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只今、監禁中です。  作者: やと
第六章 鮮血の美少女

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「ごめん。色々と訳あってさ。で、さっそく三田さんにお願いがあるんだけど」

「お願い?」


「うん、実は金欠でお腹減っててさ」と腹をさする。


「ああ、いつものお弁当ね。あーでも、今日は本間さんの分しか残してないのよー。結構売れちゃっててね」

「え……マジ?」


「そうなの。まあ本間さんから譲ってもらえ──」

「ノーッ!!」


 巫女パパは三田さんの言葉を遮り、険しい表情で拒否をする。

 店内にたまたま客がいなかったから良かったものの、その大声に驚いた俺は両手で耳を塞いでいた。


「絶対にミーの弁当は渡さんぞ!!」


 俺を指し、激しく怒鳴る。隣にいる三田さんはドン引きだ。かくいう俺もドン引きである。


「ああいや、別に無いならないで素直に諦めるんで……」


 頬を引きつらせながら、凄い剣幕で俺を睨みつける巫女パパに言った。


「あ、そうなのか。ハハハ! そうならばそうと先に言えば良いものを」


 何かを言う隙が無かった件。


「ちょっと本間さん。神田くんは一人暮らしで毎日大変なんだから、消費期限切れの弁当の一つくらい譲ってあげてもいいじゃない」


 三田さんは眉を立て、若干起こり気味で巫女パパに言う。


「何を言うんですか! この男はですね、うちの娘のヒモになって、毎日三食恥ずかしげもなく食べさせてもらっているんですぞ!」

「ヒモじゃねえよ!? あんたの娘に監禁されてんだよ!」


 巫女パパのふざけた言動に反応し、思わず監禁の事実を叫んだ。


「え……神田くん。監禁て……そんな趣味があったの?」


 口を両手で押さえ、軽蔑するような眼差しで俺を見つめる三田さん。


「いや、趣味とかじゃなくて……」


 弁解をしたいけど、そのための説明が長すぎて言葉が止まってしまう。もどかしさ極まりない。


「ショックだわぁ。嘘をついてただけならまだしも、神田くんのイメージが崩れたわぁ……」


 三田さんは残念そうに俺を見つめる。これまで積み重ねてきたものが、たった一回の虚言で崩壊したそうだ。


「ヘイユー、嘘つきは泥棒の始まりだぞ。今度からは気を付けるといい」

「えぇ……」


 どの口が、何を思ってそんなことを俺に言ったのか、俺が一生抱える疑問がまた一つ増えてしまった。

 にしてもこのハゲ。アホなことは承知していたが、まさかここまで酷いとはな。


 いくら親子だろうと、殴りたくなる巫女の気持ちが分かってきたぜ。


「ハァ……まあ弁当も無いし、俺もう行くよ。仕事頑張って」


 大きく溜め息を吐いて肩を落とし、ここに来たことを後悔しながら俺はコンビニを出ようとした。


「いらっしゃませぇぇえい!」

「ん?」


 背を向けた俺の後ろから聞こえた巫女パパのかけ声に反応し、俯いていた頭を上げる。


 するとそこには、「やっと見つけたぜ。覚悟決めて大人しく逝けやコラァ!!」


「……」


 最悪だ。


 コンビニの自動ドアを挟んだ目の前に、白い特攻服のフランスパン頭が金属バットを持って佇んでいた。

 まさかここまで追ってきているとは……思わなかったな。


「コソコソ逃げるなんて本当に情けねえ野郎だなぁ! 俺がその根性叩き直してやるよコラァ!!」


 外に仲間らしき連中は見受けられない。どうやら今は一人のようだ。あの巨人スキンヘッドにでもやられたのかな?

 しかし、この状況をどうやって打破しよう。出入り口は完全に塞がれてる。このコンビニに裏口なんてものはない。


 ……クソ。


「ヘイユー!」


 戸惑う俺の横に、顔を赤くした巫女パパが歩み寄る。


「こんな頭に新幹線を乗せた輩を出入り口に立たされていては迷惑だ。早くどこかへ連れて行ってしまえ!」


 この状況の全ての責任は俺にあるらしい。俺が今日死ぬならば、死因はストレス死かもしれない。


「おぉ、おっさん! なんてカッケー髪型をしてんだコラァ?」


 おっと意外な展開。白い特攻服は目を爛々とさせて巫女パパの髪型に食い付いた。


「お、そうか? 床屋で髪を整えてくれと頼んだらこんな髪型になったんだが……」


 どんだけ無センスな床屋なんだよ。


「今ではミーも気に入っているのだ。名付けて『センターライン消失ヘアー』だ」

「カッケェェェ!!」


 どこがだよ。


「いやぁ、ミーの圧倒的なセンス力に付いて来れるジャパニーズボーイがいるとはな。この国もまだ捨てたものではないな」


 お前ごときが国を語るなよ。


「俺もおっさんみてえな攻めてるオヤジを初めて見たぜ。おっさんみてえな人が俺の担任だったなら、俺の人生も変わっていたかもしれねえ」


 さらに歪んでただろうな。


「ほほう。ユーとは気が合いそうだ。ハッハッハ! 愉快愉快」

「おっさんサイコーだぜ!」


 類は友を呼ぶってやつで、アホとアホが馴れ合い始めた。その光景に冷ややかな視線を送っている。


「まあ中に入りなさい。水くらいなら出してやろう」

「あ、そう? おっさん良い奴だなぁ」


 巫女パパに手招きされ、白い特攻服はコンビニの中に入る。

 白い特攻服が立っていたせいで、今まで開きっぱなしだった自動ドアが閉じそうになったのだが、俺がこの隙を逃すわけはなく、息を殺してこっそりとコンビニを出る。


 ……。


「神田くん。色々あったけど、お疲れ様!」

「ちょ!?」


 徹底的にドン引きしてくれていたら良かったものを、三田さんは最後に別れの挨拶をしてきてくれやがりました。


「ああ!! てめえ!! いつの間に!?」


 おかげで白い特攻服に気付かれ、俺はまた鬼ごっこをするはめとなった。俺は猛ダッシュで走り去る。

 だけど、疲れが溜まっているせいかスピードが上がらない。

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