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只今、監禁中です。  作者: やと
第六章 鮮血の美少女

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「おはよ。金也に爆弾付けて何をする気なんだよお前?」

「そういうのは全部まとめ現場についてから説明するわ。時間もないし、今すぐに出るわよ」


 と、花村に言った後、巫女は俺のそばに近付き、鎖のついた足枷を外し始める。


「え、外してくれんのか?」

「じゃないと外に出られないでしょ。それに今はもう腕輪がついているんだから、逃げようとすれば吹き飛ばすだけよ」


「……」


 つまり状況は悪化しただけであって、何かを期待できるわけではないということだ。ただ、足枷が外れた解放感ってのは少なからず感じることが出来た。


「あ、鰻子。今から出るから、私の研究室にあるタブレット持ってきて」

「わかったんだよ」


 巫女の指示に従い、鰻子はかけて部屋を出て行く。


「タブレットって何だ?」

 花村が訊く。


「今の時代にタブレットって言ったらパソコンに決まっているでしょ。ミコリーヌの移動用に持っていくの」

「ああ、あの子か」


「なんでバルコフに入れてかないんだよ。勝手に動かした方がアイツも嬉しいんじゃね?」


 足枷が外された足首をさすりながら訊いた。


「アホ。バルコフを外で自由に歩かせたら目立つじゃない。ただでさえ、今日はこの馬鹿が一緒なんだから」


 もちろん馬鹿とは花村のことだ。確かに、一昨日はなかなか人々に気付かれなかったとはいえ、遊園地などの人気が多い場所に行くのは気付いてくれと言っているようなもんだ。

 ましてや、今日は明らかにただ者ではない風貌をしているのだから、気づかれない方がおかしいだろう。


「それもそうだよな。花村なんかと一緒に歩いて大丈夫なのかよ? パパラッチとかが狙ってるかも知れねえぞ」

「仮にどこぞの輩が私たちの写真を撮り、どこかしらの低俗雑誌に掲載させようとしたのならば──私はその会社を力ずくでねじ伏せるまでのことよ」


「……さいですか」

 こいつなら本当にやりそうだ。


「大体、私たちの心配をしている暇があったら自分の心配でもしてなさいよね」


 それを忘れたいからこそ話を替えてんだよ。


「巫女、持ってきたよ」


 タブレットを取りに行っていた鰻子が戻ってきた。手には当然タブレットPCがあり、その画面にはミコリーヌが映っている。


「よし、じゃあ行くわよ。花村、ソイツが逃げないようにちゃんと見てなさいよ」

「ああ」


「今さら逃げる気なんて起きねえよ」


 足枷は外れたはずなんだが、俺は重い足取りで巫女たちと一緒に外へと出た。


「で、最初はどこから行くんだ?」

「ここから一番近い動物園からだよ。その次がネズミーランドなんだよ。去年ネズミーランドの中に水族館が出来たからそれで今回は我慢するんだよ」


「へー。ちゃんと調べたんだ。鰻子は偉いなー」

「えへへー。お姉ちゃんと調べたんだよ」


 エレベーターの中で会話をする花村と鰻子。俺はその後ろで静かに床を見ていた。まもなく一階に着いてエントランスを出ると、ようやく外に出たという実感を得る。

 ジャージ姿じゃちょっと寒いけど、やはりベランダから吸う空気が別物と感じるくらいに、地上での冷たい空気は美味しく感じる。


「今回は俺と手錠で繋がってないから良かったな」


 なんて笑顔で言う阿呆がいるんだけど、こいつは本当に腕輪が爆発しないと思っているんだろうな。


 ピピ。


 花村はポケットから車の鍵を取り出し、そのリモコンキーで駐車場にある車の扉を開けた。


「うわー高そー……」


 俺の勝手なイメージで、花村は真っ赤なスポーツカーとかに乗っているのかと思っていたけど、よく社長とかが乗っているような黒いセダンタイプの車だ。

 エンブレムを見た限り外車の高級車なんだろうけど、なんかガッカリ。


「これいくらしたんだ?」


 車の後部座席に乗り、運転席に座った花村に訊いた。ちなみに巫女は助手席、鰻子は俺の横でニヤニヤしてる。


「社長に貰ったから値段は知らない」

 バックミラー越しに俺を見ながら答えた。


「貰ったのかよ!?」


「俺ってあまり車とか興味ないからさ、今までは古い中古車に乗ってたんだけど──社長に格好がつかないからって貰ったんだ」

「芸能人って羨ましいな」


 本音を吐露する。


「はは、だったら金也も芸能人になればいいじゃないか。芸人とかさ」


 なんで芸人なんだよ。


「さてと、これからどうするんだ?」

 エンジンをかけ、花村は巫女に訊いた。


「その前に、これ付けて」

「は?」


 巫女は振り向き、俺にアイマスクを渡してきた。


「私がいいって言うまで、それを付けてなさい」

「なんで?」


「いいから黙って付けなさいよ。鰻子、それ金也に付けてあげて」

「わかったんだよ」


 鰻子は俺の手からアイマスクを取り、俺の頭に付けて目を覆う。鼻辺りの隙間から多少の光は見えるが、それ以外のことは目で認識できなくなってしまった。


「少しでもチラ見したら吹き飛ばすわよ」と、巫女は念を押す。

「……わかってるよ」


 素直に聞いたというよりは、逆らったところでどうしようもないことを悟っているだけである。


「じゃあ行くわよ。とりあえず、私の指示に従って運転しなさい」

「了解しました、女王様」


 そして、どこか分からぬ目的地に向かい、車は発進した。


「……はぁ」


 視界が遮られて何も見えなくなったせいか、だんだんと緊張感が増してきた。新しいバイトの面接に行くときのような緊張感と似ている言うと悠長な感じがするけど、現場へ近付くにつれて体の動作が落ち着かないところは似た感覚だ。

 貧乏ゆすりとまではいかないが、足首を上下にひたすら動かしている。


「なあ、結局何すんだよ?」


 徐々に不安が苛立ちへ転換し、溢れんばかりのその感情をぶつけるように巫女へ質問する。


「ちゃんと後で説明してあげるってば」

「もういい加減に説明してくれてもいいだろ。ストレスで胃に穴が開きそうなんですけど」


「あーもううるさいわね。鰻子、その単細胞をなだめなさい」

「わかったんだよ」


 巫女の言葉の何を理解したのか不明な鰻子は、俺の手を握って「鰻子が横にいるんだよ」と言った。


 だから何?


 というのが率直な感想ではあるものの、俺は口を縛られたワニのように大人しくなってしまう。

 俺が鰻子にキツく当たれないということを巫女は知っているんだろうな。


 嫌な女だぜ。


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