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只今、監禁中です。  作者: やと
第六章 鮮血の美少女

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 朝。


「……」


 ここに監禁されてからというもの、朝目覚める度に何かしらのサプライズが起きていた。


「おはよ」

「……おはようございます。あの、それは何ですか?」


 今日俺が目を覚まして最初に見つけた不審な物。それはデパートでよく見るマネキンだった。花村ばりのスタイルをしたイケメンである。

 巫女はそのマネキンに黒い腕輪のような物を取り付けていたので、何か良からぬことが行われるという漠然とした恐怖を俺は感じていた。


「これはマネキンのシュバルツ君よ」


 そう巫女はマネキンと腕を組んでポーズをとる。


「マネキンの名前を訊いてるわけじゃねえよ。マネキンをそこに置いて何をしているのかって訊いてるんだ」

「そんなに知りたいんだったら教えてあげる。このシュバルツ君に取り付けている腕輪が見えるわね?」


「うん」

 むしろそれしか見てねえ。


「これは私が作った『腕殺しの腕輪』よ」

「腕殺しの腕輪?」


 最悪のネーミングだ。


「そ。簡単に説明すると──」


 巫女は俺に向かって微笑みながら、右手に持っていた使い捨てライターのような物の頭を親指で押した。

 距離があるのでハッキリとは見えなかったけど、それが何かを起動させるリモコンなのでは? という疑問がすぐ頭をよぎり、自分に繋がる鎖の電流スイッチじゃね? という判断に至った。


 そんなことをコンマ数秒で考え、覚悟を決めて電流に備えていた俺をあざ笑うかのように──ボワァン!!


「うわあ!?」


 シュバルツ君の腕が爆発しました。


 両腕が粉砕したマネキンは床に横たわり、煙のような粉塵が部屋の中央に漂っている。


「あわわわわわわ……」


 目の前で起きた衝撃的な光景におののく俺は、掛け布団に身を隠して身を竦ませていた。


「──って!?」


 俺の手首に、腕殺しの腕輪が付いているんですけど!?


「お前何じゃコレェェェェェェ!?」


 すぐさま布団から飛び出し、巫女に向かって問うた。


「もちろん爆弾よ」


 オワタ。


「まあ心配しなくても、まだ爆発なんてしないわよ。全てはアンタ次第」

「ふざけんな! 一体何のつもりだよ! 両腕に爆弾が付いてるとかシャレになってねえぞ!」


 俺が感情的になるのは無理もないでしょ。死因が爆死とか、どこの松永久秀だって話だ。


「シャレなわけないじゃない。マジだっつーの。それに言ってるでしょ、腕が吹っ飛ぶかどうかは全てアンタ次第だって」


 呆れたように息を吐きつつ、髪を左耳にかける。


「……どういう意味だよ?」

「私とやるゲームに勝ったらその爆弾を解除してあげるってこと」


「ゲーム……昨日言ってたかくれんぼのことか?」

「そ。ちゃんとした説明は花村が来た後でしてあげる。それまでは大人しくしてなさい」


 目が覚めると絞首台に立っていた状態の俺にそんな無慈悲なことを言いながら、巫女はタンスの前でひざをついて服を取り出していた。


「おいおいマジかよ……」


 四つん這いになり、全身で今の暗澹あんたんたる心境を表現する。よもや両腕が吹っ飛ぶかもしれないような展開が訪れようとは、人生本当に何が起きるか分からない。

 誰かさんが言っていたように、巫女は乱暴ではあるものの、命に直接かかわるようなことまではしないという思いも頭の片隅にはあったので、その分俺のショックは大きい。


「あ、金也おはよう。鰻子だよ」

「んあ、おはよ……」


 消沈している俺に挨拶をしてくれた鰻子の声に反応して頭を上げる。

 出かけるために着替えたのだろう。今日はいつもの黄色いパーカーではなく、ワンピースの上に赤いチェック柄のポンチョを着ていた。


「ふあっ!? 一体何があったんだよ?」

 両腕の無いマネキンの転がる部屋を見た鰻子は愕然とする。


「何でもないわよ。ほら、髪といてあげるからこっち来なさい」

「わかったんだよー」


 タンスから取り出した服を持った巫女は鰻子に歩み寄り、共に洗面所へと入っていった。


 すると間もなく、「おーす!」

 廊下から花村結城が現れた。


 今日は白いジャケットを着て、サングラスとワインレッドのマフラーを身に付けた格好はまさにスターっぽい。

 個人的に室内でサングラスをしている奴は好かないけどな。


「おわっ!? なんだコレ!?」

 鰻子同様に、両腕の無いマネキンが転がる異様な光景に驚愕する。


「おお金也、おはよ。どうしたんだよコレ、巫女は?」

「今洗面所で着替えてるよ。そしてそれはシュバルツ君だそうだ」


 俺の説明も適当にだってなる。


「何だよシュバルツ君て?」

「知らねえよ」


「……なんだ、やけに機嫌が悪いな」

 腰に手を当て、困ったような表情をした。


「そりゃあお前、両腕に爆弾付けられたら機嫌も悪くなるだろ」


 花村に腕輪のついた両腕を見せる。冷静に考えると、パニック状態にまで陥らないような精神力がついたって評価もできるな。


「爆弾!? まさかその試し爆破の結果がこのシュバルツ君か……」

「さすがに鋭いな。身を犠牲にして俺に恐怖を植え付けてくれたよ」


「マジか……。どんまい」


 都合の良い言葉だな。


「ったく、昨日誰かさんが死ぬことはないなんて言っていたせいで、余計に俺はメンタルブレイクなんですけど」


 実際は花村が言った云々はどうでもいいことなのだが、『第三者です面』をしている顔が鼻についたので、当てつけるように言ってやった。


「確かにそんなこと言ったな。ごめん。でも大丈夫だって、きっと金也が付けているのはただの腕輪だって!」


 砕けたマネキンを目の当たりにした後にそんなことを力強く言われてもな……。


「ただの腕輪なわけがないでしょゴミカス」


 洗面所から出てきた巫女は、俺に希望を与えようとする花村の言葉を一刀両断した。

 巫女はグレーのコートとタイツ、白と黒のボーダー柄のシャツにカーキ色のショートパンツに着替えていて、遅れて出てきた鰻子は前髪が三つ編みされていた。


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