短かったので、幼少期をもう一話
次に、自我の芽生え…というか、意識が戻ったのは、「そろそろおむつを取る練習を致しましょう。」と、メイド頭のオリビアと、シッターのマリア、そしてお母様が私のベビーベッドを挟んで、あーでもないこーでもないと脱オムツの計画を立てている時だった。
もうすぐ2歳というお年頃で、お父様はお仕事中なのか居なかったと思う。
パチッと昼寝から目覚めると、私を挟んで、「そんなに急いで厳しくしたくない派」のお母様と、「貴族の子女として一刻も早い貴族教育を!」派のシッターマリアと、「まぁ、洗濯メイドもそろそろ楽させてあげたいけどね~派」のメイド頭オリビアの、三者三様のトイレトレーニング計画。
ポカンと見上げている私に気がついたのか、三人は、何故か、判断を私に委ねる事にしたらしい。
“ん?おかしくないかね?私まだしゃべれませんけど…?”
ベビーベッドにちょこんと座りなおし、小首を傾げて三人を見上げる私に、まずはお母様から口を開いた。
「ねぇ?エミリア?貴女は聡明なのだから、それほど急いで厳しくトイレトレーニングなんてする必要はないと思うのよ。」
“そうですね、お母様。私も多分、出来ると思います。ってか、トイレでしょ?”
「エミリア様、貴女様はバイオレット公爵家のご長女でございます。
先祖代々宰相職に従事される優秀な方々を輩出されております。
その、次代であられるエミリア様も早々にご自覚を持って行動召されなければと私は思いますわ!」
“お…おう。それもそう…なのですか?そうでござりますですか…?”
「まぁ、言うのは簡単でも、行動に移すのは…お子様ですし、難しい場合もありますでしょうし…
少しずつ、プレッシャーをかけずに、気長に…と、私の子供達は、そうやって育てました。
大人になってもオムツがとれない方は居られないのですら、気楽に試されてはいかがですか?奥様、マリア様。」
“はい!正論!!常識人、オリビア!そして、意外と肝っ玉母ちゃんだったのね!”
「あ~い!ち~!」
そんなこんなで、とりあえず、おトイレツアーなる、見学会に連れ出され、そこでトイレに座らされ、初っ端から上手におトイレで出来た事で(まぁ、寝起きでしたし…)、すごくすごく褒められ、一発でオムツの取れた私は、再び親バ…子煩悩な両親に、大絶賛されたのですよ。
“ってか、トイレ水洗だし、臭くないし。ボットンならギリギリまでオムツでいてやろうとか思ってたけど、お母様達がなんで悩んでたのか意味がわからん”
私は首を捻るばかりだった。