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「きっと巫女はお前が鰻子のように現実世界へ過ごせるように新しい体を造っていたんだよ」
「そんな……巫女はそんな素振りを一度も見せなかったですよ」
「それはお前を驚かせるために隠していたんだろ。まあ、今俺が言っちゃったけどな」
俺の口はパンドラの箱のようだ。嘘が湧き水の如く出てくるぜ。
「そうだったんですか……じゃあ、その内私も現実世界へ行って、みんな一緒に遊べるんですね?」
「え!? あ、うん」
ミコリーヌは崩れるように腰を下ろし、今度は素直に涙を流し始めた。
「うぅ……嬉しいですぅ。巫女に飽きられてしまっていたのではないかという不安に毎秒苦しんでいたのは、私の勘違いだったのですね?」
「え、あ……うん」
ミコリーヌはステッキを離し、両手で顔を覆い、本格的に泣き始めた。
「ぅぅ──うわぁぁん! 嬉し過ぎて死にそうです! 勝手に勘違いしてゴメンナサァァァァイ!」
「そだね……うん」
俺が噛み締めるのは、底知れない罪悪感である。盗賊を斬った悲しみなど忘れてしまうくらいに、心が痛い。
まさかこんなに泣きじゃくるとは予想してもいなかった。俺が思っていたよりも深く、ミコリーヌは寂しかったんだ。
まさに、口は災いの元である。
これが嘘だとバレてしまえば……俺は……万死に値する。
「ちょっと、いつまでゲームしてんのよカス!!」
「!?」
突如天井から響いてきた怒声。先ほどの鰻子のような感じで、巫女の声が頭上から聞こえてきた。
「巫女か!?」
洞窟の天井を仰視するが、もちろん巫女の姿が見えることはなかった。
「アンタいつまでゲームをエンジョイしてんのよ? もう八時よ。さっさとクリアして戻ってきなさいよボケ!」
「八時!? もうそんなに時間経ってんのかよ!」
「当たり前でしょ。時の流れはこっちと大して変わらないんだから」
「そうなんだ……」
てっきりこっちの一日が、現実世界での一時間程度かと思っていたよ。
「どうでもいいから、さっさとクリアして戻ってきなさいよ。でないと無防備の股間に全力でかかと落としするから」
なんてこった。
「おいおい! そこまで言うなら強制的にそっちに戻してくれよ! ホントまじでお願いしますって!」
俺はオーバージェスチャーで巫女に懇願するが、
「無理。何の為にアンタ達でテストプレイさせたと思ってんのよ」
テストプレイって言っちゃったよ。
「ふざ──っくそ、だったらクリアの条件だけでも教えてくれって!」
腹は立つが、今は巫女にキレてる暇はない。さっさとゲームを終わらせることが重要だ。死んだ花村も気がかりだしな。
「しょうがないわね。まあ、その洞窟には辿り着けてるから教えてあげる。条件は超簡単なことよ。そこにいる盗賊を全部倒せばいいの」
「盗賊って……」
全部倒しているつもりなんだが……もしかして、まだどこかに隠れてんのか?
「あ!?」
もしかして、入り口にいた見張りも含まれるのか?
そういえば、あいつは殺さずに気絶させただけだったから、倒したことにはなっていないのかもしれない。
「ていうか、どうしてそこにクリスタルバー・サンがいるのよ? そいつは宿屋のイベントにしか出現しないはず……」
「え?」
そうか、巫女は魔法少女の中身がミコリーヌだってことは知らないんだ。
「巫女……わ、私ね。気分転換にというか……早とちりというか……」
スカートで涙を拭き取り、肩をすくめてミコリーヌが喋り出した。なんだか口調が可愛らしくなっているような気がする。
「……アンタもしかして、ミコリーヌ?」
巫女の素晴らしい直感力に、ミコリーヌはか細い声で「はい」と答えた。
「何でアンタがクリスタルバー・サンを操作してんのよ。勝手にいじるなって言ってたと思うけど?」
声のトーンが一段階低くなり、巫女がより一層不機嫌になったことが分かった。
「実はね。巫女が最近忙しそうで、ちょっと寂しくなっちゃって……その反動でイタズラをしてしまいました。ごめんなさい!」
ミコリーヌはこの上ない綺麗な土下座をした。
「ふーん。珍しく正直じゃない。いつもなら言い訳の果てに白状するのに」
「いや、だって巫女がその……私の為に色々してくてるって聞いたから。まさか私の体を造ってくれてるとは思ってなかったんだもん」
「あっ……」
俺は咄嗟に手を前へ伸ばし、ミコリーヌの口を塞げなかったことを後悔した。内緒だと言ったのに、言ってしまったか……子供に口止めは難しいってことだな。
まあ、自業自得なんですけど。
「は? 何ボケたことを言ってんのよ。アンタの体なんて造ってないわよ」
まあ、巫女がそう言うのは当然ですよね。
「………………はい!?」
まあ、ミコリーヌは目を点にしたのち、自分の耳を疑うように愕然としますよね。
……。
……。
……。
「ぁあん゛っ!?」
まあ、ミコリーヌが全てを悟り、激怒して俺を睨みつけるのは必然ですよね。
「……」
さて、俺は最後の望みを懸け、怒りのミコリーヌの背にある洞窟の入り口まで全力疾走だ。
「つまり……全部嘘だったんですね。本当に、最低ですね」
ミコリーヌは表情を沈めたままゆっくりと立ち上がり、嵐前の静けさを演出する。
どう考えても、この件に関してだけ言えば俺に非があるのは間違いない。だが、今罪滅ぼしのつもりであいつの拷問に耐える気はない。
「貴方みたいなゴミくず野郎の話を信じた私も馬鹿ですが……もう一生許しません!」
拾ったステッキを振りかざし、速攻で電撃を走らせてきた。
しかしさすがに予想はしていたので、ミコリーヌがステッキを拾った瞬間に俺は出口に向かって走り出す。
とにかくあの気絶している盗賊を刀で斬ればゲームをクリア──出来ると願って。
「逃がすかぁぁぁあ!!」
怒りで暴走中のミコリーヌは、自らの周りに無数の発光する球体を作り出し、それを次々とレーザー光線のように放った。




