーそうですか。じゃあ貴方が『帰ってくる』のを、楽しみに待ってますよ」


 意味深長に言うミコリーヌの言葉を少し遅れて理解した俺は、顔を引きつらせてしばらく硬直した。

 マジで性格悪いよな。


「じゃ、ばいばーい」


 俺が硬直してる間に、花村の運転する車はためらう様子もなく発進し、あっという間に視界から消え去った。


「……」


 色々と思うところはあるが、今は冷静になってこのイカれたゲームを終わらせることにしよう。

 辺りを見回すと──道路沿いにはずっとビルが立ち並び、人気はぼちぼち、そして天気は良い。


 この街に来たことがあるような、ないような。これといった特徴のない街だ。そこまで遠い場所に来てはいないと思うのだが……まずはここがどこだかを知る必要がある。


「……」


 やる気満々だな、俺。


 腕が吹っ飛ぶかもしれないから当たり前なのかもしれないが、なんだか、自分自身がもどかしい。

 さっきまでの緊張や苛立ちとはまた別の感情だ。この苛立ちの原因がミコリーヌのせいだということまでは分かっているんだけど。


 ……。


 ……今は余計なことを考えないように、心がけるとしよう。


 朝っぱらからジャージ姿の男が路肩の上でボーっと突っ立っているせいか、素通りするスーツを着た人々の視線が痛い。

 ひとまず理解をするという選択肢はゴミ箱に捨てて、行動あるのみだ。というわけで俺は適当に道を歩き始めた。


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