第十四話
生徒玄関に入ると、外とは比べ物にならない程、暖かかった。
「うわー…天国…」
都雅と勇気は俺の言葉に苦笑した。
「教室の方が暖かいよ…まぁ…ある意味暑いかも」
「暑い?」
「うん…ヒーターの真横だと暑すぎて窓開けちゃう時あるよ。反対に廊下側だと寒いんだ」
「へぇ…」
上履きに履き替えて、階段を上る。
「教室は二階なんだ。……何だか転校生を案内している気分だね」
「ま、似たようなもんだよな…俺にしてみれば初めて来るわけだし」
三年生の階に付いて、真向かいのクラスが六組。
「何組あるの?」
「八組あるよ。僕らは一組。一組はね、成績優秀じゃないと入れない組なんだよ。二組以降はシャッフルなんだけど、一組は特別なんだ」
「……ってことは都雅も成績優秀なのか?」
「まぁ…ね」
「うわ…反則…」
都雅は小さく笑った。
「反則ってなにさ」
「だって、不良で成績優秀って反則だろう…番長か?」
「……古い、物言いだな…今時番長なんているのか?」
いるかもしれないじゃないか…とは言わずに笑って誤魔化す。
「オレみたいな奴は殆どいないよ。その点では結構珍しい学校だよな。でもそれよりもっと面倒なのがいるけど」
「面倒なの?」
そうだね…と勇気が深い溜息をついた。
「ま、要はオレの友達だから、何があっても助けるけどな」
都雅は白い歯を見せて笑った。
「嬉しいこと言ってくれるじゃないか。サンキュー」
右手に折れて一組へと向かう。
教室に入ると、すでに数名の生徒がいて、その中に箱柳もいた。
「何だ…あいつも同じクラスかよ…」
俺たちが入ってきても、無視している。
幼稚な奴。
入ってすぐの席(つまり廊下側の一番後ろ)に都雅が座った。
「オレの席はここ」
「俺の席は?」
「要くんの席は、窓際の一番後ろだよ」
「ああ…なるほど…。さっきのヒーターの説明は、そのためか…」
「うん」
勇気の席は真ん中の一番前…つまりは教壇のまん前だった。